イベントの開幕を告げるモバイル・コンテンツ・フォーラム事務局長の岸原孝昌氏 |
移動通信機を利用したビジネスの担当者に向けたカンファレンス“MCF モバイル コンファレンス 2005(mobidec 2005)”が、29日、東京・秋葉原コンベンションホールで開幕した。主催はモバイル関連企業による業界団体“モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)”と(株)翔泳社。会期は30日までで、参加費用はMCF会員が2万9400円、スポンサー会員が3万6750円、一般参加は3万9900円。
mobidec 2005の会期中には40を超える講演が行なわれるが、その先陣を切ったのは、移動通信キャリアー最大手の(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ コンテンツ&カスタマ部 コンテンツ担当部長の山口義輝氏だ。明後日には師走ということで、番号ポータビリティー導入、3社の携帯電話事業参入が予定されている2006年は、「業界(通信キャリアー)にとっては厳しい年に、コンテンツプロバイダーにはいい年に」なると挨拶した。
160億円市場にまで押し上げたのは“定額制”
NTTドコモ コンテンツ&カスタマ部 コンテンツ担当部長の山口義輝氏。同氏によれば、現在のiモードコンテンツ市場は、パケット通信料が定額になり、ユーザーが使うようになり、上質なコンテンツがリリースされるという成長のモデルが形成されているという |
山口氏は、講演の前半ではiメニューサイト(iモード公式サイト)のコンテンツの市場規模を、後半では年末商戦向けの最新機種である“FOMA 902iシリーズ”(10月発表)、FeliCaチップによる電子決済/認証サービス“iモードFeliCa”や“おサイフケータイ”向けクレジットブランド“iD”(11月発表)などを紹介した。
特に注目すべきは前半で、聴衆の多くがコンテンツプロバイダーの担当者ということもあり、通常の記者発表会では触れられないような詳細な実績を挙げつつ、山口氏はiモードコンテンツ市場の有望性をアピールした。詳細は順を追って述べるが、月額のiモード情報料収入(“月額210円”などと公式サイトごとに定められた情報料)は約160億円という。
月額のiモード情報料収入の推移。iモード情報料は、NTTドコモの料金回収代行手数料(詳細非公開)などが差し引かれて、各コンテンツプロバイダーの懐に入る |
利用者1人が支払う有料サイトの情報料(総額)の月額平均をみると、9月現在、全体(FOMA契約者とmova契約者の合計)が583.7円、FOMA契約者が752.8円、mova契約者が430.1円。2~3年前は200円台だったのだが、FOMAとFOMA向けパケット通信料定額制サービス“パケ・ホーダイ”が普及するにつれユーザーのアクティビティーが高まり、このように大きく躍進したのだという。また、かつてFOMA端末をいち早く契約し、有料コンテンツ市場を支えたのはゲームなどの利用に熱心な“一部”のユーザーだったが、「(今回し紹介したFOMA契約者の実績は)1600~1700万の平均なので、これはボーダフォン(株)1個(1社)ぶんであり、ピーキー(Peaky:とんがっている)なユーザーに限った話ではない」と強調された。
マイメニュー登録状況 |
「世間ではやっているものは携帯電話でもはやる」
では、どのようなジャンルのコンテンツが人気があるのだろうか。
市場規模の具体的な数値が紹介されたのは、“ゲーム”ジャンルの約35億円、“着メロ”ジャンルの約50億円、“着うた/着モーション”ジャンルの約25億円だ(9月現在)。また山口氏によれば、コンテンツプロバイダーから「何を販売したら売れるか」といった趣旨の質問を頻繁に受けるが、「世間ではやっているものは携帯電話でもはやる」のだという。その例として、テレビ番組の人気上昇とともに、“占い”ジャンルの公式サイトの会員登録数が140%のペースで成長していると紹介された。占い系の公式サイトすべてを合計すると現在160万人が登録しているとのことだが、市場規模など詳細は不明だ。そのほか、現在実績が右肩上がりのジャンルとして、ゲーム、着うた/着モーション、占い、“小説/コミック”のコミック、“ニュース/天気/情報・交通”ほか実用系、ショッピングサイトなどが挙げられた。
着メロ、着うた/着モーションの市場規模 |
ゲームジャンルの市場規模 |
占い系コンテンツのマイメニュー登録数の推移 |
そのほか、山口氏が紹介した各実績は以下のとおり。
FOMAの契約数関連
- FOMA契約数(9月現在)
- 約1677万契約
- 全体(FOMA/mova合計)のFOMAの比率(同)
- 33.6%
- FOMA 90xiシリーズ累計販売数(同)
- 約1500万台
iモードFeliCaおよび外部インターフェース関連
- おサイフケータイ(iモードFeliCa対応機)契約数(9月現在)
- 約650万契約
- FOMA/mova合計の赤外線通信対応端末(10月現在)
- 約3600万台
- バーコードリーダー対応端末(同)
- 約2700万台
定額制サービス関連
- FOMA向けパケット通信料定額制サービス“パケ・ホーダイ”契約数(6月末現在)
- 約330万契約
- パケ・ホーダイのFOMA内契約率(同)
- 約24%
iメニューサイト(iモード公式サイト)登録関連
- 有料マイメニュー登録率(9月現在)
- 全体 50.4%/FOMA 67.6%/mova 40.5%
- 有料サイトの登録個数(同)
- 全体 2.71個/FOMA 3.19個/mova 2.29個
- 1マイメニューあたりの単価(同)
- 全体 215.4円/FOMA 236.0円/mova 187.8円
- 1人あたりの情報料平均 (同)
- 全体 583.7円/FOMA 752.8円/mova 430.1円
山口氏は最後に、「今後我々キャリアーは儲からなくなってくるだろう。儲からない中で3社新規参入するのもどうかと個人的には思うけれども、コンテンツプロバイダーにとってはビジネスがやりやすい風土が整ってくる。ではNTTドコモはどうするかというと、トラフィックではもう儲からないので、FeliCaチップによるリアル連動を進めて行く」と方針の大枠を語った。その上で、現在のようなコンテンツに限らず、iモードプラットフォームでのビジネスを拡大してくれるよう聴衆に呼びかけた。