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米ポリフューエル、燃料電池用電解質膜を45μm厚に薄型化──NECや三洋電機など11社が採用へ

2005年12月15日 15時26分更新

文● 編集部 小林久

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米ポリフューエル(PolyFuel)社は15日、都内で記者会見を開き、パッシブ型DMFC燃料電池用電解質膜の最新製品に関して説明した。会見には同社ビジネス開発担当副社長のリック・クーパー(Rick Cooper)氏、国内代理店・傳田アソシエイツ(株)社長で、元インテル(株)代表取締役会長の傳田信行(でんだ のぶゆき)氏などが出席した。

リック・クーパー氏ポリフューエル社副社長のリック・クーパー氏。手にしているのは新たに開発した45μmの電解質膜

メタノールなどの燃料と空気(酸素)を隔てる電解質膜は、燃料電池の性能を左右する最も重要な要素である。ポリフューエルはこの電解質膜に炭化水素系の材料を用いている。電解質膜の材料には、米デュポン(DuPont)社の“Nafion”(ナフィオン)膜など、フッ素系ポリマーが利用される場合もあるが、炭化水素膜の特徴としては、燃料のメタノールが電解質膜を透過する“クロスオーバー現象”が生じにくい点が挙げられる。

燃料電池カートリッジの容積を小さくするためには、大きく分けて1セルあたりの電力密度の向上と燃料濃度の向上という2点がポイントとなる。そのためには、メタノールから取り出した水素イオンを効率よく空気中の酸素に触れさせられるとともに、高い濃度のメタノールを使用できる電解質膜が必要である。

DMFC燃料電池の仕組み
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の仕組み。燃料極(膜の左側)でメタノールと水を反応させ、二酸化炭素、水素イオン(プロトン)、電子を作る。水素イオンは電解質膜を通って空気極(膜の右側)に移り、空気中の酸素に触れることで、水と電気が生じる

ポリフェーエルでは従来62μm厚の電解質膜を提供してきたが、同じ分子構造で厚さが45μm(27%減)の電解質膜を新たに開発した。この薄型化により、燃料側の水素イオンを効率よく空気側に透過させることができ、最大電力密度が従来の60mW/cm2から80mW/cm2と約33%向上した(40℃、0.28V時)。また、“水の逆拡散効率”(空気側でできた水を燃料側に戻して再びメタノールと反応させる際の効率)も30%向上し、メタノールから水素イオンを取り出すための水を、ほぼすべて補えるレベルになったという。水とメタノールのクロスオーバーに関しては従来の62μm膜と同水準で、数値的には競合するフッ素系電解質膜と比べて半分程度。45μm膜の寿命に関しては試験中だが、62μm膜と同水準(5000時間程度)の耐久性が確保できそうだという。

電力密度 水の逆拡散の模式図
電力密度(グラフ中のPower Density)は、62μmタイプより33%向上。1平方センチメートルあたり最大で80mWとなった水の逆拡散効率が高まることで、燃料カートリッジに含まれているメタノールに加えるための水を大幅に少なくできる
テスト機材 結果
炭化水素膜とNafion膜の性能比較。左の写真がテスト装置、右の写真がテスト結果。グラフの横軸は時間で、テスト時間は4分ほど。緑の線はポリフューエルの炭化水素膜、赤の線はNafion膜の電力密度を示す。青線は燃料として使用するメタノールの濃度で、一定時間経過後3%(低濃度)から30%(高濃度)に増やしている。低濃度の状態では12%ほどの差だが、高濃度ではその差は64%に広がる

DMFC燃料電池は、2007年度からの飛行機の持ち込みに認可が下り、今年10月に開催された展示会“CEATEC JAPAN 2005”でも携帯電話機メーカー各社のブースでコマーシャルユーズに近いワーキングサンプルの展示が行なわれていた。ポリフューエルはこれまで国内外での提携先に関してコメントしてこなかったが、会見では「日本電気(株)や三洋電機(株)など17社と協業しており、うち11社が大手メーカー。試験を行なっている15社のうち、評価試験を完了した11社すべてがポリフューエル製の膜を購入する決定を下した。OEMメーカーの中で日本と韓国の5社が“世界最高”の評価をくれている」とクーパー氏の口から発表された。

電解質膜の薄型化に関して、クーパー氏は「まだまだ薄くできる」とコメント。燃料電池の応用先としては“ランタイム・ギャップ”(ユーザーがその機器に稼動してほしいと願う時間と、実際に機器が稼動できる時間の差)が大きな携帯機器が皮切りとなるが、近いうちに自動車への応用も行なわれるのではないかという観測を示した。一方で定置用燃料電池に関しては、自動車の5000時間を上回る4万時間程度の耐久性が要求されるため、時間がかかりそうだという。

また、燃料電池が既存のリチウムイオン電池をリプレースできるかという記者からの質問に対しては「電池メーカーではないため答えにくい」「燃料電池とリチウムイオン充電池は競合ではなくフレンドであり、相互に補い合うもの」と答えたが、「燃料電池のエネルギー密度はリチウムイオン充電池の8~10倍と非常に高くそこが利点。普及の課題としてはサイズをより小さくする必要がある」ともコメントした。

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