このページの本文へ

●Pentium 4 570J・WinchesterコアAthlon 64

●Pentium 4 570J・WinchesterコアAthlon 64

2005年04月13日 00時00分更新

文● 鈴木 雅暢

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

アイドル時の消費電力を削減する Enhanced HALT

 TM2は、LGA775パッケージの採用とともに、LGA775版のPentium 4のみに導入されたThermal Monitor(TM)の改良版。TMは、CPUが一定温度以上になると自動的にクロックを下げるものだったが、TM2では、クロックと同時に電圧も下げる。電圧も同時に下げることで消費電力・発熱を抑え、TMではクロックを3分の2ほど下げていたところを、3分の1程度の下げ幅とし、クロックを下げている時間も短くできるようになったということだ。もっとも、TMおよびTM2は冷却ファンの故障など、システムになんらかの不具合があった時のために実装されているものであり、TM/TM2が動作するということは、好ましくない状況だ。

●表1 各種CPUの電圧

マザーボード付属のハードウェアモニタツールで確認したCPUコア電圧。C1Eステートに対応したPentium 4 570Jでは、アイドル時に1.165Vまで電圧が下がる。Pentium 4では電流量が増すと電圧を少しずつ下げる仕様にもなっているので、エンコード時にも多少下がる。
アイドル時コア電圧エンコード時コア電圧
Pentium 4 570J1.165V1.259V
Pentium 4 5601.318V1.282V
Athlon 64 4000+
(NewCastle)
1.52V1.53V
Athlon 64 4000+
(NewCastle)C'n'Q
1.11V1.53V
Athlon 64 3500+
(Winchester)
1.41V1.42V
Athlon 64 3500+
(Winchester)C'n'Q
1.11V1.42V

 C1Eステートは、アイドル時の消費電力を削減する機能。WindowsやLinuxなどのOSでは、CPUの使用率が下がるとHALTという停止命令を発行し、CPUを休止させて省電力、低発熱化を図るようになっている。CPUはこの停止命令を受けると「HALTパワーダウン状態」という省電力モードへと移行するが、Enhanced HALTでは、この省電力モードのときに、電圧を下げることで省電力化する。下げ幅についてはデータシートには明記されていないが、マザーボードのハードウェアモニタツールで電圧の動きを見てみたところ、通常時1.3V前後のところが、アイドル時には1.165Vにまで下がっていることが確認できた。なお、データシートには電圧と同時にCPUの内部倍率も下げると記載されているのだが、Intelは電圧を下げること以外はアピールしていない。いくつかリアルタイムのクロック表示が可能なツールを試したが、新ステップのためかFSBが異常値を示してしまい、実際のところクロックが下がっているのかどうかはきちんと確認できなかった。

 C1Eステートは、あくまでもアイドル時の消費電力を削減するもので、CPU稼動時の負荷に応じてクロックを上下させる拡張版SpeedStep(Enhanced Intel SpeedStep Technology=EIST)とは別のものである。しかし、現在IntelがOEMベンダーに伝えているロードマップによれば、来年600番台のプロセッサ・ナンバでリリースされる予定になっているL2キャッシュ容量が2MBのPentium 4(Prescott 2M=開発コードネーム)には、EISTが導入されるという。

 なお、Intelは、C1EやEISTなどの省電力フィーチャーとは別に、ステッピングの更新ごとにロジックレベルでの低消費電力化も進めてもいるという。TDP(Thermal Design Power=熱設計電力)の値は、D0ステップでは3.20GHzの540までが84W、それ以上は115Wという分類だったが、E0ステップでは3.4GHz動作の550Jまで84Wのグループに入っている。mPGA478でデビューした当初のC0ステップでは3.2E/3.4EGHzともに103Wだったのだから、大きな進歩である。徐々にではあるが、低消費電力化への取り組みがなされていることは歓迎したい。

●表2 Pentium 4(LGA775)の主な仕様
コア
(ステッピング)
実クロックプロセス
ルール
FSBL2キャッシュNXビット対応C1EステートTM/TM2対応TDP
Pentium 4 570JPrescott(E0)3800MHz90nm800MHz1MBTM2115W
Pentium 4 560JPrescott(E0)3600MHz90nm800MHz1MBTM2115W
Pentium 4 550JPrescott(E0)3400MHz90nm800MHz1MB――84W
Pentium 4 560Prescott(D0)3600MHz90nm800MHz1MB――――TM115W
Pentium 4 550Prescott(D0)3400MHz90nm800MHz1MB――――TM115W
Pentium 4 540Prescott(D0)3200MHz90nm800MHz1MB――――――84W

WinchesterコアのAthlon 64が登場
TDPは67Wとさらに低消費電力

 低消費電力ということになると、10月末あたりから流通しているWinchesterコアのAthlon 64も注目すべき存在だ。10月にリリースされたAthlon 64 4000+は130nm SOIプロセスのNewCastleコアだったが、8月に出荷が発表されていた、90nm SOIプロセスで製造されたWinchesterコアのAthlon 64も流通してきている。

NewCastleコアのAthlon 64 4000+ WinchesterコアのAthlon 64 3500+
●NewCastleコアのAthlon 64 4000+●WinchesterコアのAthlon 64 3500+
写真2 NewCastleコアのAthlon 64 4000+(左)とWinchesterコアのAthlon 64 3500+(右)。コアは変わったが、見た目には特に変化はない。

 現在のところ入手できるWinchesterコアのAthlon 64は、3000+、3200+、3500+と、これまでの上位のグレードを更新するものではない。特筆すべきは、プロセスルールの縮小にともない、TDPはNewCastleコアに比べて22W以上も低い67Wに抑えられていること。もともとSOI(Silicon On Insulator=絶縁体をサンドした構造のシリコンウエハ上に回路を形成する技術)プロセスの効果やCool'n'Quietの導入により、低消費電力設計ではPentium 4より先行している印象があったAthlon 64だが、Winchesterコアのモデルではさらに上をいく低消費電力を実現できている。なお、NewCastleコアとWinchesterコアのモデルでは、プロセスルールの変更とそれに伴う電力関係の仕様以外は共通で、性能や機能面での変更は行なわれていない。

●表3 Athlon 64の主な仕様
コア実クロックプロセス
ルール
HTリンクL2キャッシュNXビット対応C'n'Q対応ソケットTDP
Athlon 64 4000+NewCastle2400MHz130nm SOI1000MHz1MBSocket 93989W
Athlon 64 3800+NewCastle2400MHz130nm SOI1000MHz512KBSocket 93989W
Athlon 64 3500+NewCastle2200MHz130nm SOI1000MHz512KBSocket 93989W
Athlon 64 3500+Winchester2200MHz90nm SOI1000MHz512KBSocket 93967W
Athlon 64 3200+Winchester2000MHz90nm SOI1000MHz512KBSocket 93967W
Athlon 64 3000+Winchester1800MHz90nm SOI1000MHz512KBSocket 93967W

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中