シトリックス・システムズ、“アクセス プラットフォーム”の最新版『Citrix Access Suite 4.2』を発表――“FOMA”『M1000』用クライアントの開発も表明
2005年11月29日 22時33分更新
この日行なわれた記者発表会に出席した米シトリックス・システムズ、シトリックス・システムズ・ジャパン、NTTドコモの関係者 |
シトリックス・システムズ・ジャパン(株)は29日、“アクセス プラットフォーム”の最新版『Citrix Access Suite 4.2』と、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモの携帯電話端末“ビジネスFOMA”『M1000』で“Citrix Presentation Server”によるサーバーベースコンピューティング環境を利用するためのクライアントモジュール『Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント』の開発を発表した。
シトリックスが提供する“アクセス プラットフォーム”の基本構造 |
シトリックスが“アクセス プラットフォーム”と呼称している“Citrix Access Suite”は、企業の情報システムやリソースをネットワークを介してさまざまなデバイスからアクセスして利用するためのサーバーベースコンピューティング基盤。2005年5月に発表された『Citrix Access Suite 4.0』を機に、従来の“MetaFrame”からブランド名が変更された。
『Citrix Access Suite 4.0』と『Citrix Access Suite 4.2』の構成製品比較 | x64対応により向上したパフォーマンス(収容ユーザー数)のベンチマーク結果 |
今回発表された新製品『Citrix Access Suite 4.2』では、“Citrix Access Suite”を構成する主要3製品がそれぞれマイナーバージョンアップしている。構成製品と主な強化点、出荷開始日は次のとおり。
- 『Citrix Presentation Server 4.0 for Windows 2003 Server x64 Edition』
- Windows Server 2003 x64 Editions対応。64bitメモリー空間のサポートにより、1サーバーでサポート可能なユーザー数が増加し、同社ベンチマークテストによると、32bit版の『Citrix Presentation Server 4.0』に比べ65%以上増加
- 32bit版『Citrix Presentation Server 4.0』のパッケージに追加して提供
- 出荷開始日:11月29日
- 『Citrix Password Manager 4.1』
- Windows Server 2003 x64 Editions対応
- アプリケーション対応の強化
- 管理機能の追加(ユーザーパスワードへの有効期限設定、管理者が一括してユーザーのパスワード設定を事前に行なえるプロビジョニング機能)
- ユーザー自身によるパスワードリセット/サービスブロック解除機能の追加
- 出荷開始日:11月29日
- 『Citrix Access Gateway 4.2』(アプライアンス)
- Citrix Presentation Serverとの連携強化
- 集中管理型ログおよび傾向レポート機能、ウェブサーバー負荷分散機能の追加
- オプション製品の“Citrix Advanced Access Control”も4.2にバージョンアップして同時出荷
- 出荷開始日:12月14日予定
なお、統合パッケージの『Citrix Access Suite 4.2』は12月14日に出荷開始予定。
『Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント』のシステム構造。“Citrix Presentation Server”側には追加投資は必要ないとのこと |
開発を正式表明した『Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント』は、NTTドコモの『M1000』から、“Citrix Presentation Server”が配信するWindowsアプリケーションや企業の情報システムなどを利用するためのクライアントモジュール(ソフトウェア)。同社は2005年2月にNTTドコモと法人向けソリューションの開発を推進する“ソリューション・クリエイティングパートナー契約”を締結、『M1000』によるモバイル・ソリューションのテストマーケティングと製品化に向けた協業を進めていたという。今後両社は、具体的なマーケティングプランを検討し、『Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント』の完成後、両社製品を融合したモバイルソリューション展開していく予定だとしている。
『Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント』の主な機能は以下のとおり。
- スクロール表示/スケーリング表示/ランドスケープモード
- 『M1000』の画面表示解像度を考慮し、Windowsの画面全体を表示するためのスクロール機能、縮小表示機能を搭載。“ランドスケープモード”では、『M1000』を横置きにして横長画面での使用が可能
- クライアントドライブの割り当て
- 『M1000』のローカルドライブを“Citrix Presentation Server”のドライブに割り当てる機能。通常のネットワークドライブと同様にWindowsのエクスプローラやアプリケーションで利用可能
- “SmoothRoaming”のサポート
- 切断した通信セッションに再接続できる“SmoothRoaming”機能をサポート。別デバイス間(『M1000』とオフィスのパソコンなど)での再接続も可能
- SSL/TLS1.0サポート
- FEP(Front End Processor)/ソフトキーボードのサポート
- 『M1000』が持つすべての入力システムが利用可能なほか、独自のソフトウェアキーボードを持ち、『M1000』の標準FEPでは不可能な入力(ファンクションキーや各種制御キーの入力)が可能
提供開始時期は、現時点では2006年の早い段階を予定。提供方法は、ウェブサイトでの無償ダウンロード提供になるという。
また同社はこの日、東京・芝公園の東京プリンスホテル パークタワーにおいて同社の最新技術動向などを解説するカンファレンス“Citrix iForum 2005 Japan”を開催し、米シトリックス・システムズ社 最高経営者兼社長のマーク・テンプルトン(Mark B. Templeton)氏が基調講演を行なった。
米シトリックス・システムズ 最高経営者兼社長のマーク・テンプルトン氏 |
“Citrix iForum”の日本開催は2003年以来2年ぶりとなるが、テンプルトン氏は、この間に新製品の開発や戦略的な企業買収といった活動を積極的に進め、「end-to-endのアクセス・インフラを提供するために努力」してきたといい、過去10年間でアクセス・インフラ・ビジネスは大きく成長し、現在では同社製品を全世界で数千万ユーザーが利用していると述べた。
同氏はIT市場の現況について、ITに対する投資の予算成長が3~5%に鈍化し、この先もしばらくはこの状況が続くとの厳しい予測を示している。このような状況の中、「(“システムが動く”“システムを拡大する”ことに向けた過去のIT投資から)“最適化”の時代に移り変わっている」といい、ITシステムのあり方は「ビジネスのためのIT」を目指すべきであると述べた。
しかし、ITシステムの複雑化が進行した現在は、最適化に向けたIT環境の整備が困難でもあることから、同社では、「サービス指向のアクセス・アーキテクチャー」により、低コスト/高パフォーマンスのアプリケーション配信機能と堅牢で柔軟なアクセスのセキュリティー/コントロールを提供し、あらゆるアプリケーションのタイプに適したさまざまな“アクセス・アーキテクチャー”を実現し、「ナンバーワン企業として、最適なアクセスを、俊敏で快適に提供」していくと述べた。
テンプルトン氏の基調講演中に登壇したマイクロソフト 執行役常務 エンタープライズビジネス担当の平井康文氏。エンタープライズのIT環境における課題(複雑性解消/コスト削減/セキュリティー向上)に向けては「ITインフラの最適化が必要」だと述べた |
このほか同氏は、米マイクロソフト社/マイクロソフト(株)との強いパートナーシップを強調。今後、次期Windows Server“Longhorn”向け製品や、次期Windowsクライアント“Windows Vista”用のCitrix Presentation Serverクライアントの開発や、両社協業によるWindows Server“Longhorn”のターミナルサーバー機能の開発を進めていくという。
シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔氏。手には『M1000』と『W-ZERO3』を持っている |
また、基調講演の最後に登壇したシトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔(おおこしゅんすけ)氏は、同社製品の活用による「ビジネスとITの親和性の向上」をアピール。この中で同氏は、『M1000』用クライアントモジュールに続き、(株)ウィルコムの携帯情報端末『W-ZERO3』用クライアントモジュールの開発にも取り組んでいくことを明らかにした。大古氏は「日本のユーザーには、携帯電話のようなインターフェースが今後も根強く伸びていく」との予測し、携帯電話をクライアントとしたサーバーベースコンピューティングの拡大に期待感を示した。