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メタリンク、2組のトランスミッターとレシーバーを1チップに搭載した“MIMO”対応のRFチップ『Wt8150』のサンプル出荷を開始

2005年05月31日 16時43分更新

文● 編集部 小林久

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イスラエルのメタリンク(Metalink)社は31日、“MIMO”(Multiple Input Multiple Output)に対応した無線LAN用のRFチップ『WLANPlus MtW8150』を第3四半期に量産出荷すると発表した。すでにパートナー企業向けにサンプル出荷を開始している。価格は未公開。

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ベースバンドチップの『Wt8170』(左)とRFチップの『Wt8150』

MIMOは、送受信にそれぞれ2本以上のアンテナを用いて無線LANを高速化する技術で、アンテナの数に比例した通信速度の向上が行なえる。最大100Mbpsの転送速度を目指す、次世代の無線LAN規格IEEE 802.11nへの採用も予定されている。

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メタリンク社の家庭用ブロードバンド製品担当アソシエイト副社長バリー・ボリンスキー氏

今回発表となったWtW8150はトランスミッターとレシーバーをそれぞれ2つずつ搭載し、1つのチップで2つの独立したデータストリームを送受信することが可能。あるひとつのボード上にシングルチャンネルのICを複数パッケージ化して並べる従来の方法に比べて、低コストで効率のよい通信を行なえる点が特徴だ。通信に使用する周波数帯は5GHz帯で、通信速度は2×2の通信場合最大200Mbps。WtW8150を2つずつ接続することによって(チャンネル結合)、4つのデータストリームを送受信し、最大400Mbpsの通信を行なうこともできる(4×4:フォーバイフォー)。

無線LANの機能を実現するためにはRFチップのほかに、ベースバンドチップが必要になるが、同社のMIMO対応ベースバンドチップ『WLANPlus MtW8170』の投入予定はまだ先になるため、当面はパートナー企業が個別に用意したチップを利用する必要があるという。また、Wt8170は4×4の接続には対応しない。MtW8170のサンプル出荷は2005年第3四半期に開始。来年1月に米国で開催される“CES”(Consumer Electronics Show)でビデオデリバリーシステムをデモしたのち、2006年第1四半期に量産出荷するという。価格は未公開。

本日都内で行なわれた発表会には、メタリンクの家庭用ブロードバンド製品担当アソシエイト副社長バリー・ボリンスキー(Barry Volinsky)氏が出席。WLANPlusがターゲットとする家電市場について説明した。

メタリンクは、今回の『WLANPlus』を主に家電市場向けに投入していく予定。VDSL用チップの開発で定評のある同社だが、WLANPlusの投入によって「無線LAN市場に対して本格的に取り組んでいく姿勢と、他社に先行してMIMOの仕様を満たしたチップの投入が行なえる技術力をアピールしたい」とした。同氏によると、単に“ビームフォーミング”(BF)や“合成ダイバーシティー”(MRC)に対応するだけでなく、同じ周波数で同じ時間に2倍のデータを送受信できる(同社の言葉では、リアルMIMOに対応の)製品は、いまのところメタリンクと米エアゴー・ネットワークス社しか投入していないという。

ボリンスキー氏は、英ABIリサーチ社のレポートを引用しながら「家電機器向けの無線LANチップは2007年までに1億7860万個の出荷が行なわれ、これはパソコン向けの無線LANチップ(1億1740万個)を上回る数字になる」と述べた。合わせて同氏は、家庭内でHDなどのリッチなコンテンツを楽しんだり、ネットワークストレージなどを快適に使用するためには、最低でも40Mbps、できれば60Mbpsのスループットと20m以上の到達距離が必要であると指摘。既存のIEEE 802.11aや11gでは実行速度が20Mbpsにも満たないため、十分ではないと述べた。また、ハイビジョン画質の放送をコマ落ちなく視聴するためには、QoS(帯域保証)が必要で、IEEE 802.11nや11eといった規格に対応した無線LANネットワークが必要であるとした。



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