携帯プレーヤーに4番バッターを投入した、ケンウッドの意気込み
(株)ケンウッド初のハードディスク内蔵型の音楽プレーヤー「HD20GA7」が、先週半ばから店頭に並び始めた。最大の特徴は“音質”へのこだわりだ。各社のHDDプレーヤーは世代を重ねる中で少しずつ進化を続け、音質面での改良も行なわれているが、これまでの中心的な課題は小型化や機能、デザインなどであり、音響機器として長期間の使用に耐えうる製品は決して多くはなかった。
HD20GA7 |
しかし、ここにきてそういった雰囲気に“変化の兆し”が出ている。例えば日本ビクター(株)は6月8日に開いた発表会で「パソコンの周辺機器ではなく、オーディオ機器として製品を企画した」と開発の姿勢を表現。記事にはできなかったのだが、先日取材したソニー(株)の技術者も「ソニーが作る以上、音がいいのは当たり前」とコメントし、音質に対する自信をのぞかせていた。MDやポータブルCDの市場がシュリンクする中、国内のAV機器メーカーはそのリプレースメントとして、携帯音楽プレーヤーを捉えている。“いい音楽をいい音で聴く”という最も基本的かつ重要な課題が、ようやく携帯音楽プレーヤーの世界でも重視されるようになったのだ。
ケンウッドは“音の責任者”である“音質マイスター”という役職を、企画・開発・販売の責任者とは別に3年前から設け、その許可が下りた製品だけを市場投入するようにしている。今回発売されたHD20GA7も、この音質マイスターの厳しいチェックをパスしたものだ。東京・八王子にあるケンウッドの本社を訪ね、HD20GA7にこめられた音質に対するこだわりを聞いた。
音質マイスターの仕事とは
ケンウッドで“音質マイスター”の肩書きを持つ人物は現在3名。それぞれホームオーディオ、スピーカーシステム、カーオーディオの各事業部に在籍している。今回インタビューした、ホームエレクトロニクス事業部音質研究室主幹の萩原 光男(はぎわら みつお)氏は、ケンウッドに入社後、ホームオーディオの設計を10年、スピーカーを10年、カーステレオを10年担当した後、現在の役職に就任した。現在はホームオーディオ製品の“音質”責任者として、ハイエンドの製品だけではなく、普及価格帯の製品も含めたほとんどの製品のチェックを行なっている。
“音質マイスター”の仕事について萩原氏は言う。
HD20GA7の“音質マイスター”、萩原 光男氏 |
萩原氏は過去のキャリアの中で、カーオーディオの開発に携わったことが現在の仕事の大きなプラスになっていると言う。
ケンウッドの考える“いい音”とは何なのか。商品企画を担当したホームエレクトロニクス事業部商品企画設計部プロジェクトグループグループ長の小川 靖徳(おがわ やすのり)氏は以下のように述べる。
小川氏は「オーディオ専門メーカーのケンウッドが、そうでないメーカーと音で勝負したら“10対0のコールドゲーム”で勝てるぐらいの気持ちでないといけない」と意気込みを語る。