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フライトシステム、500万円で実現できる低価格デジタルシネマシステムを開発──国産では初

2005年11月08日 18時37分更新

文● 編集部 小林久

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(株)フライトシステムコンサルティングは8日、国産では初となるデジタルシネマ上映システム『“Hommage(オマージュ) Digital Cinema Broadcaster”DCB-JP2000』を2006年1月に発売すると発表した。

片山氏
フライトシステム代表取締役社長の片山氏

映画の世界では、フィルムを使わずに映画を上映する“デジタルシネマ”の試みが進んでいる。映像/音声データはリムーバブルのHDD、あるいは衛星や光ファイバーといったブロードバンド回線を経由して提供され、大型のDLPプロジェクターで上映される。すでに国内にも50ヵ所のデジタルシアターがあり、7月には『スターウォーズ エピソード3 シスの復讐』の上映が行なわれた。

デジタルシネマは何度上映しても画質が劣化しないという特徴を持つほか、配給会社がフィルムをダビングして輸送する際のコストを抑えられるという利点がある。代表的なシステムとしては、米ドルビーラボラトリーズ(Dolby Laboratories)社の『Dolby Digital Cinema』などがある。

しかし、これまでのデジタルシネマシステムは非常に高価であり、「投影に利用するプロジェクターやシネマプレーヤー(上映用サーバー)などの総額で2000万円程度の出費が必要だった。国内では約2800の映画館があるが、そのうち数千万の機材を導入できるほどの資金力を持つ映画館は200館程度とごく一部」とフライトシステム代表取締役社長の片山圭一郎(かたやま けいいちろう)氏は語る。

同社が提供するシネマプレーヤー『DCB-JP2000』は、単体販売価格が200万円程度。松下電器産業(株)のDLP方式プロジェクター『TH-DW7000-K』との組み合わせでも500万円前後と、従来にはない低価格でデジタルシアターを構築できる点が特徴。

中小規模の映画館のほか、博物館や水族館といった公共施設への導入、デパートの屋上のミニシアターなども視野に入れており、複数の解像度を1つのソースに持てるJPEG2000の特徴を生かし、将来的にはアップルコンピュータ(株)の“QuickTime”を利用した家庭向けの映像配信や、H.264方式を利用した携帯機器向けの映像配信なども計画している。

映像の圧縮方式にはJPEG2000が採用されており、2006年夏にはフルHD(1080i:解像度1920×1080ドット)/毎秒24コマのHD-SDI出力に対応する。映像のビットレートは100Mbps前後(60~150Mbps)となっており、300GBのHDDに3時間の長編が2本記録できるという。7.1chサラウンドにも対応する。本体には2台のリムーバブルHDDを収納可能。インフラが整わない現状ではHDDに保存した映像を宅配便などで送付する方法を考えているという。コンテンツは暗号化されており、配給元が上映可能期間や上映可能な回数などを制御できる。



DCB-JP2000 TH-DW7000-K
シネマプレーヤー部分。スペックは未定だが、会場ではPentium M-1.6MHzをベースにした2Uタイプの製品が展示されていた。OSはSolarisになる見込みセット販売される予定のDLPプロジェクター『TH-DW7000-K』
字幕表示用
字幕表示用のキャプションクリエーター。オリジナル画像に手を加えられないため、再生時に重ねて表示するという

映画の上映前に流れる広告(シネアド)を上映する機能を本体に一体化しているほか、字幕表示用のプレーヤー(価格未定)も併せて提供する。これらの機能は(株)プロメディアワークスのCG描画エンジンGOAをベースにしたもの。シネアド機能は当日入った広告でもリアルタイムに反映できる点がアピールポイントになるという。

Homageシステムで使用する映像システムは、既存のデジタルシネマとは異なる独自のフォーマットを採用するが、同社では2006年1月にグループ化する(株)山下電子設計のJPEG2000リアルタイムエンコード/デコード技術を利用したシステムの提供も行なう考え。コンテンツ提供者のめどに関しては示されなかったが、「当初は大手配給会社ではなく、新規参入を考えるネットベンチャーやインディーズ監督の作品などを中心としたライトウェイトなところを考えている」(山下氏)という。

映画館向けのデジタルシネマシステムとしては破格だが、「これだけを見るとデジタルと分からない、フィルムに遜色ない画質ではないか」と山下氏は語った

なお、ハリウッドの映画スタジオメンバーで構成される“Digital Cinema Initiatives”(DCI)の技術仕様では、フライトシステムの製品とほぼ同等の“2K規格”(解像度2048×1080ドット)のほか、より高画質な“4K規格”(解像度4096×2160ドット)も提唱されている。片山氏は「4K規格に対応したプロジェクターはいまのところソニーとビクターの2社しか開発しておらず、ともにハリウッドの推奨するDLP方式ではなく液晶プロジェクターとなる。今回は2Kの世界でも1500~2000万円していたものを大幅に低価格化できた。4Kは市場動向を見ている段階で、低価格なプロジェクターが出て際には必ずやりたい」とコメントした。

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