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ハンディカム DCR-PC1000

ハンディカム DCR-PC1000

2005年06月10日 00時40分更新

文● 伊藤 裕也

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ハンディカム DCR-PC1000

ソニーマーケティング

13万4800円(ソニースタイル価格)

江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅、江ノ島駅周辺でロケを行なった
江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅、江ノ島駅周辺でロケを行なった
アスキーとソニースタイルのコラボレーションサイト“SONY Flash on ASCII”
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 ソニーが今春市場に投入したカムコーダー(ビデオカメラ)の新モデルには、DVDメディアに映像を記録できる「DCR-DVD403」、持ち運ぶことを重視したコンパクトサイズのDVカムコーダー「DCR-PC55」など、実にさまざまなタイプのものがある。その中から今回は、高い映像品質をうたう3CMOSモデル「DCR-PC1000」を紹介しよう。

 DCR-PC1000は、miniDVカセットにDVフォーマットで映像を記録するカムコーダー。実売で13万円程度と手に届きやすい価格ながら、3CMOSをはじめとする工夫により、高精細かつ良好な発色の実現を図ったモデルだ。市場での位置づけは“パーソナルユーザー向けの映像品質重視モデル”となっている。それでは早速、詳細をみていこう。



ワイド撮影をサポートする16:9の液晶ディスプレーを搭載

 まずはDCR-PC1000の基本スペックを眺めてみよう。カメラは光学10倍ズームのレンズと総画素79万画素の1/6インチCMOSセンサー×3からなる組み合わせで、映像撮影時の有効画素は67万画素。映像撮影時に使用できるプログラムAEのモードは、人物の撮影に向く“ソフトポートレート”、雪山や砂浜などの撮影に最適な“ビーチ&スキー”などで、オートを含めると6種類だ。手持ちでの撮影に欠かせない手ぶれ補正は、電子式である。音声は内蔵のステレオマイクにより標準の状態ではステレオ2chでの記録に、また、オプションのサラウンド対応マイクを使用すれば最大4chでの記録に対応する。映像の確認についてはワイド映像の撮影を強く意識し、ワイド対応ビューファインダーに2.7インチのワイド液晶を備える。

 実は、今春発売のハンディカムシリーズの大きな特徴が、このワイド撮影対応だ(DCR-PC55を除く)。従来のモデルでもワイド撮影は可能だったが、液晶ディスプレーのサイズが4:3であるなど、ワイド撮影の際の利便性は決して高いものではなかった。だが、今期のモデルは16:9のワイド撮影を前提とし、ワイド対応の液晶ディスプレーを搭載するなど積極的にサポートしている。これは映像を再生する機器――つまり家庭のTVが4:3からワイドタイプに変化している現状を反映したものだ。ワイドTVやハイビジョンTVが販売店のスペースの大半を占めていることを考えればその流れは極めて自然だと思うのだが、カムコーダーにおいてはなぜか軽視されてきた。それだけに、今期のワイド対応は非常に大きな意味がある。

縦型のスタイルながら、やや厚みを感じるデザイン。レンズカバーは電源のオンオフに連動して自動開閉する。なお、レンズのすぐ上に静止画撮影用のフラッシュがある 電源と撮影モードの切り替えを兼ねるボタンや録画ボタンなどはケースの背面に集中的にレイアウトされている。録画ボタンは親指の位置にピタリと合うようになっており、操作はしやすい
縦型のスタイルながら、やや厚みを感じるデザイン。レンズカバーは電源のオンオフに連動して自動開閉する。なお、レンズのすぐ上にあるものは静止画撮影用のフラッシュだ電源と撮影モードの切り替えを兼ねるスライドボタンや録画ボタンなどはケースの背面に集中的にレイアウトされている。録画ボタンは親指の位置にピタリと合うようになっており、操作はしやすい

今まで難しかったシーンの撮影も3CMOSの新撮影素子で期待大

 DCR-PC1000のポイントはなんといっても、イメージセンサーに3つのCMOSセンサーを採用したことに尽きる。イメージセンサーは人体でいえば“網膜”に相当するところ。光を電子に変換するフォトダイオードと、その電子を読み取り信号として扱えるようにする回路からなり、レンズを通して入ってきた光の変換処理を行う。レンズと同様に、映像品質を大きく左右する部分だ。

作例 作例
この記事での作例は、プログラムAEやフォーカスといった設定をすべてオートに設定して作成した。細かい部分がきちんと描写されており発色も良好。DCR-PC1000の3CMOSは、パーソナルユーザー向けとしては十分な画質を有しているといっていい。なお、DVフォーマットでワイド映像を記録する際のフレームサイズは720×480ドットで、再生時に16:9のサイズ――つまり852×480ドットに引き伸ばして表示している。そのため、素直にキャプチャしただけのデータをパソコンで表示するとフレームの縦横比が正しくない状態になる。そこでこの記事では以降、断りのない限り映像のスクリーンショットに関してはキャプチャーした映像をPhotoshopにより縦横比を16:9に加工し、インターレースの解除を行なったものを掲載する。ちなみに、右は加工前のデータなので見比べてほしい(加工前/後ともPhotoshopでJEPG/高画質に変換)
作例
江ノ電のある風景。さまざまな方向に伸びている電線や右側にある金網など細かな部分もしっかりと表現されている。

 カムコーダーやデジタルカメラの多くでは、このイメージセンサーにCCDセンサーが用いられてきた。反応が高速でS/N比が良いなどの特徴から、映像の入力に適しているからである。だが、CCDセンサーは構造上強い光(高光量)に弱いなどの欠点がある。例えば、CCDでは強い光を入力すると縦方向に白い筋が入る現象“スミア”が発生してしまう。CCDでは光から変換した電子をリレーしていくことにより信号を得るのだが、強い光を受けた場合にはその電荷が溢れてしまうためだ。

 その点CMOSセンサーはそれぞれの画素ごとにトランジスタがあり直接信号を得る構造で、また、電荷が光の影響を受けないことから、スミアの発生はない。逆光の射し込む場所などCCDセンサーを採用したカムコーダーでは厳しいシチュエーションであっても、CMOSセンサーを搭載するカムコーダーなら撮影できる可能性があるのだ。CMOSセンサーは、CCDセンサーと比較してS/N比が悪く、暗い部分の表現が難しいなどの課題が従来より指摘されているが、近年ではCMOSセンサーやノイズリダクション回路の性能向上により状況は改善されつつある。DCR-PC1000ではCMOSセンサーにより取得した映像の補整処理は“エンハンスドイメージングプロセッサ”と呼ばれる回路により行なう。エンハンスドイメージングプロセッサは、映像を輝度と絵柄の情報にわけた上で暗い部分の輝度を明るく補整する。要するに暗く潰れがちな部分の表現力向上が図られているわけだ。

作例
車両のガラスとボディが太陽の光を反射しレンズに飛び込んでいるが、このような状態でもスミアが発生しない

 また、DCR-PC1000は搭載するイメージセンサーがひとつだけのいわゆる“単板式”ではなく、3つのイメージセンサーを組み合わせた3CMOS、つまり“3板式”であるところも大きなポイントだ。

 イメージセンサーとして用いられるCCDセンサーやCMOSセンサーは光の強弱を変換するもので、センサーそのものが色情報まで取得するわけではない。そこでデジタルカメラや単板式のカムコーダーに搭載されるセンサーでは、光を受ける部分にカラーフィルターを組み込むことで色の情報を取得している。これは一般的に用いられている方法ではあるが、カラーのフィルターがモザイク状に構成されていることから被写体の輪郭などコントラストの強い部分などに本来ないはずの色が表れるなどの色成分の干渉が発生するなどの問題がある。

 これに対して3板式ではレンズからの光をプリズムにより赤・緑・青の3色に分解、分解した光に対してそれぞれひとつのイメージセンサーで処理を行う。構造上レンズの後ろにある程度の空間を必要とするが、単板式のところで挙げた問題を解消でき、また、ひとつのセンサーでひとつの色を扱えることから画素あたりの光を受ける面積が増加するために色再現性の向上が期待できるなど、映像品質面では大変有利な方式だ。

 CMOSセンサーは、Webカメラや携帯電話のローエンドの機種で多く用いられていることからなんとなく映像品質に不安を感じる方もいるかとは思うが、それは杞憂だ。最低被写体照度が15ルクス(寝室に適する照度に相当)と暗い場所での撮影はたしかに得意ではないものの、一般的なシチュエーションでの撮影についていえば気になるほどではないだろう。どうしても不安だというなら、照明を使えばいい(そもそもビデオ撮影にライトは欠かせないアイテムのひとつである)。また、スミアの発生がないメリットなども考えれば、CMOSセンサーの搭載は実に魅力的だ。映像品質の詳細については、実際に撮影サンプルとキャプションをご覧いただくのが早いだろう。

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