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【IDF Japan 2005 Vol.3】「人々はもう体毛より多くのトランジスターを持ち歩いている」――基調講演に見るインテルのモバイル戦略

2005年04月08日 22時43分更新

文● 編集部 小西利明

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IDF-Jの展示ブースで披露されていた、Napaプラットフォームを搭載するノートパソコンのデモ機。見た目は流行りの15インチ級ワイド液晶パネル搭載の、オーソドックスな2スピンドルノートである
IDF-Jの展示ブースで披露されていた、Napaプラットフォームを搭載するノートパソコンのデモ機。見た目は流行りの15インチ級ワイド液晶パネル搭載の、オーソドックスな2スピンドルノートである

エデン氏の講演の山場となったのが、ノートパソコン向けの新しいプラットフォームに関する話題である。現在のプラットフォーム“Sonoma(ソノマ)”の跡を継いで登場する次世代のプラットフォームは“Napa(ナパ)”というコード名で呼ばれており、製品の登場は2006年第1四半期を予定している。Napaを構成する要素は次の3つのコンポーネントとなる。

CPU:Yonah(ヨナ)
インテル初のモバイル向けデュアルコアCPU。65nm製造プロセスで製造される。コアアーキテクチャーは現行のPentium M(Dothan:ドタン)に改良を加えていて、特にSSE命令に関するパフォーマンスが向上している。内蔵2次キャッシュメモリーはコアごとに1MBの合計2MB。
チップセット:Calistoga(カリストガ)
改良されたグラフィックス機能を搭載するチップセット。
無線LANチップ:Golan(ゴラン)
現行の無線LANチップセットより40%も小型化された無線LANチップセット。米シスコシステムズ社による相互接続性認証プログラム“Cisco Compatible Extensions”に対応。
Napaプラットフォームの新しい機能や要素
Napaプラットフォームの新しい機能や要素

エデン氏はNapaで実装される新しい機能について説明を行なった。まず“インテル デジタル・メディア・ブースト”については、CPUのアーキテクチャーに変更を加えて、マルチメディアアプリケーションのパフォーマンスを向上させている。マルチメディアアプリケーションで多用されるSIMD演算を行なうSSE/SSE2/SSE3命令を、CPUコアの内部命令(μops)に変換する“μopsフュージョン”を改良することで、並列化して実行可能としているという。またプロセッサー類の温度を監視する熱センサーに、デジタル式の高精度のセンサーを採用している。

Napaを構成する無線LANチップセット“Golan”は、小型化とセキュリティー機能の強化などがキーポイントとなっている
Napaを構成する無線LANチップセット“Golan”は、小型化とセキュリティー機能の強化などがキーポイントとなっている

Napaで重要なポイントのひとつが、省電力機能の“インテル ダイナミック・パワー・コーディネーション(DPC)”である。これはデュアルコア化によって、今までのPentium Mに搭載されていた“拡張版SpeedStepテクノロジ(EIST)”に変更を加えなければならなくなったために導入されたものだ。エデン氏はアニメーションを元にDPCの動作についての説明を行なった。EISTはCPUの動作状態に応じて、動的にクロック周波数や動作電圧を変更することで、パフォーマンスを損なわずに消費電力を引き下げることができる。しかしYonahの場合、コアは2つあってもCPU自体に供給される電圧は1つなので、片方のコアの負荷が軽いのでクロックや動作電圧を下げたくても、もう片方のコアの負荷が高い場合は下げられない。CPU全体で負荷の高いコアに合わせたクロック、電圧管理を行なうのがDPCの機能というわけだ。つまり各コアの動作状況によっては、EISTと比べてバッテリー消費のロスが生じてしまう。2つのコアに異なる電圧を供給するためには、ボルテージレギュレーターをコアと同じ数だけ搭載する必要があるが、システム全体のコストアップにつながる。つまりデュアルコア化によって、従来どおりのEISTをそのまま使うことができなくなったため、苦肉の策として搭載された機能がDPCと言える。

コア1とコア2でパワーステートが異なる場合、Yonahは高い方にクロック周波数や電圧を合わせる CPUが休んでいる“アイドル状態”の設定も、負荷が高い=消費電力が高い側に設定される
コア1とコア2でパワーステートが異なる場合、Yonahは高い方にクロック周波数や電圧を合わせるCPUが休んでいる“アイドル状態”の設定も、負荷が高い=消費電力が高い側に設定される
DPCの動作を説明するスライド

これだけを聞くと、YonahになるとCPUの消費電力は増大して、バッテリー駆動時間が短くなってしまうように思えるが、これについてエデン氏は前日に行なわれた記者会見で、Yonahは現行のDothanよりも低消費電力であると述べた。これが製造プロセスが90nmから65nmへと縮小されるためであるのか、それともデュアルコア化によって最高動作周波数が引き下げられるのか、他にも理由があるのかは分からないが、Napaベースのノートパソコンのバッテリー駆動時間がどうなるかは、注目して見ていきたい事象である。

Napaではプラットフォームのさらなる小型化も促進されると、エデン氏は述べた。第1世代のCentrino(コード名Carmel:カーメル)のサイズを100%とした場合、現行のSonomaは87%のサイズに、Napa世代では69%と、約3分の2にまで小型化が可能と言う。エデン氏はパソコンメーカーが新たなデザインのモバイルパソコンを設計するための支援として、2003年から行なわれていた“インテル・モバイル・コンセプトPC プログラム”について触れ、コンセプトPCで生まれたデザインから発想を得たという、パソコンメーカー各社の新しいパソコンのデザインのいくつかをステージ上で披露した。それらはノートパソコンではなく、薄型の液晶ディスプレー内にパソコンの機能を内蔵したような超薄型で省スペースのディスプレー一体型パソコンも多い。現在日本で人気のある液晶ディスプレー一体型のパソコンは、プラットフォーム部分はデスクトップと同じものを流用しているので、意外に設置面積を必要とするものだが、講演で披露されたマシンはどれも液晶ディスプレー単体とさほど変わらないコンパクトさ。前日の記者会見でエデン氏は、日本のパソコンメーカーからは、「YonahやNapaをデスクトップで使いたい」という声もあると認めている。来年にはノート向けの低消費電力&低発熱のNapaプラットフォームを利用した、今までにないデザインのパソコンが登場してくるかもしれない。

世代を経るに従って、Centrinoプラットフォームも小型化が進んでいることを示すグラフ。65nm世代のNapaでは、130nm世代のCarmelの3分の2程度まで小さくなる Napaを使って大胆に薄型化されたパソコンを披露するエデン氏。どれも見た目はまるっきり単体の液晶ディスプレーのようだが、デュアルコアCPUを搭載する歴としたパソコン
世代を経るに従って、Centrinoプラットフォームも小型化が進んでいることを示すグラフ。65nm世代のNapaでは、130nm世代のCarmelの3分の2程度まで小さくなるNapaを使って大胆に薄型化されたパソコンを披露するエデン氏。どれも見た目はまるっきり単体の液晶ディスプレーのようだが、デュアルコアCPUを搭載する歴としたパソコン

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