ハイビジョンを
そのままの画質で録画したい!
地上デジタル放送(以下地上デジタル)は、2003年12月に東京・名古屋・大阪の3都市圏の一部で放送を開始してから1年半が経過した。放送開始当初は放送波の出力が微弱だったことから、受信エリアが狭い範囲に限られていたが、段階的な出力アップにより上記3都市圏以外の地方(の拠点となる都市)でも2006年末までに放送が開始される予定だ。
受信する側も、地上デジタル対応のハイビジョンTVやDVD/HDDレコーダが家電店に並び、そろそろ普及し始めている。一方PCの地上デジタル対応はというと、あまり進んでいないのが現状だ。
これまで、ハイビジョン番組の録画はできても、1080i(1920×1080ドット)をはじめとする高品位な画質――いわゆるHD品質の映像を視聴できるPCは存在しなかった。それらは視聴時に既存のTVの解像度である480i(720×480ドット)――いわゆるSD品質にコンバートして出力される。つまり地上デジタル最大の魅力である高画質な映像をPCでは楽しめなかったのだ(下囲み参照)。
背景には技術的要因よりも著作権者(コンテンツホルダ)の意向が強く影響している。
SDとHDではこれだけ画質が違う!
SD画質で録画したものを、ウェブサイト掲載用に幅640ドットに縮小したもの | 左の映像から、鴨の頭部を拡大したところ | |
SD画質で録画した映像と拡大したもの |
上はSDの映像(720×480ドット)をDVD-Videoと同じ852×480ドットに引き伸ばした映像。下はハイビジョンで用いられるHD(1920×1080ドット)の映像。拡大すると上のほうがややぼやけているのがわかるだろう。
HD画質で録画したものを、ウェブサイト掲載用に幅640ドットに縮小したもの | 左の映像から、鴨の頭部を拡大したところ | |
HD画質で録画した映像と拡大したもの |
PCの拡張性が
HD映像再生のネックに
そもそもなぜ従来のPCではHD映像をダウンコンバートしていたのかといえば、データを抽出される危険があるためだ。デジタル放送はコンテンツ保護のため「MULTI2」という暗号化(スクランブル)方式を採用しており、地上デジタル対応のTVではこれを復号した上でストリームから映像・音声・文字や画像といった各要素を分離し、再生する。TVやレコーダの場合は一連の処理を専用のハードウェアで実行し、カスタマイズできる余地がほぼない。
だが、PCは一般的にシステムの拡張が容易で、OSも複数のアプリケーションを同時に動作させられる。PCIバス上にストリームデータを流したり、メモリ空間にデコードしたビットマップを展開したら、ほかのデバイスやソフトにデータを読み取られかねない。PCのメリットである柔軟性や機能拡張性をコンテンツホルダは危険視しており、PCでデータを保存・再生することには極めて消極的な対応をとっている。
そんな中、今年4月に富士通がHD映像の視聴・録画に対応する「FMV-DESKPOWER TX」シリーズを発表した。ここにきてようやくPCでも地上デジタルを本来のスペックで楽しめる道が開けてきたのだ。