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日本TI、6色のカラーフィルターを使用する“BrilliantColor”技術とWXGA対応のDLPチップセットを発表

2005年07月26日 23時38分更新

文● 編集部 小林久

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日本テキサス・インスツルメンツ(株)は26日、色再現性を向上するための技術“BrilliantColor”と、同技術に対応したASIC『DDP3020』、WXGA(解像度1280×768ドット)表示に対応したDLP(Digital Light Processing)チップセットの新製品『DLP.65』を発表した。ともに2005年第4四半期の量産出荷を予定しており、同チップ搭載のプロジェクター製品も2006年初頭から順次市場に登場する見込み。価格は未定。

DLP.65
『DLP.65』。WXGA表示に対応した

DLPはプロジェクター用の光学エンジンで“DMD”(Digital Micro Mirror Divice)という極小のミラーを敷き詰めた半導体チップで光を反射させて、スクリーンに映像を投影する。

DLPの仕組みDLP製品のラインナップ

光源とDMDの間には“カラーホイール”というRGBなどに色分けされた円形のフィルターが置かれており、これが映像周波数と同期して高速に回転する。DMD上のそれぞれのミラーは、電気的に傾きを制御して、スクリーン側に光を反射するかどうか(オン/オフ)を決めることが可能。例えば、常にオンにしてRGB全色を反射させるようにすれば白、Rのフィルターを通ったときだけ反射するように制御すれば赤、RとGだけを反射すれば黄色、RとGを反射する時間を2:1で調節するとオレンジ……といった具合にさまざまな色を表現できる。

DLPは前方投影型のプロジェクターや背面投影型の“リアプロテレビ”などで多く用いられており、全世界の前方投影型プロジェクターでは47%、北米の40インチ以上のリアプロテレビで21%のシェアを占めているという。

BrilliantColorは、カラーホイールのセグメントを増やし色再現性を改善しているのが特徴

今回開発された“BrilliantColor”技術は、カラーホイールに通常のレッド、グリーン、ブルーの3色に加え、シアン、マゼンタ、イエローの3色を追加することで、色再現性を向上する技術。最大1400×1050ドット(SXGA+)の解像度に対応した新開発ASICの『DDP3020』と組み合わせて使用することで、特に中間調の表現能力を向上できるという。フィルターの透過率も改善し、従来より高い輝度での投影が可能になっているという。カラーホイール上のセグメント(色数)は最大6つまでだが、1~2色を減色して4セグメントまたは5セグメントの構成にすることも可能だという。

大原氏
日本テキサス・インスツルメンツ DLP事業部技術統括部長の大原一浩氏

発表会に出席した、DLP事業部技術統括部長の大原一浩(おおはら かずひろ)氏は、セグメント数の選択肢を用意したのは、コストが理由ではなく、メーカーのニーズに合わせられるためとした。同氏は「色再現範囲と明るさはトレードオフの関係になる」と述べ、「フィルターや各色の角度(割合)は自由に変えられるが、DDP3020はそれに合わせた信号処理が行なえる」と説明した。

なお、4~5色のカラーフィルターを採用した製品は昨年から販売されているが、従来の製品は黄色など弱い部分の表現力を高めるために使われており、内部の信号処理が省かれていたという。Brilliant Colorでは、ASICの中に色信号処理を加えることで、より高い画質が実現できる点が異なるという。

また、DLP方式の弱点として挙げられる“カラーブレイキングノイズ”に関しても改善できるという。カラーブレイキングノイズは色のバランスが崩れて輪郭に虹状のにじみが生じるもので、動きの速い場面や眼球を動かした際などに生じやすい。これを防ぐためには、これまでより回転の速いホイールを採用するといった対策がとられていたが、日本テキサス・インスツルメンツDLP事業部長のピーター・ヴァンケッセル(Peter VanKessel)氏の説明では、セグメント数が増えることで、各セグメントの長さが短くなるため、ホイールを高速に回転したのと同じ効果が得られるという。



プレゼン風景
プレゼンテーションはDLP.65を搭載したプロジェクターで行なわれた

DLPチップセットの新製品『DLP.65』は、すでに発表されている『DLP.55』のDMDサイズを0.55インチから0.65インチに大型化することで解像度をXGA(1024×768ドット)から、WXGA(1280×768ドット)に向上させたもので、DMDサイズは対角0.65インチ。約98万3000個のミラーが10.9μm間隔で並べられている。720p表示やコントラスト強調技術の“DarkChip 2”にも対応。光学系は既存の0.7インチオプティカルシャーシーと互換性があり、従来製品と光学系を共通化できるという。ASICはDDP3020のほか、現行のDDP1010も利用可能。



ヴァンケッセル氏
日本テキサス・インスツルメンツ DLP事業部長のピーター・ヴァンケッセル氏

今回の発表会がDLP事業部長就任のお披露目ともなったヴァンケッセル氏は「フロントプロジェクターにおけるDLPのシェアは、世界市場の47.3%に対して、国内では27.2%にとどまっている。これは悪くない数字だが、期待している数字からみるとかなり低い」と述べ、マーケティング活動の強化、コスト削減の努力(デバイスの小型化とASICの統合)、新技術の投入によるキーパフォーマンスの向上などを通じて、日本市場でのプレゼンス拡大のために力を入れていくとした。

また、今回投入したDLP.65は、720p表示に対応するが、フルHD対応したDLPチップセットの投入に関しては「技術的な制約はなく、あくまでもビジネス上の問題となる」と説明した。ヴァンケッセル氏は「1080p対応の製品に関して具体的な予定を設定しているわけではない」とした。同社は業務用DLPシネマDMDチップの“デジタルシネマ”『DC2K』をすでに製品化しているが、個人向けの製品で同規格に対応した製品が出てくるのは当分先になりそうだ。



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