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2005冬・デジタルオーディオプレーヤー特集

2005冬・デジタルオーディオプレーヤー特集

2005年12月12日 14時59分更新

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注目製品をショートレビュー

 デジタルオーディオプレーヤーの国内における市場動向は、iTunes Music Storeのサービスが始まった8月以降、アップルコンピュータが積極的に新製品を投入してきた関係で、2位のソニーとの差が大きく開く状態が続いていた(関連記事)。その勢いは変わらないが、11月19日にはソニーと松下電器産業が新製品を投入。市場そのものに動きが出てきた。

 特にソニーは、新開発の楽曲管理ソフト“CONNECT Player”を搭載した最初の製品を投入している。(株)BCNがまとめた11月19日~20日のPOSデータではアップルの45%に対してソニーが22.2%のシェアを獲得したという。それ以前の直近の週ではアップルの59,8%に対してソニーは9.7%だったため、倍以上のシェアを獲得したことになる。アップルはiPod nanoや動画対応の第5世代iPodなど魅力のある商品を持っており、まだまだその牙城を崩すところまでは至っていないようだが、今後の動向が注目を集めている。

 それでは、各社から出揃った新製品の中で、編集部が独断と偏見で選択した“注目機種”のショートレビューをお届けしよう。



第5世代「iPod」──アップルコンピュータ

iPod G5
第5世代iPod

 第5世代で動画再生に対応したほか、Microsoft Outlookとの連携など細かな機能追加もなされたアップルコンピュータの「iPod」。第4世代iPod(カラーモデル、2インチで解像度220×176ドット)よりも大画面/高解像度(2.5インチで320×240ドット)の液晶パネルを搭載したほか、本体も11mmに薄型化した(30GBモデルの場合)。バッテリー駆動時間は1時間ほど短くなる(約14時間)が、1.8インチサイズHDD搭載のプレーヤーとしてはバツグンの携帯性である。

 また、こういった目新しいフィーチャーに加えて、音質面が着実に向上しているのも注目したいポイントだ。過度の強調のないクリアーな音質という従来からの特徴に加えて、硬さがとれ、中高域には滑らかさと伸び、低域はゆったりとした厚みが加わった。感じる空間もより広いものとなっている。もちろん平均以上の音質であり、全体的なまとまりがよく、癖がないという点でも評価できる。

 本体のメニュー構造や使い勝手に大きな変更はなく、液晶パネルが大きくなり一覧性が高まった程度の差だが、これは従来機の完成度の高さの表れとも言えるだろう。大きな不満点としては漢字を使った曲名やアーチスト名が50音順に並ばないこと程度ではないだろうか。

 細かく見ていくと他社に一歩譲る部分もあり、例えばバッテリー寿命などはと短い(しかも完全には電源が切れず、待機電力も高め)ほうだが、価格や使い勝手を含めたすべての面において平均以下になる要素はなく、死角の少ないモデルであるの確か。フラッシュメモリーを採用した兄弟機のiPod nanoと合わせて、携帯型音楽プレーヤーを買う際にはまず選択肢に入れたい製品だ。



次世代ウォークマン「NW-A1000」──ソニー

NW-A1000
NW-A1000/B(ピアノブラックのソニースタイル専用モデル)

 “ソニー・ウォークマン”の新ブランド“Aシリーズ”は、従来機「NW-HD5」から外観を一新。流線型の独特な形状のボディーは、閉じた状態の携帯電話機や石鹸箱なども思わせるものとなった。1.8インチHDDを搭載した上位モデルの“A3000”シリーズと、1インチタイプの“A1000”シリーズの2種類があるが、今回はソニーとしては初の1インチモデル「NW-A1000」(容量6GB)を評価した。A1000シリーズには店頭モデルとは別に、直販サイト“SonyStyle”専用モデルも用意されており、店頭では選べないピアノブラックのカラーリングや8GBモデルも選べる。

 NW-A1000はハードウェアのほかに新開発のソフトウェア「CONECT Player」もウリなのだが、操作性や動作速度を含めた詳細は、後日掲載予定のレビュー記事に譲る。ファーストインプレッションとしては、操作性を含めたハード面ではよくまとまっている印象だ。今回のモデルで追加された“OPTION”ボタンは、Windowsの右クリックメニューのように、押すことでいま行なえる追加機能が一覧表示できるもので、直感的な操作が可能だ。

 選曲操作に関しては“イニシャルサーチ”と呼ばれるアーチスト名や曲名の“頭文字”で検索できる機能を持つほか、“リストサーチ”と呼ばれる一般的な選曲方法でも頭文字が“A-E”“カ行”のものといった範囲でタブに区切り、簡単にショートカットできるようになっている。Gracenoteから入手する楽曲のメタファイルには読み仮名の情報も格納されており、漢字を利用している場合でもしっかりソートされる。

 液晶パネルの下側に置かれている各種操作ボタンの位置が、片手ではやや押しにくい位置にあるのが残念だが、本体は手の中にすっぽりと収納でき、ホールド感も上々。左手で本体を構え右手の人差し指でボタンを押すというスタイルであれば安定して操作できる。

 音質もいわゆるソニーサウンドで、重量感があり、エネルギッシュな表現が特徴だ。ひとつひとつの音がくっきりはっきり聞こえるという点ではモニター的で、クラシックやアコースティック楽器ではもう少し余韻のようなものを求めたい部分もあるが、ロックやエレクトロニクスなど明確なリズムを刻むような楽曲ではメリハリが利いており、なかなか楽しめそうである。



高音質が武器「HD30GA9」──ケンウッド

HD30GA9HD30GA9

 ケンウッドの音質責任者“音質マイスター”が商品開発に加わったHDDプレーヤーの最新モデル。今夏に発売された「HD20GA7」の上位モデルとして、独自の高音質化技術“Supreme”(シュプリーム)や可逆圧縮コーデックの“KENWOOD Lossless”などの機能が追加されている。音質は、HD20GA7とHD30GA9と味付けは若干異なるものの、より落ち着いて品格あるサウンドとなった。

 HD20GA7は、既存のデジタルオーディオプレーヤーを凌駕する高音質としてマニア層を中心に高い評価を得ている製品。安価な汎用部品を組み合わせて作られることの多いポータブルオーディオの中で、デジタルアンプなど自社のノウハウを生かした独自設計のパーツも数多く使用しており、設計姿勢から他社と異なるのは特徴だ。

 価格は5万円前後と他社製品に比べ1~1万5000円程度高価な値付けで、操作性の面でもiPodなど他社製品に優位性があるが、差別化の要素が難しくなりつつあるHDDプレーヤーの市場の中で、後発ながら“音質”という自社の持ち味を生かした製品開発を行なっている点は注目に値する。オーディオは趣向製品のため、音質の優劣が付け辛いが、旧モデルのHD20GA7を含めた“Media KEG”シリーズの2製品に関して言えば、趣向の差を除いても他社と明確な差を感じるワンランク上の品質であり、そこに価値を見出せるなら、まず選択肢に入る製品ではないか。



SDメモリーカード対応「SV-SD750V」──松下電器産業

SV-SD750V
D-Snap Audio SV-SD750V

 松下電器産業の「SV-SD750V」は、記録媒体にSDメモリーカードを採用したデジタルオーディオプレーヤーだ。最近ではHDDやシリコンメモリーを採用したモデルが中心。しかし、かつては高価だったSDメモリーカードも1GBで1万円前後と比較的手ごろな価格にまで落ち、デジタルカメラや携帯電話機の普及により、最近では個人でも複数枚を所有しているのが珍しくない状況になっているのも事実だ。

 例えば、128MBのカードに128kbpsで記録した場合約2時間10分の記録が可能。64kbpsなら約4時間21分となる。32MBのカードでも64kbpsで1時間前後(アルバム1枚分)の音楽が記録できる計算になるので、使い道のなくなった低容量のメモリーを有効活用することもできそうだ。また、DIGAや音楽再生対応の携帯電話機などSDメモリースロット搭載機器との連携も容易なほか、パソコンレスで音楽CDのリッピングや楽曲管理ができるHDDコンポ「“D-dock” SC-SX800」といった製品も登場している。

 使いまわしやアップグレードが可能というSDメモリーカードの特徴に加えて、SV-SD750Vは薄さ9.9mmというスリムなサイズと、交換可能なリチウムイオン充電池使用時で約45時間。本体付属の単3乾電池パックを併用すると100時間を越す使用にも耐える長時間のバッテリー駆動時間も特徴的だ。

 音質面でもデジタルアンプの搭載や、圧縮時に音源から失われた高音域の情報を補完する“リ.マスター”機能などを備えた“D.SOUND(Dサウンド)エンジン”を採用。音質も音離れがよくクリアーで、聞きごたえのあるものとなっている。



コンポとも連携しやすい「XA-HD500」──日本ビクター

XA-HD500
XA-HD500

 日本ビクターの“alneo”シリーズでは唯一のHDD搭載モデル「XA-HD500」は、AVメーカーであるビクターが培った独自技術を積極的に導入するとともに、バッテリーの持ちや携帯性といった音楽プレーヤーに欠かすことのできない要素や、コンポとの連携機能などにも配慮したバランスのよさが光る製品である。

 音質面では、圧縮時に失われる高域成分を補間する“CCコンバーター”の採用や、より豊かな低音が楽しめる“デジタルAHB”、5種類の音場効果が選択できる“E.サラウンド”、ユーザーが自由にカスタマイズできる5バンドのイコライジング機能などを用意。このクラスではかなり高度な音質のカスタマイズ機能も備えている。

 機能的には赤外線リモコンとLINE-OUT付きの充電クレードルを標準添付し、コンポとの接続が簡単にできる点が特徴である。HDDプレーヤーをAVシステムの一部として積極的に利用してほしいという、AVメーカーならではの提案だ。リモコンでは本体操作のすべてを行なうことが可能で、良質なコンポと組めば、CDを上回る利便性でたくさんの音楽を長時間、好きな順番で楽しむことができる。

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