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公衆無線LANサービス戦争開幕!?

公衆無線LANサービス戦争開幕!?

2005年08月25日 09時10分更新

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無料配布でアクセスポイントを急速拡充?
ジャパンワイヤレスの全国展開プラン

 低価格を武器に切り込むライブドア以上に、大胆な戦略で公衆無線LANサービスの展開を計画しているのが、ドリームテクノロジーズ(株)と平成電電(株)のタッグだ。両社は共同出資により、公衆無線LANサービスを手がけるジャパンワイヤレス(株)を設立。11月より全国各都市で公衆無線LANサービスを展開すると発表した。

 ジャパンワイヤレスの公衆無線LANサービスでユニークなのには、アクセスポイント拡充の戦略だ。“誰よりも早く無線LANアクセスポイントを置いた者が勝つ”をコンセプトに、Wi-Fi対応無線LANアクセスポイント10万台を一般ユーザーに無料で提供する(無償貸出)という、前代未聞の作戦を展開するのだ。平成電電のADSLサービスに加入することが条件ではあるが、買えば1万円程度はする無線LANアクセスポイントをタダで配布するというのは、過去にヤフーBBが展開した“ADSLモデム無料配布作戦”並みの大胆な作戦である。正式なサービスが開始された時には、一般ユーザーに配布した無線LANアクセスポイントが、そのまま公衆無線LANサービス用のアクセスポイントに転用できるというわけだ。10万台すべてが配布されれば、これだけで10万ヵ所のアクセスポイント設置になるわけで、他社がコストをかけてアクセスポイントを設置するのに比べれば、設置コストは大幅に低減できるものと予想される。しかし一方で、一般家庭の中に設置される以上、そのアクセスポイントが必ずしも家庭やオフィス外からアクセスできる位置に置かれるとは限らないから、10万台全部が外部から利用できるとはならないだろう。また無線LANアクセスポイントの管理が一般ユーザーに委ねられるということは、セキュリティー面の問題が生じる可能性も懸念される。

ジャパンワイヤレスによる公衆無線LANサービスの展開について発表した、ドリームテクノロジーズ 代表取締役社長の山本勝三氏(中央)と、平成電電 代表取締役の佐藤賢治氏(左2人目)、ジャパンワイヤレス 代表取締役の大山茂氏(右2人目) ジャパンワイヤレスのサービスで利用する無線アクセスポイントや対応機器。一般ユーザーには屋内用アクセスポイントと無線LAN PCカードが無償貸出される
ジャパンワイヤレスによる公衆無線LANサービスの展開について発表した、ドリームテクノロジーズ 代表取締役社長の山本勝三氏(中央)と、平成電電 代表取締役の佐藤賢治氏(左2人目)、ジャパンワイヤレス 代表取締役の大山茂氏(右2人目)ジャパンワイヤレスのサービスで利用する無線アクセスポイントや対応機器。一般ユーザーには屋内用アクセスポイントと無線LAN PCカードが無償貸出される

 またジャパンワイヤレスのサービスで注目なのは、無線通信技術に一般的なWi-Fi(IEEE 802.11a/b/g)に加えて新しい技術である“WiMAX”も採用し、両技術を併用してサービス展開を行なうという点である。WiMAXについては後述するが、見通し距離程度の通信距離に止まるWi-Fiと比べて、1つの基地局でより広範囲をカバーできるため、ブロードバンドネットワークの普及が進んでいない地域や、移動体通信にも適するとされている。ジャパンワイヤレスでは、WiMAXで直接エンドユーザーと基地局を結ぶという使い方よりも、WiMAXでWi-Fiアクセスポイントと基地局を結び、エンドユーザーは一般的なWi-Fiで公衆無線LANサービスを利用するというプランを描いている。WiMAXがまだ登場したばかりで、対応する通信機器がエンドユーザーレベルでは広がっていないことを考えると、理にかなった方法と言えるだろう。またWi-Fi部分にも、“MIMO”(Multiple Input Multipul Output:マイモ)と呼ばれる多重通信技術を利用して、通信可能距離を10倍、最大通信速度を108Mbpsまで向上させるとしている。

ジャパンワイヤレスが計画する公衆無線LANサービスのインフラ構成。バックボーンには平成電電が敷設済みの光ファイバーネットワークを使い、ラスト1マイルには主にWi-Fiを用いる
ジャパンワイヤレスが計画する公衆無線LANサービスのインフラ構成。バックボーンには平成電電が敷設済みの光ファイバーネットワークを使い、ラスト1マイルには主にWi-Fiを用いる

 ジャパンワイヤレスの計画では、11月にサービスを開始し、2005年末までに全国の政令指定都市レベル(人口カバー率25%)をカバー、WiMAX基地局は2006年上期から設置し、2007年末時点で全国にサービスを展開、人口カバー率80%以上を目指すという。ライブドアの知名度の影に隠れているが、今後の展開が楽しみなサービスの1つに挙げられるだろう。



公衆無線LANサービス実現の最終兵器!?
次世代無線LAN“WiMAX”

 先のジャパンワイヤレスのサービスでも利用されるが、次世代の無線LAN技術として注目を浴びているのが“WiMAX”(ワイマックス)である。WiMAXとは“IEEE 802.16”シリーズの無線データ通信技術に付けられた愛称で、IEEE 802.11a/b/gがWi-Fiと呼ばれるようなものである。業界団体の“WiMAX Forum”によって規格化が進められていて、インテルがワイヤレスブロードバンドを実現するキーテクノロジーとして、非常に注力している技術でもある。

インテルが7月に開かれた無線通信機器関連展示会“ワイヤレスジャパン2005”で披露した、システムオンチップ『Intel PRO/Wireless 5116』2基を使ったWiMAXのデモ。WiMAXに関しては、Wi-Fiの時以上にインテルは力を入れている これはWi-Fi対応のVoIP携帯電話機だが、携帯電話機にWiMAX通信機能が内蔵されれば、低コストのIP電話と高速無線データ通信を両立した端末も登場するだろう。第4世代の携帯電話を駆逐する存在になる可能性も?
7月に開かれた無線通信機器関連展示会“ワイヤレスジャパン2005”でインテルが披露した、システムオンチップ『Intel PRO/Wireless 5116』2基を使ったWiMAXのデモ。WiMAXに関しては、Wi-Fiの時以上にインテルは力を入れているこれはWi-Fi対応のVoIP携帯電話機だが、携帯電話機にWiMAX通信機能が内蔵されれば、低コストのIP電話と高速無線データ通信を両立した端末も登場するだろう。第4世代の携帯電話を駆逐する存在になる可能性も?

 WiMAXの特徴をおおざっぱに述べれば、Wi-Fiよりはるかに広い範囲をカバーし、通信速度もADSL以上という、ある意味夢のような技術である。WiMAXの通信距離と速度については、“基地局1つで2~10kmをカバーし、速度は最大75Mbps”という言葉でよく表現される。速度面では光ブロードバンド接続に迫り、カバー範囲の広さは携帯電話以上。これだけ広いと高速移動体での通信も楽にカバーできる。基地局同士を向かい合わせての通信なら、なんと50kmもの距離でも通信可能という。そのため広い国土ゆえにブロードバンドネットワークの普及が遅れている米国などでは、特にブロードバンドネットワークのラスト1マイルを実現する技術として期待されている。一方で日本の場合、家庭や企業へのブロードバンドネットワークの普及は比較的進んでいるので、WiMAXは無線通信ならではのモバイルブロードバンドを実現する技術として期待される。

インテルがWiMAX製品の説明会で示した、想定されるWiMAXの用途。現在はIEEE 802.16-2004の段階で、IEEE 802.16eの登場でさらに使用シーンが広がる
インテルがWiMAX製品の説明会で示した、想定されるWiMAXの用途。現在はIEEE 802.16-2004の段階で、IEEE 802.16eの登場でさらに使用シーンが広がる

 WiMAXを構成する規格としては、策定済みの“IEEE 802.16-2004”や、16-2004を含んで策定中の“IEEE 802.16e”規格があり、通信用に3種類の周波数帯(3.5GHz帯と5.8GHz帯、2.5GHz帯が策定中)が利用される予定である。周波数帯により通信速度や通信可能距離、障害物の影響などは異なる。無線通信に関しては、電波帯域の割り当てや法制度が各国ごとに異なるため、たとえば日本では5.8GHz帯を使った無線LANデータ通信は許可されていないという状況にある。この点については総務省が“ワイヤレスブロードバンド推進研究会”を設けて、WiMAXの実現に向けた周波数の割当方法について検討を行なっている。WiMAXの規格が確定するのは2007年の予定とのことなので、それまでにはなんらかの方針が示され、日本でのワイヤレスブロードバンドにも道が開かれるだろう。2005年は公衆無線LANサービス元年と言ってもよい年であるが、誰もが幅広く使うようになるのは、WiMAXが本格的に登場する2007年以降になるかもしれない。

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