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“THE DIGITAL DREAMER~香港と日本、デジタルとストーリーの新たな融合~”レポートVol.1――ジョン・チュウ氏基調講演

2005年03月15日 14時58分更新

文● 千葉英寿

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埼玉・川口市のデジタル映像制作向け複合施設“SKIP(Saitama Kawaguchi Intelligent Park)シティ”において11日、香港と日本の映像クリエイターによるシンポジウム“THE DIGITAL DREAMER~香港と日本、デジタルとストーリーの新たな融合~”が開催された。主催は埼玉県。同シンポジウムには、現在公開中の香港のカンフーアクション映画『カンフーハッスル』のVFX(特殊撮影)を手がけた香港の映像制作プロダクション、Centro Digital Pictures社の会長兼CEOであるジョン・チュウ(John Chu)氏、今夏公開の映画『HINOKIO(ヒノキオ)』の監督・VFXを担当した秋山貴彦氏ら、香港と日本のトップクリエイターが参加し、ワールドワイドでの展開を視野に入れた“アジア発のエンターテイメント”を、ビジネス(採算性)とクリエイティブ(芸術性/完成度)の両面から考える場となった。また、ジョン・チュウ氏に単独インタビューし、Centro Digital PicturesのCGアニメ/VFXに特化したスタジオとしての現況や今後について、話をうかがった。

「夢を持っている若い人たちにがんばってほしい」

シンポジウムは、SKIPシティ内の“彩の国ビジュアルプラザ・映像ホール”を会場として、前半(第1部)はチュウ氏の基調講演、後半は香港と日本の映像クリエイターによるトークセッションという2部構成で行なわれた。

基調講演は“Centro Digital Picturesが目指す映像ビジネス”というテーマで行なわれた。冒頭、チュウ氏は香港島西部の“Cyberport(サイバーポート)”地区に構える“Centro Digital Pictures”という施設を紹介した。チュウ氏は「SKIPシティと同様」にCyberportにはデジタルメディアセンターがあり、立体物をデジタルデータとして取り込む“サイバースキャン”や“モーションキャプチャー”、“HDスタジオ”などを時間貸しする施設があると紹介した。
今回の会場であるSKIPシティは、HDスタジオなどの最新のデジタル映像制作を支援する施設を備えた“彩の国ビジュアルプラザ”、日本放送協会(NHK)の過去の映像作品を視聴できる“NHKアーカイブス”、早稲田大学川口芸術学校などがあるデジタルクリエーションの一大集積地であり、香港政府が出資する高度情報化産業団地であるCyberportとは、“官民一体で進めるITセンター”という意味合いからも大いに共通点があると言える。

チュウ氏は基調講演の多くの時間を使って、同社がCGアニメーションをクリエイティブに生かしてきた変遷を同社が関わった作品でひとつずつ追いながら、各作品におけるメイキングを紹介した。

チュウ氏が最初に手がけたのは1995年の作品、『人間有情 The Umbrella Story』(日本未公開作品)だ。同作は1940~50年代が背景の、傘を作ることを生業としている家族の話で、この作品では過去の記録映画などの古いフッテージ(動画素材)を活用し、これに現代の役者の演技を合成して制作したものだという。Chu氏は「古いフッテージだったためスクラッチ(フィルム上の傷)が多く、そのクリーニングをすることから作業を行なわなければならなかった」と、当時の苦労を振り返った。

古い香港の実際の映像を背景に役者の演技を合成
『人間有情』。香港銀行など、古い香港の実際の映像を背景に役者(手前中央の男女)の演技を合成している

同作品中では、この手法を使って大変興味深いシーンが作り上げられている。世界的なアクションスターである故ブルース・リー(Bruce Lee)氏が登場している古いフッテージを使い、ブルース・リーの演技に役者が演技を合わせて映像合成したものだ。机を挟んで男性(元映像の相手は女性)と会話しているシーンや、女性とダンスしている(元映像は一人で踊っている)シーンなど、ブルース・リーが時を超えて見事によみがえっている。この手法はまさにハリウッドのヒット映画『フォレスト・ガンプ』のアイディアとほとんど同じで、奇しくもほぼ同時期に発案されたものだった。

ブルース・リーが演じている元の映像 過去の映像の演技に合わせて、新たに役者が演じる
『人間有情』。(1)ブルース・リーが演じている元の映像『人間有情』。(2)過去の映像の演技に合わせて、新たに役者が演じる
古いフッテージに新しい映像を重ね合わせ、まったく新しいシーンが創造された
(3))古いフッテージに新しい映像を重ね合わせ、まったく新しいシーンが創造された

香港と日本の合作映画『宋家の三姉妹』(1998年/監督:メイベル・チャン(張婉停/Mabel Cheung))においても、デジタル技術を活用して効果的な映像を制作している。同作品は、19世紀末から革命、戦争、中華人民共和国の建国を経て現代にいたるまでの物語を描いたもので、飛行機が着陸するシーンで滑走路に沿って並んだ車の数をデジタル処理で増やしている。



デジタル処理によって見事に“車のヘッドライトの滑走路”を再現
『宋家の三姉妹』。貴重な当時の古い車を十分な数揃えることは現実には不可能だが、デジタル処理によって見事に“車のヘッドライトの滑走路”を再現した

香港の刑事&マフィア映画“インファナル・アフェア”シリーズなどを手がけるアンドリュー・ラウ(劉偉強/Andrew Lau)氏が監督した『風雲 ストームライダース』(1998年)では、米Silicon Graphics(シリコングラフィックス)社のグラフィックスワークステーションを多数導入し、大仏のシーンで観光客を消したり、水滴を自由自在に操る術、役者とアニメーションのドラゴンが戦う戦闘シーンなどでもバリバリのCGが使われた。

炎に包まれたドラゴンと役者が戦う 上が元の映像、下が作品に使われたもの
『風雲 ストームライダース』。炎に包まれたドラゴンと役者が戦う『風雲 ストームライダース』。上が元の映像、下が作品に使われたもの。大仏の足下に見える観光客と船着き場が消されていることがわかる

巨匠、チェン・カイコー(陳凱歌/Chen Kaige)監督の『始皇帝暗殺』(1998年)では、チュウ氏は「何度もテストして、監督に納得してもらった」と語った。『中華英雄 レジェンド・オブ・ヒーロー』(2001年/監督:アンドリュー・ラウ)では、初めてCG制作にパソコンを導入し、CGでマンハッタンを再現。2001年には世界的なヒット作となったチャウ・シンチー(周星馳/Chow Sing Chi)監督の映画『少林サッカー』のCG、VFXを担当した。『アイ』(2001年/監督:オキサイド・パン(Oxide Pan)、ダニー・パン(Danny Pang))では初めてホラー作品を手がけ、タイで渋滞の映像を撮影して、車が次々に吹き飛んでいくという映像を作り出した。

『始皇帝暗殺』 『レジェンド・オブ・ヒーロー』
『始皇帝暗殺』。最小の隊列を使って何度も撮影し、合成することで大軍を表現した『レジェンド・オブ・ヒーロー』。CGで描かれた自由の女神の上でのアクションが表現された
役者が飛ぶ演技をする 役者をCGで描き、あり得ない飛び方の動きを制作する
『少林サッカー』。(1)役者が飛ぶ演技をする『少林サッカー』。(2)役者をCGで描き、あり得ない飛び方の動きを制作する
実写の背景とあわせて、頭から逆さまに突っ込んだところ 映画『アイ』
『少林サッカー』。(3)実写の背景とあわせて、頭から逆さまに突っ込んだところ映画『アイ』より。老人の幽霊の顔が変形する様子をCGで制作した

その後、2002年にはハリウッドのヒット映画『キル・ビル』(監督:クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino))の制作にも参加し、デジタルエフェクトを担当した(アニメーション制作はプロダクションI.G.が担当したことでも知られる)。そして、最新作の『カンフーハッスル』(2004年/監督:チャウ・シンチー)へとつながる。

最後にチュウ氏はCentro Digital Picturesを設立した理由として「僕自身が夢を持っている人間であり、夢を持っている若い人たちにがんばってほしいと思って設立しました」と語り、締めくくった。

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