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三菱電機、2004年度研究開発成果披露会を開催――ドーム型プロジェクターから紫外線レーザーによる微細加工技術まで

2005年02月16日 15時07分更新

文● 編集部 小西利明

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第2研究棟とは別の棟で行なわれた“UWB方式による高画質動画伝送システム”のデモは、UWB(Ultra Wide Band)方式の無線通信技術を使って、ハイビジョン品質の映像を複数ストリーム同時に無線伝送する技術の展示である。2005年1月に米国ラスベガスで行なわれたInternational CES 2005でも公開された技術だ。

受信システムは、右のパソコンとその下のHDTVデコーダー、パソコンの上に乗った白い円柱状のアンテナなどで構成される。写真では分からないが、1080iの映像クオリティーはさすがに高い 実験の基本構成図。実験ではUWB(MBOA)無線機の部分がパソコンになっている
受信システムは、右のパソコンとその下のHDTVデコーダー、パソコンの上に乗った白い円柱状のアンテナなどで構成される。写真では分からないが、1080iの映像クオリティーはさすがに高い実験の基本構成図。実験ではUWB(MBOA)無線機の部分がパソコンになっている

展示されたシステムは、UWBの推進団体であるMBOA(Multi Band OFDM Alliance)が定めた通信仕様を利用し、3.1GHzから4.8GHzまでの周波数帯を使用して、3チャンネル分のハイビジョン映像(1080i、約20Mbps)を転送する。1チャンネル分が使用する周波数帯は約500~600MHz分なので、これが3チャンネル分で1.7GHzの幅を利用して通信を行なう。送受信機はいずれも通常のパソコンをベースに変調回路やUWBのアンテナをつなげ、受信機側にはさらに映像デコード用の“HDTVデコーダー”が接続されるという仕組みをとっていた。機材自体はいかにも実験レベルのものだが、リモコン操作でメニューを開き、見たい番組を選ぶといった操作も実演され、家庭内での使用シーンをイメージさせる現実味のある興味深い内容であった。

MBOAの規格は10m以内の短距離通信用で、伝送距離は短く遮蔽にも弱い(その分低消費電力)。写真はアンテナを手で隠すと電波が弱まる様子の実演
MBOAの規格は10m以内の短距離通信用で、伝送距離は短く遮蔽にも弱い(その分低消費電力)。写真はアンテナを手で隠すと電波が弱まる様子の実演

光ファイバーで泥棒検知!? 

“光ファイバーセンサー応用セキュリティシステム”と題された展示は、光ファイバーを使った侵入検知システムを研究の実演を行なっていた。“回折格子”と呼ばれる特殊な構造を内部に持った光ファイバーをセンサーとして使い、たとえば侵入者が柵を乗り越えようと体重をかけると重さで光ファイバーがたわみ、光ファイバー内で格子に反射する反射光の波長が変化する。この波長変化を検出して侵入検知センサーとして利用するという仕組みだ。荷重だけでなく、振動や引っ張りも同じ光ファイバーのたわみで検出できる。

“光ファイバーセンサー応用セキュリティシステム”の原理。光ファイバーがたわむと回折格子からの反射光が変化する。その変化量を測定してセンサーに使う
“光ファイバーセンサー応用セキュリティシステム”の原理。光ファイバーがたわむと回折格子からの反射光が変化する。その変化量を測定してセンサーに使う

実用面も考慮されている。たとえば柵上に光ファイバーを引いてしまうと、風や動物の動き(ハトが乗る、猫が上を歩く)で反応してしまう可能性がある。そこで実演されたシステムでは柵の間を金属のワイヤーで結び、ワイヤーの根本部分にセンサー部を設置して、その中にワイヤーとつながった光ファイバーを配置していた。そして軽い振動や荷重なら反応しないが、人間の体重くらいの重さを受けると初めて侵入と判定するように構成している。

光ファイバーセンサー応用セキュリティシステム”の実演機材。ネット部分には振動検知用センサー、白いコの字型パネルの下には荷重センサー、2本のワイヤーの上側には引っ張りセンサーが備わっている
研究の実演機材。ネット部分には振動検知用センサー、白いコの字型パネルの下には荷重センサー、2本のワイヤーの上側には引っ張りセンサーが備わっている

そのほかの展示を抜粋して紹介

非常に内容の多い披露会だったため(実際筆者は時間内にすべてを回れなかった)、とてもすべては紹介しきれないが、その中でも興味深い展示をいくつか、かいつまんで紹介しよう。

“深紫外固体UVレーザー”の展示では、半導体レーザー技術を用いて波長213nmの深紫外域、平均出力6.5Wの紫外線レーザーについての解説が行なわれていた。波長が非常に短い紫外線レーザーは、今後ますます微細化されていく半導体パッケージや回路基盤の製造に利用が期待されている。この研究では、レーザーダイオードから発振した波長1064nmの赤外光レーザーを、大阪大学が開発した波長変換素子(非線形光学結晶)を使って532nm、266nm、213nmへと3段階で波長変換し、最終的に目標とする紫外線レーザーを実現した。またレーザーの集光性を高めて出力を上げるために、従来の3分の1の直径2mmのYAGレーザーロッドを開発、平均出力150Wの赤外線パルスレーザービームの発生を可能にしたという。213nmの紫外線レーザーを使用すれば、10μmもの小さな穴を開けることも可能になり、シリコンウェハー上への直接加工も可能になるとしている。

“深紫外固体UVレーザー”の展示。右が赤外線レーザーを3段階で波長変換して、213nmの紫外線レーザーを取り出す変換部

“マルチヒット画像検索技術”と題した研究では、キーとなる画像を元に、他の画像内にマッチする要素があるかを検索する技術の説明が行なわれた。検索キー画像(複数指定可)から識別の特徴となる部分を解析し、検索対象の画像内に、マッチする部分があるかどうかを検索する。次元圧縮、識別領域の限定、複数の類似度による判定などを組み合わせることで、実験では従来方式では67%の検出率だったところを、95%まで向上させているという。またPentium 4-3GHz程度のパソコンでも、2000×2000ドットの画像を検索するのに0.2秒という高速な処理を行なえる。展示では衛星写真から地上の物体を識別するデモで説明が行なわれたが、たとえば群衆の写真の中から指名手配中の人物を探し出すといった、監視カメラ用途などにも利用できる技術である。

“マルチヒット画像検索技術”の解説図。実験では翼の一部が隠れて見えない機体以外のすべての飛行機を写真から識別したという
“マルチヒット画像検索技術”の解説図。実験では翼の一部が隠れて見えない機体以外のすべての飛行機を写真から識別したという

“次世代設備ネットワークシステム”という展示では、なんと建物内のエアコン用金属配管を使ってデータ通信を行なう研究が披露された。実際に同社研究所の配管を使って行なった実験では、2~10MHzの周波数帯に5本のキャリア周波数を使う“マルチキャリア方式”を使って、1キャリアあたり80kbps、合計400kbpsのデータ通信を実現したというから驚きだ。単に配管を電線代わりにするのではなく、室内機と室外機を結ぶ絶縁された2本の冷媒配管を使い、2本を平行電線として利用しているという。高速データ通信用ではなく、家屋やビル内の空調設備の制御や機器とリモコン間の通信を想定した技術とのことだ。

室外機につながる2本の配管に通信用配線をつなげた展示機と、実際に研究所の空調で実験を行なっている様子
互いに絶縁された2本の配管を使うのがポイント。管同士が電気的につながっていては駄目なのだそうだ
互いに絶縁された2本の配管を使うのがポイント。管同士が電気的につながっていては駄目なのだそうだ

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