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JEITA、“2006年電子工業生産見通し”を発表――在庫調整の遅れが響き、2005年は前年比4%減の見込み

2005年12月22日 20時29分更新

文● 編集部 小西利明

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2005年の国内電子工業生産について総括する、JEITA会長の岡村正氏(東芝 取締役会長)
2005年の国内電子工業生産について総括する、JEITA会長の岡村正氏(東芝 取締役会長)

(社)電子情報技術産業協会(JEITA)は、国内電子工業生産の2005年の見込みと2006年の見通しである“2006年電子工業生産見通し”を発表した。2005年の国内電子工業の総出荷額は18兆9622億6000万円で、前年比-4%の減少となった。年前半でデジタル家電の在庫調整が遅れたほか、産業用電子機器では携帯電話やコンピューターが伸び悩み、電子部品・デバイス分野もほとんどが前年比割れとなった。しかし輸出を軸として全体としては回復基調にあるとして、2006年見通しでは2.3%増の約19兆3890億円を予想している。

1995年から2006年(見込み)にかけての、電子工業生産総額の推移
1995年から2006年(見込み)にかけての、電子工業生産総額の推移

JEITA会長である(株)東芝 取締役会長の岡村正氏は、2005年の日本経済全体は着実に景気回復の道を歩んでいるとしたうえで、個人消費や機械受注の好調、企業業績の改善など、経済全体は好調であると述べた。しかし電子情報産業全般は、「2004年から続く在庫調整や激しい価格の下落など、非常に厳しい状況が続いた」と述べた。8月以降は回復傾向が顕著になったとして、特に民生用では液晶/プラズマTV、DVDレコーダー、カーナビなどが好調に推移、パソコンも堅調だったと述べた。また2006年について、トリノ冬季五輪やサッカーのドイツW杯など、民生機器の需要増が期待できる要因をあげて、回復への期待を示した。

合計および分野別の2005年度見込み(2005年9月まで実績値、以降は見込み)および2006年見通しは以下のとおり。

電子工業計
2005年:18兆9622億6000万円(前年比96.0%)
2006年:19兆3890億5100万円(前年比102.3%)
民生用電子機器
2005年:2兆5452億円(前年比102.3%)
2006年:2兆6083億円(前年比102.5%)
産業用電子機器
2005年:7兆2502億5000万円(前年比96.9%)
2006年:7兆3976億9000万円(前年比102.0%)
電子部品・デバイス
2005年:9兆1668億1000万円(前年比93.8%)
2006年:9兆3830億6100万円(前年比102.4%)

前年比2.3%増の微増で、2001年から4年連続の増加となった民生用電子機器では、液晶TVが前年比41.9%増の5305億円を見込むほか、カーナビゲーションシステムも15.5%など、好調の牽引役となっている。一方でアテネ五輪需要後の在庫調整で落ち込んだHDD/DVDレコーダーや、需要が一巡したデジタルカメラなどが低迷。デジタルカメラは前年比-5%の減少となっている。2006年見通しでは、液晶・プラズマTVとカーナビゲーションシステムの好調が持続するとの見通しにより、2.5%の成長が予想されている。

民生用電子機器全体の推移 民生用電子機器の品目別推移。2005年からCRT方式のカラーTVが単独の品目から消えて“その他”に含まれ、代わりにプラズマTVが品目に登場した
民生用電子機器全体の推移民生用電子機器の品目別推移。2005年からCRT方式のカラーTVが単独の品目から消えて“その他”に含まれ、代わりにプラズマTVが品目に登場した

産業用電子機器は前年比-3.1%減となり、2年連続の減少となった。中でも2004年に大幅減(前年比-14.5%減)となった携帯電話を含む無線通信機器が、回復が期待されたにもかかわらず、在庫調整と新規需要の伸び悩みで-3.9%の減少となっている。またコンピューター関連(電子計算機および関連装置)も海外への生産移転などが続き、前年比で-8.5%減の2兆3377億5000万円となった。パーソナルコンピューターは台数ベースでは増加したとのことだが、価格の下落により金額では前年比-6.2%減の1兆1324億6000万円となっている。2006年の予測では携帯電話の大幅改善(7%増)やパソコンの回復が期待され、全体では2%の微増が予想されているが、需要の伸び悩みや価格下落に歯止めがかかる状況にはなく、実現には困難が予想される。

産業用電子機器全体の推移 産業用電子機器の品目別推移。黄緑色の部分がコンピューター関連で、金額ベースでの伸び悩み傾向が続いている
産業用電子機器全体の推移産業用電子機器の品目別推移。黄緑色の部分がコンピューター関連で、金額ベースでの伸び悩み傾向が続いている

電子部品・デバイス分野は、機器の在庫調整などの影響を受けるほか、生産の海外移転もあって、全体では前年比-6.2%減と大きく落ち込んだ。プロセッサーやメモリーなどの集積回路分野も、前年比-8.8%減の3兆3005億1400万円と落ち込んでいる。ただしNAND型フラッシュメモリーについては、携帯電話やポータブルオーディオプレーヤーなどでの需要が拡大しているとしている。ある意味深刻なのが、液晶デバイス分野だ。液晶TVが伸張しているにも関わらず、TV向けの大型パネルは海外メーカーからの供給が主体となり、国内生産が伸びないという状況にある。結果として液晶デバイス全体では、4年ぶりのマイナスとなる前年比-9.5%減の1兆6288億6800万円となった。大型パネルの海外依存は、2006年にも変わる状況にない。海外メーカーの新世代生産ラインや大型パネルへの移行も進むとされているため、特に“アクティブ大型”液晶デバイス分野は、2006年見通しでも-10%程度の減少が予想されている。電子部品・デバイス全体の2006年見通しは、民生・産業両分野での回復により、2.4%増が予想されている。

電子部品・デバイス全体の推移
電子部品・デバイス全体の推移

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