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【こちら秋葉原一丁目ホームページ】Act.0005「“新世界菜館”主人が見た神田の過去・現在・未来」

2005年08月25日 22時10分更新

文● 遠藤諭

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街は“官”ではなく“商人”が作る

新世界菜館の傅健興(フウ・ケンコウ)氏
新世界菜館の傅健興(フウ・ケンコウ)氏

――“新世界菜館”というと、私は、神保町の会社に勤めていた15年くらい前まで、よく少子湯麺をいただいていたんですが、秋葉原にはお店を出されないんですか?

【傅】実は、再開発の話が進んできたときに、最初に声をかけられました(笑)。

――そうでしたか! 私が聞いたのは“秋葉原UDX”にできる飲食フロアは和食中心で集めたそうですね。IT系で来る人ってインド料理やエスニック系、それと中国料理が好きな人が絶対に多いと思うのですよ。刺激がないとダメなのになぁと思ったのですが。

【傅】そうですよねぇ。カレーとかね。

――クロスフィールドに入る企業の人たちは、毎日高級和食で接待するのか、って感じですよね。以前、傅さんがエドバレーの起業大学でお話されたのは、日本で仕事に来たアメリカ人が寿司をさんざん食べたあとに、やっぱり物足りなくて肉を食べに行くという話でしたね。

【傅】僕もクロスフィールドの会合に呼ばれますけど、だいたい僕は反対意見しか言わない。分かってないなーって(笑)。僕のコンセプトと合ってないからね。

――傅さんのコンセプトとは?

【傅】店というのは客が来るもので、店から出向くもんじゃないんです。1軒あれば十分で、そこに人が集って、それがお店のパワーなんだって。
 100店できたから凄いかというと、そんなのあっても発言力なんてない。ウチの1軒の方が全然発言力がある。そうでしょ?
 レストランにはどういう人が来るかが価値であって、売り上げが価値じゃない。そこが分かってないね。私の場合は、自分の年齢層に合わせてお客さんがいる感じなので、そのお客さんのキャリアアップに合わせて店をグレードアップさせてきました。でも、昔のものはいいものがあるので、どこかに残したいので別のタイプの店を作りました。これはアンテナのようなものだと思っているので、多店舗化するつもりは一切ありません。
 レストランって本来、店のオヤジの顔が見えて、コンセプトがハッキリしてるのがたくさんあった方が面白い。どこ行っても同じ店なんてつまらないでしょ。

――神田神保町では、お昼とかどこに行っていますか?

【傅】僕はあらゆるところ、全部に行っています。麺食いですが、カレーも、ほとんどのカレー屋は全部行きました。

――カレーはどこが好きですか?

【傅】“共栄堂”は美味しいですね。“ボンディ”もいいね……。ここらへんのカレー屋は、グレード高いですよ。1軒面白いのがあって、錦華公園の方のちょっと変わった個性的なカレー屋があるんです。トロミがなくてね、テーブルとカウンターの小さなお店で……。

――“メーヤウ”じゃないかな。信濃町の“メーヤウ”とは別なのですかな? 名前が一緒だけで、違うと思いますけど。

【傅】地域のレストランが分からないと戦略が立たないから、いろいろ食べ歩いてみるわけです。私のお店へは、丸の内とかからあらゆるジャンルの人がいらっしゃいますが。

――今は半蔵門線、新宿線、三田線と交通の便がよくなりましたからねぇ。でも、このあたりの本当の発展はこれからですよね。

【傅】そうですね、これから“面”の時代に入って来ますよ。

――渋谷・新宿から1本で来れて、大手町も近い。アキバって、ハンダゴテの焼け焦げが付いたジャンパーを着ているような人しかいなかったのが、スポーツ用品店でスケボーを買って、アキバ駅前の駐車場のところでスケボーをやっているような若者とか、それからファッショナブルじゃないんだけど、東京の東側の若人が一時期集まりそうな感じでしたよね。最近は見なくなっちゃいましたけど。

【傅】僕が今気づいているのは、僕ら団塊の世代は、若いときに楽しんだスポーツに戻ってきている。そういう人たちが目立っている。いいことだと思っているんですけど、僕もまたスキーを始めて、年に1回外国へ行きますよ。

――金持ちですねー。

【傅】自分へのご褒美(笑)。ご褒美はなるべく多い方がいい。
 昔はビクトリアも“安く安く”だったのが、今は、そこに行けばあらゆる種類の良いグレードのものがそろっているというやり方に変わってきました。われわれは良いものが欲しいんです。飽きないもの、本物が。「ビクトリア」も名前を変えて、そいういった層をターゲットにしているし、秋葉原に行けばスピーカーならとんでもなくマニアックな良いものが手に入る。これは良い傾向だと思います。
 そういう意味では、層の幅が広がってきている。ここ2~3年が顕著になっている。



傅氏の会社「健興通商」は、ぬいぐるみの製造・販売・卸も行なっているので、社内にはそこかしこにぬいぐるみ達が……

――お客さん見ていて分かったことですか?

【傅】そうです。昔、ジャンクフードばかり食べていると味覚がダメになると言っていたけど、そんなことはありません。だからファミレスが苦戦しているんです。良いものを食べると戻れなくなっちゃう。あとで気づくものなんですけど、美味しいものって美味しいと感じたときに、もう後には戻れない。昨日、久しぶりにファミレスチェーンの中華屋に偵察に行きましたが、餃子はまあまあ美味しかったですが、ほかのものはこんなもんだなーって(笑)。でも価格競争力はあるんで、これからもお客は集まるでしょうね。

――僕は神保町に来ると“交通会館”の脇を通ってアキバに行くのがルートだったんですけど、そういう人って、あまり多くないんですかね?

【傅】多くないですね。荷物を持って歩けないでしょ。本を買う人と、アキバに買い物に来る人の層は全然違う。着てるものも違う。その間にスポーツ街がありますけど、あそこも人種が違う。

――じゃ、千代田区が考えている計画の1つで、書店街、スポーツ街、電気街を回遊させようとしている案はダメですか?

【傅】“商”に“官”が口出しちゃだめなんですよ。やりたがるんですけど、必ず無駄遣いになる。第三セクターは作っちゃダメなんです。仕組みを作って何か建てちゃうんだけど、“商”は普通の民間が考えた方がいい。“官”は最低限の規制だけ作るくらいが丁度いい。
 これまでの秋葉原の発展は官は何も考えちゃいないでしょ?

――しかも、時間を掛けて少しずつ変わってきましたよね。秋葉原と神田の関係性はどうですか。

【傅】スポーツの街、電気街の街と、お客さんがまったく街の回遊に貢献していないんですね。観光にしても、秋葉原へは買い物のためと1つの目的のためにいらしているので、回遊性がないんです。
 秋葉原の再開発は、唐津一先生が言い出したことで新しいIT基地にしたいという意向があって作り始めましたけど。これにしても、街というのはいろんな多用性がないと育たない。学者というのは、ある1つのものだけでやってしまうけど、それじゃ絶対にいつかダメになるっていつも言っているんですけど(笑)。
 あそこにもっと住宅を中心に建てるべきですね。マンションを建てれば人が集まるから、とにかくグレードの高いマンションを建てるべきだって。

――秋葉原をIT基地にするという話は平成13年頃だそうですが、当時、世界中にIT基地を作るという話が流行っていたのですよね。米国のシリコンバレーや中国の中関村がありますが、フランスはコートダジュールとか、日本も沖縄はどうだなんていう人もいた。ただ、個人的な意見を言わせてもらうと、シリコンバレーや中関村の場合を見ると、そこがIT基地になった理由は、学生がたくさんいたからだと思うのです。
 欧米の主要なIT企業はとっくに中関村に進出している。日本の企業はまだ少ないですが、マイクロソフトなんかは、世界に3つか、4つしかない中央研究所の1つを中関村に置いている。その理由は、北京大学や精華大学など、何十万人の学生がいるからしか考えられない。シリコンバレーも、もともとスタンフォード大学があったのが、その発祥と言われていますよね。だから、アキバをIT基地にするというときに、大学や研究機関が入るというのは、非常に正しいお話だなと思ったのです。ただ、サテライトキャンパスや研究室という程度だと、もうひとつですよね。もっと、大々的でないとね。
 以前、NTTドコモの大星会長にお話をうかがったときにアキバにこそ学校を作るべきだとおっしゃっていました。やはり、学生がいないところにIT基地が成り立つかというお考えだったのではないかと。アキバは、交通の便がいいから集まって来るだろうということもありますが。

【傅】神田界隈の大学は、中央大学、専修大学、明治大学、日本大学。法政大学や電機大学もありますし。そういう意味で、たまたまかもしれませんが、そうなりつつあるのかもしれませんよ。
 IT基地の中身を聞いてみると、ベンチャーのために入居できるようなSOHO用のシステムもあるらしいですね。情報交換のためにいいんじゃないかな。それにしても、日立製作所が入ることはないでしょう(笑)。いいビルが近くにあるのに。



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