日本電信電話(株)と(株)セガは13日、デジタルカメラ機能を搭載しインターネット接続に対応する携帯電話機を用いたオブジェクト認識技術の共同実験を行なうことを発表した。これは、ポスターやフィギュアなど2次元/3次元の対象物をカメラ付き携帯電話機で撮影して、その静止画の特徴をもとに、関連づけられた携帯電話用ウェブサイトに誘導するというもの。二次元バーコードや電子透かし、平面を対象にした画像認識技術などを用いた同様のサービスはすでにいくつか存在するが、NTT第三部門チーフプロデューサー 曽根岡昭直氏によれば、今回の技術はバーコードの埋め込みなど事前の加工が不要で、さらに立体物を対象にできるのが特徴という。開発はNTTサイバースペース研究所。
(1)セガのアドベンチャーゲーム『サクラ大戦』のフィギュアを撮影してサーバーに送ると…… | (2)サクラ大戦の携帯電話用ウェブサイトのURLが届き、アクセスできる | |
画像をサーバーに送信してから情報(この場合はサクラ大戦の関連サイトのURL)が手元に届くまで、認識にかかった時間は5~6秒程度だった |
ファンはキャラクターに自然とカメラを向ける
NTT第三部門チーフプロデューサー 曽根岡昭直氏 |
2社は記者発表に先立ち、セガの人気ゲーム“サクラ大戦”を題材にした今年8月の舞台“新・青い鳥”で、チラシやポスターを認識の対象にしたユーザー参加型の実証実験を行なった。セガ モバイル研究開発部長 塚本一成氏は、「キャラクター系のコンテンツは、ファンが自然にカメラを向けたくなるもの。“面白そうだからやってみるか”」と、プロジェクトへの参加の動機を説明した。
実験にあたってNTTとセガは、認識させたいチラシやポスターをあらかじめさまざまな角度から撮影して、その輪郭を抽出してデータベースの“オブジェクト辞書”に登録。ユーザーは、専用のJavaアプリケーションをダウンロードしてそれから携帯電話の内蔵カメラを起動し、撮影した写真をサーバーに送信すると、関連情報が送り返された。曽根岡氏によれば、同実験でのオブジェクトの認識率は95%程度だったという。実験の場が劇場ということもあり、照明は必ずしも撮影に適したものではなかったが、オブジェクトの認識に用いているのは輪郭情報のみで色情報は使用していないため、照明の色の違い/反射/影など対象物を取り巻く環境に左右されにくかったという。
新・青い鳥での実証実験のイメージ |
一方、今回の記者説明会では、サクラ大戦の“真宮寺さくら”というキャラクターのフィギュアを使い、デモンストレーションが行なわれた。オブジェクト辞書にはフィギュアの全身の輪郭情報が登録されており、特徴さえ合致すれば、対象物の一部が隠れたり背景が複雑だったりしても影響を受けにくいという。しかし、全身で撮影すべきところをバストアップなどで撮影してしまうと、特徴が認識されないこともある。
システムのイメージ |
2006年度の商用化を目指す
NTTとセガは、今月20日から22日にかけて開催されるNTTグループのプライベートショー“NTTグループコミュニケーション EXPO”(会場:東京国際フォーラム)でこのシステムを出展する。また本日13日から26日まで、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)のインターネット総合サービス“OCN”のポータルサイトに特設コーナー“ケータイでゲット!”を設け、画面に表示されたセガのキャラクターをカメラ内蔵携帯電話機で撮影すると、その情報が送り返される。
NTTは今後、実証実験の結果などを踏まえてビジネスモデルを検討し、2006年度中(2006年4月~2007年3月)の何らかの商用化を目指す。検討の課程では、(株)エヌ・ティ・ティ・データの画像解析システム“パッとび(パッとび-G)”との連携も視野に入れている。商用サービスについては、現在のところ、1000件程度のオブジェクト辞書を作成し、エンターテインメント系の書籍から携帯電話のウェブサイトに誘導したり、部品や製品を撮影するとその操作方法などが書かれたウェブサイトに誘導したり、駅の看板を撮影するとその周辺情報が表示されたり――といったイメージを持っているという。