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NTTデータら、ICタグを利用した地域安全サービス実験“アイセイフティ”に“交通安全サービス”を追加

2005年11月16日 19時34分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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日産自動車の先端車両開発本部IT&ITS開発部IT&ITS企画グループ主管兼技術企画部主管の福島正夫氏
無線ICタグを手に実機の説明を行なう、日産自動車の先端車両開発本部IT&ITS開発部IT&ITS企画グループ主管兼技術企画部主管の福島正夫氏

(株)エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)と日産自動車(株)、イッツ・コミュニケーションズ(株)、(株)トレンディ、東急セキュリティ(株)の5社は16日、東京・大手町のアーバンネット大手町ビル内NTTコーポレートニューズルームにプレス関係者を集め、地域の安全確保を目的にICタグを用いた共同サービス実験“アイセイフティ”の一環として、特に子どもたちの交通事故低減を目指した“交通安全サービス”を12月から2006年3月末(予定)に実施すると発表した。



発表会に列席したNTTデータの堀間利彦氏ら
発表会に列席したNTTデータの堀間利彦氏(左)と日産自動車の福島正夫氏

発表会には、NTTデータの第三公共システム事業本部市場開拓部長の堀間利彦氏、日産自動車の先端車両開発本部IT&ITS開発部IT&ITS企画グループ主管兼技術企画部主管の福島正夫氏らが出席し、アイセイフティの概要および今回のサービスの背景や狙いを説明した。



アイセイフティとは?

アイセイフティサービス構想の概念図
アイセイフティサービス構想の概念図

アイセイフティは、今年4月から7月まで、横浜市みたけ台地区を対象に、NTTデータ/イッツ・コミュニケーションズ/東急セキュリティの3社が共同で子どもたちを犯罪から守るための“子ども見守りサービス”として実験サービスを提供した。このときには到達距離30m(半径)程度の無線LAN端末を有志の家庭の庭先/塀などに設置して(これを“見守りスポット”と呼ぶ)、カバー範囲内に住む子どもたち188人に無線ICタグを持たせて、危険に遭遇した場合などに通報できるようにしたもの。無線ICタグのボタンが押されると無線LAN経由で最寄の見守りスポットからサービスに参加した保護者(範囲内に居住する子どもたちの両親などが主な対象)および東急セキュリティの警備員に通報する。保護者に通報するのは、「例え野次馬的な意識であっても、(通報した子どもを)近くの大人が探しに行くことで、事故の早期発見や事件の予防に役立つ。その後数分でプロのセキュリティーが到着する」(堀間氏)として、最近の近隣コミュニティーが崩壊した現状で、子どもたちの安全を守りたいという同じ考えを持つ保護者同士の連携による“地域安全の確立”を目指したものだという。

アイセイフティサービスの着眼点 今年4~7月に行なった実験の概要
アイセイフティサービスの着眼点と、今年4~7月に行なった実験“見守りサービス”の概要

NTTデータでは、この実験で構築した無線ICタグと通報システムをプラットフォーム(基盤技術)としてサービスを拡充し、ユーザーの拡大によるコストメリットの増加やビジネス展開を目指したいとしている。

CATVの回線上に設置される“無線LAN基地局”
CATVの回線上に設置される“無線LAN基地局”

12月から開始される“交通安全サービス”は、新たに日産自動車(車載用端末の開発と提供)とトレンディ(システム開発/運用)の協力を得て、横浜市青葉区みたけ台/桜台/たちばな台1丁目を中心に、青葉台駅/藤が丘駅周辺(約2km四方)を対象地域として実施する実験サービス。前回の実験サービスの結果を踏まえて、

  • 誤通報が少なくなるように改良した無線ICタグ
  • 通信エリアを半径100~300mに拡大し、新たに電柱やイッツ・コミュニケーションが敷設した光ケーブルの通信回線上に設置する耐候性の高いアクセスポイント(見守りスポット)
  • 車載用の無線ICタグと音声による情報提供装置(ドライバーに子どもが近くに存在することを声で知らせる)

などを協力者に配布および設置して、前回と同様の“見守りサービス”に加えて、見通しの悪い交差点や公園/学校など、子どもの飛び出しの危険がある場所での事故防止を目指すという。

見守り対象者(子ども)に持たせる無線ICタグ 車載用のICタグと、音声による情報提供装置
見守り対象者(子ども)に持たせる無線ICタグ。お守り袋に入れて、ランドセルなどにつけているという日産自動車が開発した車載用のICタグと、音声による情報提供装置

ICタグは2.4GHz帯の無線を使うアクティブタイプで、内蔵電池により3~5年程度の連続稼働が可能。オンオフの切り替えスイッチがないため、アクセスポイントの通信範囲内に居住する子どもが持っている場合には、常にその存在が知らされることになる。これについては、家の中にいる場合のみ、通信を遮断する箱にしまうなどの対策を現在検討中とのこと。また、前回の実験は1回ボタンを押すだけで通報される仕様だったため、鉄棒で遊んだ子どもが誤って通報してしまうというケースもあった(181日間で合計51回の通報があったという)。これを踏まえて、新しいICタグでは数回続けて押した場合に通報される仕様に変更した。

見守りスポットは、イッツ・コミュニケーションズが運用するCATVインターネットサービス向けと同様の“DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specifications) 2.0”対応ケーブルモデムと、シスコシステムズ(株)の無線LANアクセスポイント『Aironet AP1200』(IEEE 802.11b/g対応)を組み合わせたもの。電源はCATV回線の同軸ケーブルから供給する。

今回の実験サービスの概要 ICタグによる子どもの存在情報通知の仕組み
今回の実験サービスの概要と、ICタグによる子どもの存在情報通知の仕組み

今回の実験サービスの規模と対象者などは次のとおり。

見守りスポット
20ヵ所程度
ドライバー通知参加車両
100台程度(主に対象地域の居住者向け)
見守り対象者(無線ICタグを保持する子ども)
200名程度
駆けつけ支援者
200名程度
警備員
専任1名+対象地域の巡回担当者を数名設置予定

ドライバーにスクールゾーンの存在を示す警告画面やメッセージを出す仕組みを開発中 ICタグより緻密に歩行者の存在位置をドライバーに知らせるシステム
スクールゾーンなど速度制限が必要な地域については、カーナビゲーションシステムの地図情報と連動して、制限速度超過のドライバーにスクールゾーンの存在を示す警告画面やメッセージを出す仕組みを開発中ICタグより緻密に歩行者の存在位置をドライバーに知らせるシステムも独自に開発している
日産自動車では、これ以外にも事故防止のための取り組みを行なっているという

この実験では、見守りスポットの通信範囲内に子どもがいるということを、付近の道路を走る参加車両のドライバーに特定パターンの音声(「子供がいます注意してください」「アイセイフティ緊急通報です」)を通知できるだけで、どのあたりに(前方か左右か後方か、遠距離なのかすぐ目の前なのか)何名程度の子どもがいるのか、といった具体的な内容は知らされない。今後は、子どもたちのプライバシーにも配慮しながらプラットフォームを改良して、GPSによる位置測定や複数の見守りスポットでの三角測量による位置の特定など、さらなるサービスの拡充を図るとともに、今回参加した企業だけの努力ではカバーできない部分を住民や商店会、自治体、関係省庁などに働きかけて、より広域への展開や将来のビジネス化を目指していくとしている。

地域社会基盤サービスの構築に向けた検討体制
地域社会基盤サービスの構築に向けた検討体制

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