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ATIテクノロジーズ、“HyperMemory”やビデオプロセッシング技術に関するセミナーを開催――ライバルに対する優位性を強調

2005年03月23日 23時51分更新

文● 編集部 小西利明

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HyperMemoryテクノロジーについて説明する、カナダATI社 デスクトップ・マーケティング プロダクトマーケティングマネージャーのヴィジェイ・シャルマ氏 ファーストパーソンシューティングゲーム『FarCry』を使い、HyperMemory対応のRADEON X300とNVIDIA GeForce 6200TCのパフォーマンスを比較するデモ
HyperMemoryテクノロジーについて説明する、カナダATI社 デスクトップ・マーケティング プロダクトマーケティングマネージャーのヴィジェイ・シャルマ氏ファーストパーソンシューティングゲーム『FarCry』を使い、HyperMemory対応のRADEON X300とNVIDIA GeForce 6200TCのパフォーマンスを比較するデモ

ATIテクノロジーズジャパン(株)(以下ATI)は23日、東京都港区赤坂のカナダ大使館にて報道関係者向けのテクノロジーセミナーを開催し、同社独自の技術である“HyperMemoryテクノロジー”やビデオプロセッシング技術についての説明を行なった。特に新製品に関する発表というわけでもない時期に同社が技術セミナーを開催したのは、ライバルである米エヌビディア社(以下NVIDIA)が最新の“GeForce 6x00”シリーズで導入した新技術に対して、自社の同種の技術の優位性をアピールするためである。

セミナーではまず、カナダATIテクノロジーズ社のデスクトップ・マーケティング プロダクトマーケティングマネージャーのヴィジェイ・シャルマ(Vijay Sharma)氏により、HyperMemoryについての説明が行なわれた。HyperMemoryは同社のローエンドGPU『RADEON X300 SE』(コード名“RV370”)で採用された、低価格パソコンのグラフィックス能力を向上させる技術である。HyperMemoryを備えるX300 SEでは、幅広い帯域を持つPCI Express x16(4GB/秒で双方向)の特徴を生かして、パソコンのメインメモリーをグラフィックスカード上のローカルメモリーのように扱える。これによって、グラフィックスカード上のローカルメモリーが少なくても(32MBまたは128MB)、大容量のメモリーを搭載しているグラフィックスカードのように、高品位の3Dグラフィックスを表示可能になる。ローカルメモリーだけを使う場合に比べればパフォーマンスは低下するが、グラフィックスカードのコストが低くても、それなりのパフォーマンスを発揮できるのが利点だ。X300 SEでは最高で256MB分(ローカル128MB+メインメモリーから128MB)のビデオメモリーを使用できる。ちなみにコアクロック周波数は325MHz、ピクセルパイプは4パイプで、メモリークロックは300MHzである。

HyperMemoryの概念図。X300 SE内蔵のメモリーコントローラーとドライバーソフトにより制御され、アプリケーションからは透過的になっている X300 SEには、32MBのローカルメモリーを搭載してトータル128MBを実現する構成と、128MBを搭載してトータル256MBとする構成が用意される
HyperMemoryの概念図。X300 SE内蔵のメモリーコントローラーとドライバーソフトにより制御され、アプリケーションからは透過的になっているX300 SEには、32MBのローカルメモリーを搭載してトータル128MBを実現する構成と、128MBを搭載してトータル256MBとする構成が用意される
HyperMemoryの動作を説明する図。HyperMemoryでは動作状況に応じて、ローカルメモリー内のデータをメインメモリーに確保された“非ローカルメモリー(GART Memory)”に格下げできるだけでなく、さらにページアウト可能なメモリーに格下げして、メインメモリーを空けることもできるという
HyperMemoryの動作を説明する図。HyperMemoryでは動作状況に応じて、ローカルメモリー内のデータをメインメモリーに確保された“非ローカルメモリー(GART Memory)”に格下げできるだけでなく、さらにページアウト可能なメモリーに格下げして、メインメモリーを空けることもできるという

NVIDIAにも同種の技術である“TurboCache”テクノロジーを搭載するローエンドGPU『GeForce 6200 with TurboCache』(GeForce 6200TC)がある。またインテル(株)のチップセット『Intel 915G Express』にも、DirectX 9世代のGPU“Intel GMA900”が内蔵されている。シャルマ氏はこうしたライバルの技術に対して、X300 SEは単純な性能もコストパフォーマンスも優れるとした。シャルマ氏が提示したグラフでは、X300 SE 128MB HyperMemoryとGeForce 6200TC 128MB、Intel 915Gを比較して、3Dグラフィックスベンチマークソフト『3DMark2001 SE』や、ファーストパーソンシューティングゲーム『FarCry』、『Half-Life2』などで優れたパフォーマンスを発揮している。またメインメモリー256MBのパソコンにX300 SEとGeForce 6200TCを装着した場合、X300 SEの方が20ドル(約2080円)安くて、『3DMark03』の成績は約1.3倍も良いというデータも示し、X300 SEの優位をアピールした。X300 SEがパフォーマンスで優れる理由についてシャルマ氏は、X300 SEのローカルメモリーインターフェースが64bitで、ピクセルパイプ数も4なのに対し、GeForce 6200TCは32bitで2ピクセルパイプにすぎないためとした。ただしNVIDIAはGeForce 6200TCのピクセルパイプを4と公表しており、メモリーインターフェースも32bitだけでなく64bitの構成も可能と発表している。

3Dグラフィックスベンチマークや3Dゲームでのパフォーマンス比較グラフ。赤いバーがX300 SEの成績 X300 SEとGeForce 6200TCのパフォーマンスとコストを比較したグラフ。赤はメインメモリー256MBのパソコンとX300 SE 128MB HyperMemoryの組み合わせで、3倍近い価格のメインメモリー1GB+GeForce 6200TCと同等の性能を発揮するとしている
3Dグラフィックスベンチマークや3Dゲームでのパフォーマンス比較グラフ。赤いバーがX300 SEの成績X300 SEとGeForce 6200TCのパフォーマンスとコストを比較したグラフ。赤はメインメモリー256MBのパソコンとX300 SE 128MB HyperMemoryの組み合わせで、3倍近い価格のメインメモリー1GB+GeForce 6200TCと同等の性能を発揮するとしている

シャルマ氏は3Dグラフィックスだけでなく、HD品質のMPEG-2やWMV、H.264といったビデオ再生のパフォーマンスでも、HyperMemoryのほうがCPU負荷が低く、3Dグラフィックス表示とHDビデオ再生を同時に行なっても、ビデオのコマ落ちや3Dグラフィックス表示のフレームレート低下が少ないというデータを示し、HyperMemoryの優位を主張している。

X300 SEでは3Dグラフィックス表示とHD品質ビデオ再生を同時に行なっても、GeForce 6200TCよりパフォーマンス低下が少ないとする図 3D表示とHDビデオ再生を同時に行なう比較デモ。左がX300 SEで右がGeForce 6200TC。確かに左の方がいずれもスムーズに表示していた
X300 SEでは3Dグラフィックス表示とHD品質ビデオ再生を同時に行なっても、GeForce 6200TCよりパフォーマンス低下が少ないとする図3D表示とHDビデオ再生を同時に行なう比較デモ。左がX300 SEで右がGeForce 6200TC。確かに左の方がいずれもスムーズに表示していた

セミナーの後半では、カナダATIのアドバンスト・デクノロジー・マーケティング テクニカルマーケティングマネージャーのアレクシス・マザー(Alexis Mather)氏により、同社のビデオ再生に対する取り組みと、NVIDIAのビデオアクセラレーション技術“PureVideo”に対する同社の優位についての講演が行なわれた。マザー氏はまずビデオ再生のパイプラインを、キャプチャー、エンコード、デコード、プロセス、出力の各段階に分けて説明したうえで、X300 SEとGeForce 6200TCでは、X300 SEの方がCPU負荷が低く消費電力も低く済むというグラフを示した。

カナダATI社 アドバンスト・デクノロジー・マーケティング テクニカルマーケティングマネージャーのアレクシス・マザー氏 HD品質のMPEG-2ビデオ再生時の、GPUによるCPU負荷の違いを示すグラフ。X300 SEの方が低負荷で、その分消費電力も低く済むと主張している
カナダATI社 アドバンスト・デクノロジー・マーケティング テクニカルマーケティングマネージャーのアレクシス・マザー氏HD品質のMPEG-2ビデオ再生時の、GPUによるCPU負荷の違いを示すグラフ。X300 SEの方が低負荷で、その分消費電力も低く済むと主張している

さらにマザー氏は名指しは避けながらも、ライバルのビデオ再生支援技術(つまりNVIDIAのPureVideo)がマーケティングのための技術で、テスト用の映像や専用DVDデコーダーでしか有効ではないとして、NVIDIAがPureVideoの利点として挙げた“インターレース/プログレッシブ変換(デインターレース)”や“3:2プルダウン Bad Edit補正”などをひとつひとつ取り上げながら、テスト映像ではない“Real World(現実世界)”で出回っている映像では、効果がなかったり悪影響があると厳しく批判した。

マザー氏が挙げたデインターレースの例のひとつ。上側のテスト画像では違いがあまりないが、コントラストの高い部分では歪みが表示していると言う フレームだぶり“bad edit”を補正する機能は、競合他社の専用デコーダーよりも市販のDVDデコーダーの方が良好と主張
マザー氏が挙げたデインターレースの例のひとつ。上側のテスト画像では違いがあまりないが、コントラストの高い部分では歪みが表示していると言うフレームだぶり“bad edit”を補正する機能は、競合他社の専用デコーダーよりも市販のDVDデコーダーの方が良好と主張

GPUの世界で激しい競争を繰り広げる両社は、時として発表会やプレスセミナーなどで、相手の製品や技術を厳しく批判することがある。ATIは以前よりGPUでのビデオ再生支援に積極的な企業で、今回のセミナーでも液晶の応答速度を改善する“LRTC(LCD Response Time Compensation)”技術は以前から導入していると述べるなど、ビデオ再生の世界では先行者である自負がある。またマザー氏の講演では、デジタルTV向けのシステムオンチップ“XILLEON(ジリオン)”をテレビメーカーなどに販売し、「米国のデジタルTVの80%がATIのチップを使っている」と、デジタルビデオ分野で高いシェアを誇っていることにも触れた。日本の報道陣の前では珍しい他社技術への厳しい批判は、こうした自負の現われと言えるだろう。

ATIの家電向けビデオプロセッサーを採用したデジタルTV及び関連製品の例。ソニー(株)の米国向けデジタルTV全種のほか、デジタルTVの80%を制しているという
ATIの家電向けビデオプロセッサーを採用したデジタルTV及び関連製品の例。ソニー(株)の米国向けデジタルTV全種のほか、デジタルTVの80%を制しているという

マザー氏は同社のTVチューナー関連製品の日本での展開についても触れ、TVチューナー用ハードウェアエンコーダーチップ『Theater 550』を搭載したカードを、日本市場向けに最適化したうえで、年内に投入すると述べた。日本向け製品ではアナログチューナー部分のゴーストリダクション機能などを、米国で販売されている製品より強化するとのことだ。

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