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3Dアニメーション制作現場ではOpteronの導入が進んでいる!?──日本HPがデジタルコンテンツ事業に関して説明

2005年07月20日 20時49分更新

文● 編集部 小林久

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日本ヒューレット・パッカード(株)は20日、同社のデジタルコンテンツ(DCC:Digital Contents Creation)事業に関する説明会を開催した。同社が主催するセミナー“ドリームワークス メイキング「マダガスカル」セミナー”の開催に合わせて、同事業に関する取り組みをアピールしようというもの。

コノリー氏
米ヒューレット・パッカード ワークステーション・グローバル・ビジネス・ユニットDCCセグメントマーケティングマネージャのモリー・コノリー氏

説明会には、米ヒューレット・パッカード社からワークステーション・グローバル・ビジネス・ユニットDCCセグメントマーケティングマネージャのモリー・コノリー(Molly Connolly)氏、日本ヒューレット・パッカードからパーソナルシステム事業統括ワークステーション本部の大橋秀樹(おおはし ひでき)氏が出席した。

米ヒューレット・パッカード(以下HP)は、米DreamWorks(ドリームワークス)社のパートナーとして、DreamWorksが8月に公開する予定の3Dアニメーション映画『マダガスカル』のシステムを構築した。米DreamWorksは米シリコングラフィックス(Silicon Graphics)社のIRIXをベースにしたシステムを利用していたが、4年前にオープンソースへの移行を決断。2002年2月にはHPをDreamWorksに対する唯一のテクノロジー・プロバイダーとする契約を結んだという。HPは3Dアニメーション/エフェクトソフト『Maya』をLinuxに移植したほか、3Dグラフィックスドライバーの開発/最適化などを行なった。HPはDreamWorksのIT部門に常駐する形で、システム構築を担当している。

マダガスカルの制作に際して米DreamWorksは、レンダリングファームとして1UのデュアルOpteronサーバー250ノード(500CPU)を増設。既存のXeonベースのサーバ750ノード(1500CPU)と合わせて、1000ノード(2000CPU)のシステムを構築した。ワークステーションに関しては、Xeonをデュアルで搭載した『HP ワークステーション xw8000』と『同xw8200』を540台導入済み。



大橋氏
日本ヒューレット・パッカード パーソナルシステム事業統括ワークステーション本部の大橋秀樹氏

日本HPの大橋氏は「サーバー環境(レンダリングファーム)ではすでにOpteronをメインにする方向で進んでいる」「ワークステーションに関してもOpteronをデュアル搭載した『xw9300』を評価中」「マダガスカルの次期作品からはOpteronを主軸になっていく」「Xeonと比較して30%程度の性能向上が見込める」などと説明した。

制作にあたって難しかった点に関して、コノリー氏は、リアルなジャングルの制作、大勢の動物たちを動かすこと、のびたり曲がったり、つぶれたりと柔軟性の高い動きをする動物たちをどう表現するか、毛皮や髪の毛、砂/風/波といった天候エフェクトの実現などがあったとした。例えば、マダガスカルでは、木々1本1本をオブジェクトとして配置し、それぞれを動かしてジャングルを表現したり、天候エフェクト用のシミュレーション環境を作るといった取り組みが行なわれている。



right
DreamWorksのサーバールーム、HPのシステムを導入する前とあとでこれだけ設置面積を小さくできたという

また、離れた場所で作業を行なうスタッフがコミュニケーションをとるために、ビデオ会議システムを構築したほか、全レンダリング時間の10%(150万時間)を、DreamWorksのデータセンターではなく、米国サンフランシスコ州パロアルトにあるHPの研究所にあるレンダリングファームを使って処理したという。“HP Utility Rendering Service”(URS)と呼ばれるこのシステムは、1005ノードのOpteronサーバーとDreamWorksのデータセンターを高速なネットワーク回線で結んだものだという。

なお、国内におけるHPシステムの導入事例としては、東映アニメーション(株)の『デビルマン』、(株)プロダクション・アイジーの『イノセンス』、映像制作ユニットモーターライズの『ローレライ』といった作品などが挙げられる。このほかにも専門学校などの教育機関、大手アニメプロダクションや放送局、ゲーム会社などでも導入されつつあるという。



市場シェア
ワールドワイドの市場シェアでHPは、毎年2割のペースで成長を遂げており、現在約35%のシェアを取っているという

大橋氏は国内と米国の違いに関して、米国ではフル3Dデジタルが主流で大規模なシステム導入が多いが、国内ではフルデジタルが主流になっているもののセルアニメーションの雰囲気を残すことが重視されている点を指摘。そのためには情報量の多い背景のレイヤーを複数重ねるといった手法が取られることが多く、大量のメモリーが必要となるため、64bit化が切望されている現状があるという。また、制作環境としては3Dグラフィックスソフトとアドビ システムズ(株)の『Photoshop』『Illustrator』といった2Dグラフィックスソフトが混在したものになっていると説明した。

ハードウェア環境に関しては、SGIのシステムからオープンソースに移行し始めた時期にイニシャルコストを抑えるために自作マシンが多く用いられたが、現在ではサポート体制を含めたトータルコストを重視する雰囲気があり、メーカー製品が見直されつつあるという。なお、クライアントに関しては、Windowsワークステーションのほか、Macintoshも根強く使われているという。大橋氏は、納期が迫ってくると、マシンが足りない状況が生じがちだが、そんな場合には日本HPから無償でマシンを貸し出すこともあると説明した。



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