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NEC、ユーザーのニーズに合わせた3種類のシンクライアントソリューションを発表――情報漏洩対策ニーズの高まりに答える

2005年04月25日 21時34分更新

文● 編集部 小西利明

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サーバー上で動作する仮想マシンシステム『VirtualPCCenter』のデモ。左画面が管理サーバーで、右画面は仮想クライアント 日本電気 マーケティング推進本部 本部長の藤岡忠昭氏
サーバー上で動作する仮想マシンシステム『VirtualPCCenter』のデモ。左画面が管理サーバーで、右画面は仮想クライアント日本電気 マーケティング推進本部 本部長の藤岡忠昭氏

日本電気(株)(以下NEC)は25日、シンクライアント製品を含む3種類のミドルウェア製品(うち新製品2種類)と専用端末を発表した。情報漏洩対策や運用コストの低減、端末を選ばないモビリティー性をセールスポイントとして販売を行なう。発表された製品と出荷時期は以下のとおり。価格は100クライアント端末規模のシステム価格(サーバー、ミドルウェア、クライアント端末含む)で2000万円から。

ミドルウェア製品

VirtualPCCenter
仮想PC型、2005年8月末出荷予定
Ardence
ネットブート型、2005年6月末出荷予定
MetaFrame
画面転送型、すでに出荷ずみ

専用クライアント端末製品

TC-Station
仮想PC型または画面転送型用、2005年7月末出荷予定
Express5800/51Lc
ネットブート型用、2005年6月末出荷予定

同社マーケティング推進本部 本部長の藤岡忠昭氏は同社の掲げる“クライアント統合ソリューション”について、まず相次ぐ情報漏洩事件と個人情報保護法施行などを受けて、企業側に情報漏洩対策として“ローカルに情報を蓄積・持ち出しされないシンクライアント”へのニーズが高まっていることに触れ、かつてシンクライアントのメリットとして挙げられていた「TCO削減」と同等か、それ以上に重視されていることを、調査会社のレポートを交えて説明した。そのうえで同社のクライアント統合ソリューションについて、アプリケーションやデータといった“顧客の資産”をサーバー側に統合集約しながら、前述の3要素を実現するソリューションであるとした。

シンクライアントに対する企業側のニーズの変化を示すグラフ。左が1999年の調査で、右が2004年の調査。TCO削減と情報漏洩対策が筆頭に来ている
シンクライアントに対する企業側のニーズの変化を示すグラフ。左が1999年の調査で、右が2004年の調査。TCO削減と情報漏洩対策が筆頭に来ている

同社のクライアント統合ソリューションの特徴は、複数種のミドルウェアおよびシンクライアント製品を用意して、顧客希望のニーズに適したソリューションを提供、さらに異なる種類のシンクライアントを混在させることも可能であるという点にある。サーバーですべてを動作させるタイプのシンクライアントは、クライアントのコストは安く済み、クライアントパソコンに外部記憶媒体を接続してデータを持ち出される危険も少ない。しかしサーバー側のコストは高くなるうえ、クライアント側アプリケーションのパフォーマンスも低くなりがちで、構成によってはコストパフォーマンスが悪い場合もある。そこで同社は異なるシステムを用意して、ユーザーニーズに合わせた環境を提供するとしている。

NECが提供する3種類のシンクライアントシステムを使ったシステム構成図 3方式のシンクライアントシステムの違い。画面転送型は仮想PC型と似ているが、管理ソフトが仮想マシンを動的に各サーバーシステムに割り振る機能を持つ
NECが提供する3種類のシンクライアントシステムを使ったシステム構成図3方式のシンクライアントシステムの違い。画面転送型は仮想PC型と似ているが、管理ソフトが仮想マシンを動的に各サーバーシステムに割り振る機能を持つ

用意するシステムは、“画面転送型”“ネットブート型”“仮想PC型”の3種類に分かれる。画面転送型はシトリックス・システムズ・ジャパン(株)のシンクライアントシステム“MetaFrame”を用い、サーバーシステム上ですべてのアプリケーションを動作させ、サーバーに接続したシンクライアントに対しては画面のみを送る。シンクライアント側は非常に低コストなシステムでも動作するのが利点である。同社では2000年よりMetaFrameベースのシステムを販売しており、すでに1000件以上の導入事例があると言う。画面転送型シンクライアントには、MetaFrameベースのシステムだけでなく、サン・マイクロシステムズ(株)のシンクライアントシステム“Sun Ray”を利用したUNIXベースのシンクライアントも用意される。

画面転送型や仮想PC型のシンクライアントシステムに利用するシンクライアント端末『TC-Station』。CPUには“x86系統合CPU”を使用するとある
画面転送型や仮想PC型のシンクライアントシステムに利用するシンクライアント端末『TC-Station』。CPUには“x86系統合CPU”を使用するとある

“仮想PC型”は画面転送型と似ているが、サーバーシステム上で仮想マシン(VM)を構築し、VM上でOS(Windows XPなど)やアプリケーションを動作させ、その実行状況の画面をシンクライアントに送る。サーバーシステム側では同社が開発した管理用ミドルウェア“VirtualPCCenter”が実行され、各クライアントからの要求をサーバー上のVMに割り振る。さらにVMの動作状況をモニターして、あるVMがサーバーリソースを大量に消費(CPU負荷増大やメモリー使用量増大)しようとすると、VMを動的に別サーバー上に構築して負荷の少ないサーバーに切り替えることで、サーバーリソースを有効活用するといった機能を持つ。VMの割り当て変更は自動で行なわれ、クライアント側のユーザーからはシームレスに処理されるため、ユーザーは違和感を感じることなく作業を続けられる。サーバー自体に異常が発生した場合でも、別サーバーにVMを複製して環境を復元することが可能だ。

仮想PC型システムのデモ。左がVirtualPCCenterが動作するVM管理サーバーの画面で、右は動作しているクライアントの例。1つのクライアントの負荷が上がってサーバーリソースを大量に消費し始めると、VMを別のサーバー上に複製し、シームレスに切り替える
仮想PC型システムのデモ。左がVirtualPCCenterが動作するVM管理サーバーの画面で、右は動作しているクライアントの例。1つのクライアントの負荷が上がってサーバーリソースを大量に消費し始めると、VMを別のサーバー上に複製し、シームレスに切り替える
VirtualPCCenterの管理ソフトの画面。左が仮想リソースを管理する画面で、右は各VMの動作状況(CPU使用率)をグラフ化したもの

クライアント側にほとんど処理能力を要求されない上記2方式と比べて、“ネットブート型”はクライアント側に処理能力の優れたパソコンを利用することで、限りなく通常のパソコンに近い使用環境を提供しつつ、HDDをクライアントから排除することで情報漏洩対策を実現する。サーバー側では米Ardence社のミドルウェア“Ardence”が動作して、クライアントに仮想HDDを提供する。クライアントはネットワーク経由でのブートが可能なパソコンで、ただHDDは搭載されない点だけが異なる。クライアントの電源を入れると、BIOSによりサーバーとのネットワーク接続が確立され、サーバーシステム上に確保された仮想HDDに接続、以後は仮想HDDをローカルHDDのように扱い、OSの実行からアプリケーションのデータ保存までを行なえる。それ以外のクライアントパソコン側のリソースは、すべて通常のパソコン同様に利用でき、アプリケーションのインストールやハードウェアの拡張(たとえばグラフィックスカードの交換)も可能であるという。もちろんUSB機器の接続を禁止するといった情報漏洩対策も可能だ。発表会で行なわれたデモでは、CADアプリケーションの動作をネットブート型とそれ以外のシンクライアントで比較して、グラフィック描画速度の違いを披露した。クライアントに通常のパソコンと同等の機能を与えながら、ローカルHDDを廃してサーバー側で管理することを可能にしている。

ネットブート型に対応したクライアントパソコン『Express5800/51Lc』。HDDを搭載しない点以外はパソコンとほぼ同様で、Pentium 4モデルとCeleron Dモデルが提供される。価格は6万9800円(Celeron Dモデル)または、8万9800円(Pentium 4モデル) Express5800/51Lcの内部。通常ならHDDが入っている写真中央左側のスロットには、何も入っていないのが分かる。一方で光学ドライブは搭載するようだ
ネットブート型に対応したクライアントパソコン『Express5800/51Lc』。HDDを搭載しない点以外はパソコンとほぼ同様で、Pentium 4モデルとCeleron Dモデルが提供される。価格は6万9800円(Celeron Dモデル)または、8万9800円(Pentium 4モデル)Express5800/51Lcの内部。通常ならHDDが入っている写真中央左側のスロットには、何も入っていないのが分かる。一方で光学ドライブは搭載するようだ

また同社ではこれらのシステムに、情報漏洩対策ミドルウェア『InfoCage』やインターネット経由での攻撃対策ソフト『CapsSuite』などを組み合わせて提供することで、シンクライアントだけでなく通常のビジネスパソコンも加えた環境への、トータルなセキュリティー対策を提供できるとしている。

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