東京大学、WIDEプロジェクト、(株)富士通コンピュータテクノロジーズ、米チェルシオ・コミュニケーションズ(Chelsio Communications)社、JGN2(※1)、APAN(Asia-Pacific Advanced Network)、カナダCANARIE(Canadian Advanced Network for Research, Industry, and Education)、オランダSURFnet、アムステルダム大学、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)(NTTコミュニケーションズ)で構成される研究チームは6日、昨年12月末に共同で実施したインターネットの伝送速度実験の結果が、米国の次世代高速ネットワークプロジェクト“Internet2”の“Internet2 Land Speed Record(インターネット速度記録)”における2種目で認定されたと発表した。データ伝送速度は毎秒7.21Gbitで、「CD-ROM1枚を0.7秒、DVD1枚を5秒、100GBのデータを約110秒で地球の反対側(3万km先)に伝送できる速度」だという。
※1 JGN2 JGNはJapan Gigabit Networkの略。1999年4月から2004年3月まで運用された高速・高機能ネットワーク環境“JGN”を発展させ、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が2004年4月から運用開始した基礎研究・基盤研究向けの高速ネットワーク環境。詳細は公式ウェブサイトを参照いただきたい。今回行なわれた実験の内容は、東京とオランダ・アムステルダム間を異なるルートで接続し、東京(東京大学内)に設置された2台のサーバー間での伝送速度を“単一ストリームTCPクラス”“複数ストリームTCPクラス”の双方で記録したもの。接続ルートとネットワークは以下のとおり。
- 東京・内部ネットワーク
- T-LEX(WIDEプロジェクト)
- 東京→米国・シカゴ
- APAN/JGN2
- シカゴ・内部ネットワーク
- StarLight
- シカゴ→ニューヨーク
- Abilene
- ニューヨーク→アムステルダム
- SURFnet
- アムステルダム・内部ネットワーク
- Universiteit van Amsterdam(アムステルダム大学)/NetherLight
- アムステルダム→米国・シカゴ
- SURFnet
- シカゴ・内部ネットワーク
- StarLight
- シカゴ→シアトル
- CA*net 4(CANARIE)
- シアトル・内部ネットワーク
- Pacific Northwest Gigapop
- シアトル→東京
- IEEAF(Internet Educational Equal Access Foundation)
- 東京・内部ネットワーク
- T-LEX(WIDEプロジェクト)
今回の実験の経路図 |
機器間の最短距離の和では3万3979kmとなるが、Internet2の計測ルールに従って3万kmとして計算した結果が7.21Gbpsとなる。使用した通信プロトコルはIPv4で、1500bytesの標準イーサネットフレーム長で通信したため、1秒間の距離と通信データ量の積算“バンド幅距離積”は毎秒21万6300Tbit・mとなる。今回の記録は従来の記録(同研究チームが2004年11月に達成したもの)に比べて、単一ストリームTCPクラスで45%、複数ストリームTCPクラスで17%上回る。
伝送記録の変遷 |
東京大学大学院 情報理工学研究科コンピュータ科学専攻 教授の平木 敬氏は、「データ通信が、最も広く用いられる1500bytes標準Ethernetフレーム長、標準TCP方式で実現したことは、この技術が将来、広い分野へ適用可能であることを意味している。ウェブアクセス、ファイル転送、メールシステム、Grid(広域分散コンピューティング環境)などが応用分野として想定される」「7.21Gbpsのデータ転送速度は、ネットワーク技術ではなく、(両端の)サーバーのI/Oバス(PCI-Xバス)により決定されている。東京大学が研究開発した“レイヤ間協調による最適化”技術が遠距離・高バンド幅TCP通信の持つ問題点を根源から解決したことを意味している」「日本のネットワーク技術が世界最高レベルに達していること、日本と世界の学術ネットワーク間の密な結合を具体的な形で示せた」とコメントしている。