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NTTデータ、慶応大学や東亞合成とのセルコンピューティングプロジェクト“βirth(バース)”を開始

2005年02月16日 16時25分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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セルコンピューティングプロジェクト“cell computing βirth”の発表会

(株)エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)は16日、東京・大手町のアーバンネット大手町ビル内(NTTコーポレートニューズルーム)で記者説明会を開催し、インターネットに接続されたパソコンの演算能力を利用して、大規模な計算研究を行なうセルコンピューティングプロジェクト“cell computing βirth(セルコンピューティング バース)”を開発したと発表。同時に本日より、慶応大学との協働で自然免疫系遺伝子改名プロジェクト“ゲノムスーパーパワーを見つけよう!”、東亞合成(株)との協働でヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクト“ゲノムのパズルを解こう!”の2つのプロジェクトを開始したと発表した。いずれもWindows 2000/XP用クライアントソフトが、専用ウェブサイト“http://www.cellcomputing.net”から無料でダウンロード可能。



NTTデータのビジネスイノベーション本部ユビキタス推進室長セルコンピューティングビジネス推進室長で工学博士の山本修一郎氏
NTTデータのビジネスイノベーション本部ユビキタス推進室長セルコンピューティングビジネス推進室長で工学博士の山本修一郎氏

説明会には、NTTデータのビジネスイノベーション本部ユビキタス推進室長セルコンピューティングビジネス推進室長で工学博士の山本修一郎氏、慶応大学医学部教授で分子生物教室の清水信義氏、東亞合成の名古屋研究機構 新製品開発研究所主席研究員・研究主幹で理学博士の吉田徹彦氏らが出席し、デモンストレーションを交えセルコンピューティングシステムの概要や研究テーマなどを紹介した。

βirthの仕組み
βirthの仕組み。新たな産業や研究を創出する、生み出すという意味をこめて名づけたという

NTTデータでは、従来から複数台のコンピューターをネットワーク経由で並列演算する“グリッド・コンピューティング”に取り組んでいるが、今回のセルコンピューティングプロジェクトは、特定のサーバー/管理システムによらず、各家庭や学校、団体などインターネットに常時接続しているパソコンの余剰計算処理能力を利用して、科学技術計算などの膨大な量の計算処理を行なうというもの。同社では、「子供たちでも学校のパソコンから結果を持ち寄って科学技術の計算に参加できる、自分たちが参加しているという意識を醸成することで、理系離れという社会問題のひとつの解決の糸口になればと期待している」(山本氏)と語った。

βirthにおけるNTTデータの役割 NTTデータの目指す未来
βirthにおけるNTTデータの役割。あくまでも一般ユーザー(CPU処理能力の提供者)と研究・企業らとの橋渡し、インフラの役目を担うNTTデータの目指す未来。仮想計算機センターとしての役割を果たしたいという

NTTデータが提供するセルコンピューティングシステムβirthは、米国カリフォルニア大学で開発された“BOINC(Berkeley Open Infrastructure for Network Computing、ボインク)”を基盤に、コンピューターシステムやグラフィックス表示システム、ウェブ連携システム、協働する研究システムの移植などをNTTデータが実施・開発したもの。BOINCはカリフォルニア大学の“SETI@home”(地球外知的生命体の探査プロジェクト)、英国オックスフォード大学の“Climateprediction.net”(地球全体の気候変化を算出するプロジェクト)などの大規模分散コンピューティングプロジェクトに使われているが、日本ではまだ活用事例がなく、今回が初の試みだという。

慶応大学医学部教授で分子生物教室の清水信義氏
慶応大学医学部教授で分子生物教室の清水信義氏

慶応大学の“ゲノムスーパーパワーを見つけよう!”は、生物が進化の過程で獲得した自然免疫の主成分とされる“抗菌性ペプチド”を保存するゲノムDNA領域の特徴を解析し、ほかの生物に同じDNAの配列が存在しないかを検証するプロジェクト。コードネームは“BOLERO+(Bio Odyssey of LATEEN Explorer for Reserved Objects plus!、ボレロプラス)”。今回の実験では、30万の塩基で構成されるDNA領域と、人(ヒト)/マウス/ラット/メダカの脊椎動物、ハエ(無脊椎動物)/シロイヌナズナ(植物)のゲノムの類似度を、清水教授の研究室が開発した専用プログラム“LATEEN+(ラティンプラス)”でスコア化、解析するというもの。演算処理量としては、1万2000台程度のパソコンが参加した場合、4月末までに(2ヵ月半程度で)完了する予定だという。



“ゲノムスーパーパワーを見つけよう!” 解析用クライアントプログラム“BOLERO+”の画面 プロジェクトの概要
“ゲノムスーパーパワーを見つけよう!”解析用クライアントプログラム“BOLERO+”の画面プロジェクトの概要
東亞合成の名古屋研究機構 新製品開発研究所主席研究員・研究主幹で理学博士の吉田徹彦氏
東亞合成の名古屋研究機構 新製品開発研究所主席研究員・研究主幹で理学博士の吉田徹彦氏

東亞合成の“ゲノムのパズルを解こう!”は、ヒトの遺伝子情報をつかさどる“ヒトゲノム”染色体の並びについて規則性の有無を検証するプロジェクト。常染色体22本と性染色体2本(X、Y)について、

  1. 染色体はもともと1本であった
  2. そこに超巨大な周期性が存在していた

という2つの仮説を立てて、1本ずつの研究では説明し得ない染色体をまたいだ規則性を見出そうというもの。プロジェクトのコードネームは“CHRONOS(Chromosomal Nostalgia、染色体の郷愁)”。24本の染色体の順列パターン(24!=約6×1023、約6000垓(ガイ))の順列データごとに、高速フーリエ変換処理を行ない最も周期性の高いパターンを探し出す。これは検索する対象が極端に大量にあるため、終了時期は設定できないとしているが、将来的にはガンや糖尿病など、多くの遺伝子由来の病気治療に役立つと期待されている。

“ゲノムのパズルを解こう!” 解析用クライアントプログラム“Motty”の画面 プロジェクトの概要
“ゲノムのパズルを解こう!”解析用クライアントプログラム“Motty”の画面プロジェクトの概要

NTTデータでは、このような科学研究にとどまらず、一般ユーザーと企業・団体などを結びつけることで、成果報酬を協力者に配分したり、企業からの広告や関連情報をクライアントソフトを通じてユーザーに直接届けるといった、新たなビジネスモデルを構築したいという。

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