ケンウッドはオーディオ界のブラジル!?
萩原氏は、ケンウッドの技術者1人1人のポテンシャルの高さが組み合わさったことで、今回の製品が生まれたと言う。
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設計時に非常にこだわったというステンレス製のフレーム。振動を最小限に抑えるため、左右対称とした |
[高橋]
今回は音質の責任者ということで萩原の力を借りてるんですが、設計担当者には担当者なりのポリシーがあるみたいで。言葉は悪いんですが曲者が多いんです(笑)。かなりこだわっていて、新しくこういう曲を聴いてくださいと、萩原のほうに持っていったりもしてるんですね。HDDの中にはやり取りを繰り返すたびに曲が増えていって、新しいポップスやボーカルものもずいぶん聴いてもらったんです。
[萩原]
これは社内的な事情なんですが、オーディオっていったらまずは“ピュアオーディオ”でしょ? つまり、ポータブルってのはちょっと忘れ去られたところにあったんですね。逆にそういうところで活躍してる技術者はポテンシャルが非常に高いんですね。技術屋だったらね、ひずみよくしましたとか、じゃあどんな音に改善されるんだろうなんてことは必ず思うじゃないですか。彼らなりに長年取り組んできた、その集大成が今回の製品と言えます。その意味じゃ、私のやったことはほんのちょっとかもしれないですね。
技術者サイドから、音質マイスターへの働きかけという部分では、HDDや基板を固定するフレームへのこだわりがあったという。オーディオ機器では振動が音質に悪影響を及ぼすのが常識とされているが、その影響を最小限に抑えるためにHD20GA7ではフレームの材料に非磁性体のステンレスを使用し、かつ左右を完全に対称としたという。
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カタログやウェブサイトに掲載されている情報は、デジタル機器というよりはオーディオ機器に近いもので、ある意味新鮮だ |
[萩原]
これも私が「やれ」って言ってやったわけじゃないんですよ。技術者がこれは対称にすべきだと主張して、それを形にした。
[小川]
サイズに制約のある携帯機器ではこれはかなり難しいことなんです。通常はどこか妥協する部分が出てしまう。最終的には“企画”のほうが妥協させられたわけですが(笑)。前面のキーの位置を微妙にズラすとか、逃げながらなんとか実現しました。
[萩原]
ケンウッドって会社の面白いところはそういうところなんですね。設計だけでなくデザインも自由ですね。みんな勝手にやってる。
[高橋]
それでも最後はまとめますから、言うならばブラジルみたいな会社ですね。萩原のことをケンウッドのジーコって私は呼んでますから(笑)。いるだけで存在感が大きい。でもピッチにいるのは技術者で、ひとりひとりは自由にやっているけど、それが結果的にはいい方向に動くんです。