三菱電機(株)は20日、東京・丸の内の同社オフィス内会議室にプレス関係者を集め、2004年度より同社が実施している地球温暖化対策の実績と今後の計画、ならびにEU(欧州連合)加盟国で2006年7月に発効する家電製品での有害物質使用禁止に関する規制“RoHS(ロス)指令(※1)”への対応に向けた取り組みについての現在までの活動内容が報告された。
※1 RoHS指令 鉛、水銀、六価クロム、カドミウム、PBB(ポリ臭化ビフェニール)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、という6種類の環境に有害な物質を含有する製品の出荷を禁止する指令![]() |
---|
会見で発言した出席者。中央が執行役 生産システム本部長の東 健一氏、左が環境対策本部 主席技術長の太田完治氏、右が環境対策本部 推進グループマネージャーの塩田 久氏 |
会場には執行役 生産システム本部長の東 健一(あずまけんいち)氏、環境対策本部 主席技術長の太田完治氏、環境対策本部 推進グループマネージャーの塩田 久氏らが出席し、CO2削減に向けた2004年度の削減実績と2005年度の具体施策、RoHSの規制対象となる6物質の含有調査や代替品の評価などの進捗状況を説明した。
![]() |
---|
参加した全社員がつけている“チーム・マイナス6%”のバッジ |
最初に挨拶に立った東氏は、(列席した社員全員が胸に着けているバッジを差して)全社員に環境対策の意識を啓蒙するべく、“チーム・マイナス6%”のバッジを配布して、「会社だけでなく家庭でも省エネを徹底している」ことを示した。また、同社の環境への取り組みについて、「得られた省エネのノウハウを新たな製品やサービスに反映していきたい」と語り、環境問題への取り組みを一過性の“ブーム”で終わらせることなく、継続的に取り組む姿勢を見せた。
電力料金の低下でコジェネ導入が進まず
高効率機器の導入で補完を目指す
![]() |
---|
三菱電機単独でのCO2排出の推移。1990年に比べると確実に低減しているが、2002年以降では売上高原単位が80%以上(目標は75%)を続けている |
続いて太田氏がグラフや表を使って、地球温暖化対策についての2004年度の実績と2005年度方針を示した。同社では2010年の売上高を2002年度と同規模と仮定した場合に“売上高原単位(排出する二酸化炭素量を売上高で割ったもの、単位はトン(CO2)/億円)”で75、CO2排出の削減量(2002年度比)は4万6000トンと定め、それに向けて
- 高効率機器導入
- CO2の排出を抑えた変圧器/モーター/空調機/電源などへの刷新や遮熱塗装/窓遮熱フィルムの塗布、パソコン用ディスプレーの液晶ディスプレーへの置き換えなど
- EM(Effective Microorganisms、有用微生物群)活動
- 有用微生物群によるゴミ排出の削減
- コジェネ(コジェネレーションシステム)導入
- 従来の電力会社からの供給に変えて、燃料電池システムの設置・導入により熱エネルギーと電気エネルギーの双方をまかない効率化を図る
- 燃料転換
- 工場/製作所で利用する燃料をCO2排出量の少ないものに転換
という4つのアクションプランを立てて、2004年度から実施している。これに向けた設備投資額は15億3200万円で、効果は2004年度実績でCO2排出量6184トン(目標は6570トン)、2003年度比で3.4%増となる。この苦戦した原因について、高効率機器の導入と燃料転換は順調に進み、個別の年間削減目標量(3570トン)を達成。EM活動は期中の開始になったため予算が計画通り進まず、目標量(1140トン)に未達。コジェネ導入についても、電力単価の値下げによってコジェネ導入の効果が薄くなった関係から、(初期投資がかさむなどの理由もあって)導入自体を期待できず、当面は高効率機器導入による効果で補完することになるという。そのほか、2004年度は猛暑による空調エネルギーの増加、景気回復基調による生産量の増加などで消費エネルギーが増大し、半面売上高は横ばいだったこと、などを挙げた。
![]() |
![]() | |
---|---|---|
CO2排出の状況(詳細) | 同社が行なっている4つのアクションプランと、その実績 |
これを受けて、2005年度は
- 効果の大きい空調機器の設備刷新を推進
- 高効率機器導入の100%実施(これらの予算として生産高の0.1%をめどに“省エネ投資”を予算に盛り込む)
- EM活動の徹底と社内啓発活動の実施、対策フォローアップの体制作り
などを行なうとしている。
<G>と<R>のマーク分けで混入リスクを防ぐ
RoHS指令への対策については、塩田氏が「2005年12月までに有害6物質を使用廃止する。ただし、充電機器のように代替品では安全性が保てないものは例外を認める」と述べ、家電製品についてはRoHS指令を遵守するべく徹底し、機器の回収や追跡が可能(無拡散)な業務用製品については現状品と代替品の効率性や安全基準、動作保証(確認)などを踏まえて、顧客の求めるものを提供していく柔軟性のある対応を行なうことを示した。代替が難しい製品としては、具体的に鉛蓄電池、人工衛星向け機器、航空管制向けの通信機器などが挙げられた。
![]() |
![]() | |
---|---|---|
規制6物質の廃止目標と例外項目 | 同社が立てて実施している廃止までの4ステップ |
そのための施策として、
- 対象/例外製品の選択(2004年度後半までに実施済み)
- 含有/代替情報調査(現在完了しつつある状況)
- 代替部品/材料評価、製造プロセスの確率/品質確保(2005年後半までに完了予定)
- 棚残・在庫処理(2005年12月までに完了予定)
という4ステップを実施していることを示した。特に現在は、RoHS指令で使用禁止になる有害6物質が含まれる部品/製品と、それらを排除した代替品が混在する“切り替え”時期になるため、部品などがまぎれないように<R>(RoHS規制対象品)と<G>(Green、RoHS指令対応済み)のマークで分類しているという(マークのないものは<R>とみなす)。
![]() |
![]() | |
---|---|---|
RoHS対象物質の切り替え手順を示すワークフロー | RoHS対応の識別マークのサンプル。右肩に目立つように<G><R>のマークが付けられる |
また、部品を提供する協力会社(サプライヤー)に対しても、自社開発した高速に指定6物質を検出できる機器“蛍光X線等分析機器”を使うなどして調査を徹底し、対策が済んだところから“不使用証明書”の発行を進めている。この調査完了率は現在約94.6%まで達成。未調査の8000種については、型番が古く機種の含有情報が残っていないなどの理由から時間がかかっているもので、家電製品ではこれらを使わない、などの手段を講じるとしている。
![]() |
---|
混入リスクに対する監視体制の詳細。3つの調査・点検を重ねて、出荷に至るという |
今後は、環境リスク6物質の廃止期限(2005年12月)を厳守するとともに、その後の混入リスクを回避する体制の整備を徹底する、と重点課題を示した。
