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Coons Award受賞者・西田教授が語る“研究者として最大の喜び”

2005年09月17日 01時53分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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CG界のノーベル賞と言われる“The Steven A. Coons Award”を日本人として初めて受賞した東京大学教授の西田友是(にした ともゆき)氏が、東京・新宿で16日に開催された“画像電子学会第29回秋季セミナー”で受賞記念講演を行なった。The Steven A. Coons Awardは、米国計算機学会“ACM(Association for Computing Machinery)”の分科会“SIGGRAPH(Special Interest Group for Graphics)”が研究者に与える最も権威がある賞で、長年に渡って業界に大きな貢献をした人物に贈られる。これまでの受賞者は西田氏を含めて12名で、“CGの父”と言われるIvan E. Sutherland(アイバン・サザーランド)氏や、“ベジェ曲面”の開発者Pierre Bezier(ピエール・ベジェ)氏、“Zバッファ法”の開発者Ed Catmull(エド・キャットマル)氏、“バンプマップ法”の開発者James F. Blinn(ジェームス・F・ブリン)氏なども名を連ねている。

西田友是氏
日本人、アジア人として初めての受賞者となった東京大学教授の西田友是氏。SIGGRAPH 2005では、映画監督ジョージ・ルーカス(George Lucas)氏の基調講演の前に講演を行ない、注目を集めたという

西田氏は、間接照明の効果を計算し表現する“ラジオシティ法”の開発者の1人として知られていており(※1)、CGの研究を1972年から30年以上続け、SIGGRAPHに12編もの論文が採択された実績を持つ。The Steven A. Coons Awardの授与は、(1)室内の照明効果や自然現象の表現などで高度な数理的手法や物理的原理を積極的に導入してきた功績や、西田氏が作成するCG画像の美しさや質の高さなどが評価されたものだ。今回の画像電子学会のセミナーでは、SIGGRAPH 2005で行なった講演をなぞり、これまでに手がけた代表的な研究や現在の研究、SIGGRAPH 2005の講演で“お蔵入り”になった映像などが紹介された。お蔵入りになった映像とは、SIGGRAPH 2005で西田氏の後に基調講演を行なった映画監督ジョージ・ルーカス氏を意識して作られた“STAR WARS”のオープニングのパロディーで、西田氏の朗らかな性格が伺える。

※1 西田氏の研究成果はサンプル画像を含め東大・西田研究室のウェブサイトで紹介されている

クーンズ曲面の彫像1 クーンズ曲面の彫像2 クーンズ曲面の彫像3
The Steven A. Coons Awardの受賞者に贈られる“クーンズ曲面”の彫像。内部には西田氏の名前がアルファベットではなく漢字で刻まれており、感激したという

講演の中で特に興味深かったエピソードは、1990年から1998年にかけて行なった“light scattering(光散乱)”の研究の一環として手がけた、大気散乱を考慮した宇宙からみた地球の表示の一件だ。これは「なぜ空は青いの」という絵本の問いかけが1つのヒントとなって始まったという。研究の末、地球の大気のシミュレーションは完成したが、SIGGRAPHのレビュアーに本物と似ているか証明できないと論文を採択できないと注文を付けられ、悩んだ末に西田氏は日本人宇宙飛行士の毛利 衛氏に会いに行くことを決意した。毛利氏はモデル画像を見て、「まさに宇宙からこんなふうに地球が見える」と評価。宇宙から見た地球のスライドを借り、シミュレーションの正しさを証明したという。西田氏は「シミュレーションの効果は偉大だと。僕は(宇宙から地球を)見たことがないのに、シミュレーションの結果は真実と合っている。これは研究者として最大の喜びなのです」と語った。

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