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【INTERVIEW】レノボ・ジャパン初のThinkPadそれは“タブレット”だった!──開発者に聞くThinkPad X41 Tabletの秘密

2005年07月19日 18時36分更新

文● インタビュー:編集部 佐久間康仁/小林久、月刊アスキー編集部 吉川大郎

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土橋氏
レノボ・ジャパン製品開発研究所 先進技術開発 表示技術 担当の土橋守幸氏

ThinkPad X41 Tabletの技術的な取り組みとして、レノボが強調するもののひとつに液晶パネルがある。屋外での使用頻度が高く、また机の中央において複数人でディスプレーを囲むように見るといった使い方も想定できるタブレットPCでは、反射の少なさや視野角の広さが重要だ。ThinkPad X41 Tabletでは“Super Wide Viewing Angle FFS”という広視野角のパネルを使用し、これまでなかった上下左右170度と広い視野角を実現した(他社製品では115~135度程度が通常)。同時に表面加工にも気を配り、反射も抑えた。

[土橋] 広い視野角は対面でお客さんと仕事する際に必須になるでしょうね。囲んでタブレットを中央に置く場合、これまでの製品では表示内容の確認が非常に困難でした。Super Wide Viewing Angle FFS液晶を採用した理由のひとつがこれです。

確かに営業マンが顧客に対してプレゼンを行なう際などには相手にマシンの画面を向け、横からのぞき込むように使うケースが多いし、ミーティングなどでは参加者の中央にマシンを置き、数人で覗き込むように画面を見るといった使い方もする。さらに土橋氏は「広視野角を実現したことにより、“ポートレート”モード(タブレットモードで、液晶パネルを縦向きにした状態)で、左右からの見え方が異なることによる違和感も減らせた」という。



視野角の比較
ThinkPad X41 Tablet(上)と一般的なタブレットPC(下)との液晶パネルに同じ画面を映し、ほぼ同じ角度から撮影してみた。斜めから見ても、ThinkPad X41 Tabletでは、ハッキリと内容を確認することができる。

野外での使用を想定して、パネル表面の処理にも気を配った。この点は他社が気付いていないThinkPadならではのノウハウが詰め込まれているという。

[土橋] 野外やオフィスで使用する際のコントラストの低下がこれまでのタブレットの課題のひとつでした。タブレットでは液晶の手前に透明な板(プロテクションプレート)を貼りますが、反射はこの透明板の表、裏、そして液晶表面のそれぞれで生じます。他社従来製品では表面を粗くすりガラスのように加工することで反射を抑えているようですが、デメリットが2つあります。ひとつは画面がぼやけてしまうこと。もうひとつ野外では白びかりして見えにくくなる点です。

これらの問題点を解消するため、ThinkPad X41 Tabletでは、透明板の表面処理を薄いアンチグレア(AG)処理とした。一方、透明板の裏側にはアンチリフレクション(AR)コートを施したという。

[土橋] 表面に強いAG処理を施すと白い部分ではギラツキが目立ち、黒が締まらずコントラストを下げる理由となります。そこで、AG処理を弱くしてその代わりに裏面の反射も抑えることにしました。光の反射はガラス表面だけで起こると思われがちですが、実際は表面だけでなく裏面でも反射するんです。裏面にはARコートを付けました。ARコートはカメラのレンズなどにも使われているデリケートなコーティングですが、手アカなどがつくと非常にぎらぎらしてしまいます。傷が付いてもダメです。つまり手の触れる表面には使えない。ここが他社製品との大きな違いだと思います。


プロテクションプレート
ThinkPad X41 Tabletのプロテクションプレートの断面図。表面だけでなく裏側にも反射を抑えるコーティングを施すことで、白うきと反射の低減という2つの問題をクリアーしている
[編集部] Super Wide Viewing Angle FFSのパネルは他社も採用してくる可能性はありますか?
[土橋] パネル自体は、他社のノートパソコンでも使われ始めていますが、私たちはプロテクションプレートとの組み合わせにアドバンテージを持っていると思います。
[編集部] 液晶は透過型ですが、別の方式を利用する選択肢はなかったのでしょうか?
[土橋] 屋外での使用を考えると反射型という選択肢もありますが、完全な外でないと有利ではないし、色再現性も低くなります。室内の環境光は、明るいところで500ルクス程度ですが、500ルクス以下で比べたら、バッテリーライフや画質など、どれをとっても透過型が有利です。
[編集部] 色の再現性や好ましい色というのは地域によって違いが出てくると思うのですが、そのあたりはどのように考えて設計されていますか?
[前沢] 基本的に全部を満たそうという形で取り組んでいます。そういう意味では色の表現は最も厳しい要求ですね。今回もわれわれの環境ではARが必要ないのではないか、という意見もありました。しかし全世界の市場を見ると、日本人の目とアメリカ人の目は違うんですね。
[土橋] 補足すると、日本人とアメリカ人の目では白に対する認識が違います。白やRGB各色の基準に関してはワールドワイドで統一したスペックを作っています。日本のクレーム、USのクレームを包含して、すべてを満足できる値を選んでいます。色再現性は他社に比べて少し広く、ここも差別化のポイントになると思います。日本人は蛍光灯文化だから、青に対して慣れている。一方欧米は間接照明が多く、クリーム色に近い白を好む傾向がある。その一方で反射には厳しい。
[編集部] 次のThinkPadではタブレットPC以外の製品でもこのパネルが載ってくると考えていいのでしょうか?
[土橋] デジタイザー部分を取り除いても、価格的にちょっと高いので、コスト次第でしょうね。


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