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【INTERVIEW】なぜ日本にGoogleが生まれないか? 東大の坂村教授が指摘する日本企業に欠如したもの

2005年12月05日 19時21分更新

文● 聞き手:遠藤諭、構成:編集部 小林久

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[遠藤] お話をまとめると、マネージメントを見据えた“分析”を行なわなければならないということだと思います。そして、米国にはすでにそういう下地があって“グーグルゾン”(Google+Amazon)じゃないけど、それこそインターネットのさまざまな情報がGoogleの中に取り込まれて、その情報を利用してバンバンと商売をやられちゃっている。その勢いは、小売や流通って言葉が昔話になるんじゃないかというほどです。ストーリーとしては、そのために“分析”が必要ですってことだと思うんですけど、この分析で終わりってわけじゃもちろんないですよね?
[坂村] ええ。分析した情報に対して、どうアクションをするかって話になりますから。そして、それがまさにテクノロジーマネージメントの狙ってるところになりますね。分析された情報をどう使って、目的を達成していくかって話になります。
独自技術の重要性
テクノロジーマネージメントは重要だが、それだけになってしまってはいけないと坂村氏
[遠藤] 今日、私がここに座って話を聞き始めて、すぐに思ったのは、映画の世界。日本は妙にコンテンツ大国だとか言い出して、突然、そういうところに力を入れ始めたりとか……この点にはいろいろ意見があるけど、長くなるんでやめますけどね(笑)。ただ、マネージメントできる人がいないという点では、映画やアニメといったコンテンツの世界も同じだなと。いいコンテンツを持ってても、肝心のマネージメントを海外に託しちゃってるところもある。
[坂村] そこが一番おいしいところなのに、と思いますね。
[遠藤] つまり、問題はテクノロジーの世界に限った話じゃないんですよ。
[坂村] 自分の持っている特許をどう駆使するかとか、人の持っている特許をどう利用するかなど、テクノロジーのほうが話がシンプルですけど、それだけじゃないんですよね。
[遠藤] 先生の著書『グローバルスタンダードと国家戦略』(NTT出版)に、サムネイル特許に関わる三洋電機と米Ampex(アンペックス)社の訴訟の話が載っていて、興味深く読んだんですが、いままで日本企業はこういった問題にどう取り組んできたのですか? 痛い目にあった企業がそのつど改善してきた感じでしょうか。
[坂村] いや痛い目にあっても、根本的な対応策を採って来なかったのが実情でしょうね。だから、同じ過ちを何回も繰り返してしまうんですよ。そして莫大な金額を支払うことになる。ふざけた話でしょ?
[遠藤] 今日は違う話をうかがいに来たのに、国粋対談みたいになってきた(笑)。でも、私自身もその点強く思ってて、危機感を持ってるんですよ。
遠藤 坂村
今日は違うお話できたのに、まるで国粋対談みたいになってきましたね
[坂村] 危機感は持つべきだと思いますよ。日本の今までのやり方を見てみると、問題認識をしっかりと持てれば、そのための改善や改良は得意なはずなんですよ。だけれども、現状では問題認識がしっかりとなされてないから、状況認識が不十分です。僕らの言葉で言えば、現状に対しての分析がなされていない。
[遠藤] 海外から見ると日本の企業はすごく粘っこくて、改善力が強いと思われているようなんですけどね。
[坂村] 問題が分かれば、強いんですよ。逆にアメリカは、テクノロジーマネージメントだけで儲けようと思ってるでしょ。「じゃあ、テクノロジーはあるの?」って聞いたら「それは他から集めればいい」って答える。
[遠藤] 日本はまだギリギリ残ってるかな。
[坂村] 弁護士だけになったら、どうするの? 法律は大事だと思うけど、利益が上がっている分野がそこだけという状態は異常ですよね。バランスが大事なんです。根幹となるテクノロジーがなくなっちゃったら、そのものの本質がなくなっちゃうわけですから。

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