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マイクロソフト、“プラットフォームバリュー”の理解促進に向けた活動に関する説明会を開催

2005年06月08日 23時12分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は8日、“プラットフォームバリュー”(プラットフォームの価値)に対する理解促進を図る活動に関する記者向けの説明会を、都内オフィスにおいて開催した。主なテーマとしては、WindowsプラットフォームとLinuxなどオープンソース系プラットフォームとの“価値”の違いや市場のニーズ、動向などを明確化する同社の活動やキャンペーンのまとめや、実際に営業の現場に出ている担当者による“競合商談”のレポートが取り上げられた。

マイクロソフトでは、全世界的なキャンペーンとして、2004年から“Get The Fact”と銘打ったキャンペーンを行なっている。これは、WindowsプラットフォームとLinuxプラットフォームの“バリュー”をさまざまな切り口で数値化し、Windowsプラットフォームの高い“バリュー”を訴えるというもの。キャンペーンは現在も継続して展開されており、同社では、Linuxと競合する分野でのWindowsの優位性のアピールを続けるとともに、営業面でも“顔の見えないマイクロソフト”のイメージを払拭すべく、積極的な展開を行なっているという。

ビジネスマーケティング戦略本部 市場戦略グループ シニアプロダクトマネージャの梅田成二氏。“LinuxWorld Expo”での基調講演実施に際して米本社から「防弾チョッキは着て行ったほうがいいかもしれない」と冗談を言われたというエピソードも紹介し、会場を沸かせた

この日の説明会で登壇した同社ビジネスマーケティング戦略本部 市場戦略グループ シニアプロダクトマネージャの梅田成二(うめだ せいじ)氏ははじめに、同社の“プラットフォームバリュー”の理解促進に向けた新しい取り組みの一環として、今月1日~3日に開催された“LinuxWorld Expo/Tokyo 2005”において、同社が基調講演を行なったことを報告。この基調講演の実施については、米本社でも“行なうべきかどうか”の議論もあったというが、最終的には講演を行なうことに決定したという経緯があるという。

また、主催者や参加者から、“マイクロソフトが競合するプラットフォームであるLinuxのイベントに参加する”ということの意義についての質問を多数受けたといい、これを受けて、改めて、“Get The Fact”キャンペーンなどで行なっている“バリューの理解促進”に対する活動についてのさらなる周知の必要があると認識したとしている。

プラットフォームバリューの理解促進に向けた基本的な展開方針“Get The Fact”キャンペーンで行なってきたリサーチ/レポート

同社では、プラットフォームバリューの理解促進の取り組みにあたっては、“理解促進と顧客の声の収集”“市場の理解”“客観的データの提示”“キャンペーンの展開”の4ポイントからなる“サイクル”をベースの考え方としているといい、特に“客観的データの提示”については、“Get The Fact”キャンペーンのウェブサイトなどで、リサーチ結果や導入事例の公開を積極的に展開している。しかし、当初は米国発のデータが多かったこともあり、日本市場の現状に即したデータを求める声が強かったことから、日本で独自に、外部の調査会社の協力のもとリサーチを行なったという。この日の説明会では、(株)三菱総合研究所が行なった“業務システムにおけるプラットフォーム移行の現状調査”と、アイ・ティ・アール(株)が行なった“アプリケーション・プラットフォームに対するユーザー評価”の概要が紹介されている。

レガシーシステムおよび商用UNIXからの移行状況プラットフォーム別の運用費比較

“業務システムにおけるプラットフォーム移行の現状調査”では、レガシーシステム(メインフレームやオフコン)から、Windows/Linux/商用UNIXへの移行や、移行時の費用(初期費用と運用費用など)についてを調査している。この調査によると、中小規模のシステムにおいては、Windowsプラットフォームへの移行が多く、全プラットフォームでの移行費用の平均値は47万7700円。運用費用の内訳を分析すると、Windowsプラットフォームへの移行では、レガシーシステムからの移行において特にコスト削減率が大きく、中でもシステム運用の外部委託費の削減率が大きいという。一方、Linuxプラットフォームへの移行では、商用UNIXシステムからの移行において得に削減率が高く、ハードウェア保守運用費の削減率が大きいという結果になったという。

アプリケーション・プラットフォームとして使用している製品各プラットフォームの総合評価得点と満足感の比較

“アプリケーション・プラットフォームに対するユーザー評価”では、“Windowsおよび.NET Framework”“商用Java/J2EE(Java 2 Platform,Enterprise Edition)”“オープンソース系プラットフォーム”の3系統について、製品導入時の期待感や評価/利用後の満足度を調査。これによると、各プラットフォームの採用状況については、“Windowsおよび.NET Framework”が65.1%、“商用Java/J2EE”が44.1%、“オープンソース系プラットフォーム”が25.7%となったという。また、各プラットフォームの総合的な評価得点(ライセンス費用、保守/運用コスト、システム開発期間、開発ツール、など。52点満点)では、“Windowsおよび.NET Framework”が44ポイント、“商用Java/J2EE”が34ポイント、“オープンソース系プラットフォーム”が25ポイントとなった。満足度については、“Windowsおよび.NET Framework”では、ベンダーの信頼性や開発ツール類の充実度、技術者の確保の容易さなどの面でオープンソース系よりも高い評価を得ているのに対し、ライセンス費用の面ではオープンソース系のほうがWindowsプラットフォームよりも高い満足度を得られるという結果となったとしている。

同社ではこのほか、顧客の声の製品への反映を強化する活動として、同社製品や技術に関連する一般コミュニティーにおいて顕著な活躍をしているリーダーを“MVP(Most Valuable Professional)”として年間表彰し、活動を応援する取り組みを行なっている。MVPからの意見を活用して製品化した例としては、管理ツールを携帯電話から閲覧/操作する『Microsoft Operations Manager 2005 Mobile Phone Console』や、電子名刺ソフト『Microsoft Office InterConnect 2004』、Windowsのアップデートサービス“Windows Update Services”などがあるという。また同社では今後も、コミュニティーとの交流機会の拡大と理解促進を継続して行なっていくという。

IT総合研究室マネージャーの春原久徳氏競合商談での反応の概要

梅田氏の説明に続いては、同社IT総合研究室マネージャーの春原久徳(すのはら ひさのり)氏が、マーケティングやセールス活動を通じて得た“競合商談”(競合するプラットフォームや製品の採用を検討している企業への営業活動)の実情についてレポートした。この取り組みの対象となった企業は、パソコン保有台数25台以上1000台以下の中小/中堅企業で、実際に訪問した件数はこれまでに43件になるという。商談で取り扱った分野としては、ファイル/プリントサーバー、電子メールシステム、クライアント端末、ディレクトリーサービス、ウェブサーバーなどで、訪問の目的は、競合状況に関しての理解の深化と、同社の考え方のアピールが中心だという。訪問先は、一旦は競合製品/プラットフォームを採用する方針の企業だったのだが、これまでに7件の受注と、11件の“好意的な感触”を得ているという。

同氏は、これまでの競合商談の中で、顧客のLinuxに対する理解が非常に高まっていることを実感しているといい、「以前のような、ある種の“宗教論争”的な判断ではなく、LinuxやWindowsの“いい点・悪い点”を理解して選択するようになってきている」と述べている。また、理解が高まってきたことから、営業にあたっては、IT投資の方向性や必要性自体への意識喚起が重要であり、「どちらがいい悪いではなく、“課題に対応できるのはこれ”と提案できる営業」という“経営課題にフォーカスした商談”が必要だとしている。

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