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NVIDIA SLIの実力検証

NVIDIA SLIの実力検証

2005年04月27日 00時00分更新

文● 鈴木 雅暢

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NVIDIA SLIの導入方法
ハード/ソフトの設定が必要

 nForce 4 SLIを搭載した対応のマザーボード上には、ビデオカードのシングル/デュアルを切り替えるセレクタ(あるいはジャンパーピンなど)が用意されている。これがシングルに設定されている場合、2つあるPCI Express x16スロットは、それぞれ16レーン(x16)/1レーン(x1)のPCI Expressスロットとして機能する。そして、これをデュアルに設定すると、両方のスロットがともに8レーン(x8)のPCI Expressスロットとなるしくみになっている。その後にマザーボードに2枚のビデオカードを装着し、SLIアダプタでそれらを接続するが、今回テストに利用したASUSTeK製マザーボード「A8N SLI Deluxe」では、SLI利用時にPCI Express x16至近にある4ピンの電源コネクタに電源ケーブルを接続しての給電が必要となる。マザーボードのBIOSにもSLIに関する設定項目があるが、これは“Auto”にしておけばいい。

 この状態からOSのインストールなどをしてもいいし、1枚差しの状態でOSインストールした後に2枚差しに変更しても別にかまわない。実際にデュアルGPUを有効にするためにはドライバの設定が必要だ。画面のプロパティの“設定”タブから“詳細設定”をクリックすると現れるビデオカードのプロパティに“マルチGPU”の項目があり、ここで“マルチGPU”のチェックを入れると再起動を求められる。再起動後にマルチGPUが有効になる。GPUのロードバランスをオーバーレイ表示するオプションもあるので、これにチェックをいれておけば、実際にデュアルで動作しているかを知ることができる。

最新ゲームでは確実な効果
ベンチマークテスト検証

 今回はASUSTeKのA8N-SLI Deluxeと、GeForce 6600GT(ビデオメモリ128MB)搭載カードを2枚、GeForce 6800GT搭載カードを2枚ずつ用意し、それぞれシングル/デュアルでの性能を比較してみた。詳しい環境は別掲したとおりである。また、ATIのハイエンドチップであるRADEON X800XT搭載カードの結果も一緒に掲載しているので参考にしてほしい。

Aeolus PCX6800GT-DV256

AOpen 実売価格:5万7000円前後

 16本のピクセルパイプ、256bitのメモリインターフェイスをもつGeForce 6800GTを搭載したカード。コア/メモリスピードは、それぞれ350MHz/1GHz。2系統のDVI出力とS出力を装備し、DVI⇔アナログRGB変換コネクタとS-Video⇔コンポジット変換ケーブルが付属。

URL
http://aopen.jp/

「Aeolus PCX6800GT-DV256」
写真C 「Aeolus PCX6800GT-DV256」。

Aeolus PCX6600GT-DV128

AOpen 実売価格:2万4000円前後

 AOpenのGeForce 6600GT搭載カード。コアクロックは500MHz、メモリは1GHzのGDDR3 SDRAMを128MB搭載。インターフェイスはDVI、アナログRGB、S出力を装備し、DVI⇔アナログRGB変換コネクタとS-Video⇔HDTVコンポーネント変換ケーブルが付属する。

URL
http://aopen.jp/

「Aeolus PCX6600GT-DV128」
写真D 「Aeolus PCX6600GT-DV128」。

Extreme N6600GT/TD/128M

ASUSTeK 実売価格:2万6000円前後

 ASUSTeKのGeForce 6600GT搭載ビデオカード。コア/メモリはそれぞれ500MHz/1GHzと定格動作。DVI、アナログRGB、S出力。DVI⇔アナログRGB変換コネクタとS-Video⇔コンポジット変換ケーブルのほか、GameFace Live、VideoSecurity Onlineなど便利な独自ツールが付属。

URL
http://www.asus.co.jp/

「Extreme N6600GT/TD/128M」
写真E 「Extreme N6600GT/TD/128M」。

GV-NX66T128VP

GIGABYTE 実売価格:2万6000円前後

 コア530MHz/メモリ1120MHzというオーバークロック仕様ながら、ファンレス動作を実現したGIGABYTEのGeForce 6600GT搭載カード。2つのヒートシンクでボードをサンドイッチしてあり、ヒートパイプ経由で背面側に熱を逃がす。DVI、アナログRGB、S入出力端子を装備する。

URL
http://www.gigabyte.co.jp/

「GV-NX66T128VP」
写真F 「GV-NX66T128VP」。


 さて、NVIDIA SLIの効果がほとんど見られなかったテストから見ていこう。Unreal Tournament2003とFinalFantasy XI Vanadiel Bench3といった、少し設計の古いゲームではやはり結果が良くない。特に後者ではSLIは逆効果のようで、スコアが低下してしまっている。もともとシェーダモデルではなく、ハードウェアT&Lを利用するゲームなので仕方がないのかもしれない。また、3DMark03の結果も微妙なところだ。こちらはGeForce 6800GTのSLIでは5~10%の高速化が見られたが、GeForce 6600GTのSLIでは、逆にシングルGPU時よりもわずかながらスコアが低下してしまった。GeForce 6800GTでも処理が重くなるほど、逆にSLIの効果が少なくなるなど、よく分からない結果となっている。ドライバの設定画面で3DMark03をアクティブプロフィールに指定する(これは本来、描画品質を最適化するためのものだが……)などいろいろ試してみたが、性能は改善しなかった。

●3DMark05 Build110

DirectX 9.0c完全対応のテスト。6800GTのSLIでは、すべての条件でシングルの2倍近いスコアをマーク。6600GTではビデオメモリ容量の影響か6800GTほどではない。

3DMark05 Build110
●3DMark05 Build110

●3DMark03 Build350

DirectX 7~9に対応したベンチマークテスト。GeForce 6800GTでは10%ほどSLIの効果はあるが、GeForce 6600GTでは逆にSLI時にスコアを落としてしまっている。

3DMark03 Build350
●3DMark03 Build350

 一方、新しい世代のベンチマークテストでは大きな威力を発揮した。特に最新の3DMark05では、GeForce 6600GTはデフォルトで73%、FSAAと異方性フィルタリングを有効にした値で48%の性能向上。そして、GeForce 6800GTでは、すべての条件で90%以上の性能アップ。もっとも負荷が高い条件では94%と2倍に迫る勢いだ。FSAAを有効にした場合に思ったほど伸びないのは、データ容量が大きいためビデオメモリ容量が影響したためだと推測される。デフォルトではGeForce 6600GTのSLIのほうがシングルのGeForce 6800GTやRADEON X800XTを上回るスコアを出しているのだからたいしたものだ。そして、GeForce 6800GT搭載カードを2枚使ったSLI動作では、これまでの最上級カードでも体験できなかったような、滑らかで迫力のあるグラフィックが楽しめる。デフォルト設定のスコアは8847と、そのパワーは圧倒的だ。

●AquaMark3

Massiveが開発したDirectX 9対応ベンチマークテスト。GeForce 6600GT/6800GTのSLI効果はデフォルト設定でともに25%、負荷が高くなるほど効果が高くなっている。

AquaMark3
●AquaMark3

●DOOM3

timedemoによるフレームレート計測。負荷の高い条件ほどSLIの効果が高く出ており、6600GT、6800GTともにシングル時より最大70%以上の性能アップを果たしている。

DOOM3
●DOOM3

 AquaMark3においては、GeForce 6600GTのSLIではデフォルトで26%、高負荷時では73%もシングル時よりスコアアップした。GeForce 6800GTのSLIでも、デフォルト25%、高負荷時61%の伸びを見せた。2倍とまではいかなかったが、描画クオリティを高めるほどSLIの効果が高くなるという非常に素直な伸びを見せている。RADEON X800XTはnForce4 SLIチップセットとの相性か、途中でどうしても異常終了してしまったが、どのクオリティでもGeForce 6600GTのSLIのほうがGeForce 6800GTのシングルよりも高い値を出している。

●FinalFantasy XI Vanadiel Bench3(HIGH)

人気オンラインゲームのベンチマークテスト最新版。DirectX 7世代のハードウェアT&Lベースのゲームのためか、SLIでは逆に少しスコアを落としている。

FinalFantasy XI Vanadiel Bench3(HIGH)
●FinalFantasy XI Vanadiel Bench3(HIGH)

●Unreal Tournament 2003

DirectX 8.1世代のゲームに含まれるベンチマーク。マップ上を飛行するFlybyの結果。SLIでデュアルGPUとしても、ほとんど誤差のような差しか出ていない。

Unreal Tournament 2003
●Unreal Tournament 2003

 DOOM3でもAquaMark3と似たような傾向で、負荷が増すほどに効果が大きくなり、1280×1024ドット/HIGH QUALITY/4xFSAAという条件では、GeForce 6600GTのSLIで72%、GeForce 6800GTのSLIで78%と、それぞれのシングル時に比べて大幅に性能アップしている。

テスト環境

CPU
Athlon 64 4000+
マザーボード
ASUSTeK A8N-SLI Deluxe
メモリ
PC3200 DIMM×2(1GB/2-2-2-5)
ビデオカード1、2
ASUSTeK Extreme N6600GT/TD/128M
ビデオカード3
AOpen Aeolus 6800GT-DV256
ビデオカード4
XIAiPCX800XT-DV256
HDD
Seagate 7200.(ST380011A)160GB
OS
Windows XP Professional SP2

 このように、NVIDIA SLIの効果はおおむね良好だ。古いゲームやベンチマークで効果がないのは仕方がないし、何よりこれらはSLIをするまでもなく快適にプレイできるはずだ。気にする必要はないだろう。ただ、GeForce 6600GTクラスでのSLIの価値は、少々微妙かもしれない。というのも、GeForce 6600GT搭載カードの実売価格は2万5000円前後といったところ。これを2枚購入するとなれば、5万円になってしまい、もう少し足せば、GeForce 6800GT搭載カードも購入できてしまう。6600GTのSLIのほうが6800GTシングルよりも良い結果を出しているケースもあるとはいえ、その差は決定的とはいえないし、ビデオメモリの制限などもあり、SLIでは性能がうまく上がらないゲームもある。「DOOM3しかプレイしない」というように目的が極端に限定されている方ならともかく、多くのユーザーにとっては、SLIによるパフォーマンスアップをアテにするよりもGeForce 6800GTを1枚購入したほうが良いようにも思える。

 一方、ハイエンドのGeForce 6800GT以上のクラスでのSLIには、1枚のビデオカードだけではとても到達できないような未知の領域を体験できるという強烈な魅力がある。最新のゲームを高速に、かつ高画質で楽しみたいと考えているヘビーゲーマーにとっては非常に有効な手段といえるだろう。

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