フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(株)は2日、東京・虎ノ門のホテルオークラ東京にプレス関係者を集め、車載半導体の新製品『MC9S12XFR』(統合型マイクロコントローラー)、『MFR4300』(スタンドアロンFlexRayコントローラー)、および車内ネットワーク規格“FlexRay(フレックスレイ)”の概要を紹介する記者説明会を開催した。
トランスポーテーション&スタンダード プロダクツ グループ オートモーティブ担当ジェネラルマネージャーの関口義雄氏 |
説明会には、トランスポーテーション&スタンダード プロダクツ グループ オートモーティブ担当ジェネラルマネージャーの関口義雄氏、同オートモーティブMCUオペレーション マーケティングマネージャーの武藤功二氏、同グループオートモーティブMCUオペレーション オペレーションマネージャーの鎌田尚之氏らが出席し、同社の取り組みや新製品の説明を行なった。
車載電子システムが急増しており、そのバックボーンとなる高速ネットワークとしてFlexRayの策定が急がれていたという |
最初に挨拶した関口氏は、同社の車載半導体に関する取り組みについて
- 車載半導体はフリースケールの3つのビジネスグループのひとつ(ほかはワイヤレス&モバイル、ネットワーク)
- 車載半導体のグループ単独で、2004年度の売り上げが26億ドル(約3120億円)で、そのうち2/3が自動車関連で占められる(ほかは民生品など)
- 1997年以来45億個以上の車載半導体を出荷している
- 車載半導体には“センサー”“プロセッサー”“コントロール(アナログ制御)”の3つの機能が求められ、フリースケールでは6つのICでこれらを実現する。いずれもネットワーク対応により、個々の機能を強調したソリューションで提供している
などと説明した。
フリースケールの車載向け半導体製品のラインナップ | 全体をネットワーク経由で連携させ、ソリューションとしての提供を行なっているという |
オートモーティブMCUオペレーション マーケティングマネージャーの武藤功二氏 |
続いて武藤氏が“FlexRay”の概要を紹介した。同氏の説明によると、FlexRayは2000年に独BMW社/米ダイムラー・クライスラー(Daimler Chrysler)社/米フリースケール・セミコンダクタ(Freescale Semiconductor、当時は米モトローラ(Motolora)社の半導体セクター)/オランダのロイヤル・フィリップス・エレクトロニクス(Royal Pholips Elecrtonics)社の4社が参加してコンソーシアムを設立した、高速伝送が特徴の車載ネットワークプロトコル。
従来からCAN(Controller Area Network)/LIN(Local Interconnect Network)といった車載向けネットワークが使われているが、これらは物理層の実装が安価にできる半面、伝送速度が遅く(CANは1Mbps、LINは115kbps)、燃費計算や安全な運転制御(補助)といった用途により高速で信頼性の高いネットワークが求められていた。これに応えるべく規格化されたのがFlexRayで、現在は最終版と目される“Ver.2.1”が策定されている。
FlexRay導入後の自動車内ネットワークの構成例 |
FlexRay Ver.2.1では、10Mbpsの情報伝送チャネルを2本用いて、高速伝送と高いデータ信頼性が特徴。2本のチャネルで同じデータを送受信し、双方で確認することで“FTCOMM”(Fault Tolerant Communication、耐障害性通信)を実現できるという。実際にFlexRayを実装する場合は、ブレーキやハンドルなどの“車両制御”と、エンジンやトランスミッションなどを接続する基盤ネットワークとしてFlexRayを利用し、ドアの開閉やエアコン、車内アクセサリーの制御といった既存ネットワークで伝送速度が十分なデバイスについてはCAN/LINを併用するとしている。これにより、自動車メーカーはコストを抑えながら高速ネットワークによるメリットを享受できる。
高速ネットワークの具体的なメリットとしては
- リアルタイムの燃料計算により、燃費効率を最適化したエンジン(燃料吐出)制御が可能
- 各種センサーと連動して事故を未然に防ぐためのアクセル/ブレーキ制御が可能
などを挙げた。
統合型マイクロコントローラー『MC9S12XFR』搭載の評価用サンプルボード | FlexRayコントローラー『MFR4300』を使った評価用の外付けネットワークボード(ドーターボード仕様) |
MC9S12XFRの回路構成図 | MFR4300の回路構成図 |
今回サンプル出荷が発表された車載半導体は、以下の2製品。
- MC9S12XFR
- 16bit CPU“HCS12X”(40MHz駆動)と“XGATE”コプロセッサー(CPUが処理中に並行して周辺デバイスを制御するコントローラーユニット)、FlexRayコントローラー(2チャネル)を一体化した統合型マイクロコントローラー
- 0.25μmプロセスルールで製造し、80ピンQFP(Quad Flat Package)もしくは64ピン/112ピンLQFP(Low Profile QFP)パッケージで提供
- サンプル価格は3000円程度を予定
- MFR4300
- 既存のCAN/LINシステムに外付けできる2チャネル対応FlexRayコントローラー
- 0.25μmプロセスルールで製造し、64ピンLQFPパッケージで提供
- サンプル価格は3000円程度を予定
2タイプ用意した理由について鎌田氏は、「既存製品(車体/車載ネットワーク)に組み込んで評価いただくため」としており、いずれも既存の車載ネットワーク(CAN/LIN/MOST(Media Oriented Systems Transport))との接続インターフェースを持つ。
グループオートモーティブMCUオペレーション オペレーションマネージャーの鎌田尚之氏 | 統合型マイクロコントローラーのロードマップ。すでにPowerPC搭載タイプは開発中で、その上位モデルと低価格普及モデルの検討を始めているという |
今後同社では、統合型マイクロコントローラーのCPU部分をPowerPCコアに変更した高機能モデルや低価格モデルなど、バリエーションを揃えていく計画がある。また、FlexRay 2.1搭載の自動車が実際に市販される時期については、2008年から2009年ごろの見込みだという。