非営利団体の“EC研究会”と“デジタルコンテンツ産業研究会”は21日、会員/非会員向けのセミナー“第90回・EC研/デジ研合同フォーラム”を都内で開催した。同フォーラムは毎回、インターネットを利用した流通業やデジタルコンテンツの製作/販売業などに携わるキーパーソンを講師として招き、各事業の現状や将来の展望などが紹介される。EC研/デジ研合同フォーラムは、1~2ヵ月に一度のペースで開催され、参加費は6000円(非会員、当日支払の場合)。
EC研究会/デジタルコンテンツ産業研究会代表の土屋憲太郎氏 |
第90回の講演者は、インターネットオークション“Yahoo! オークション”のサービス企画責任者であるヤフー(株)オークション事業部 企画室 室長の八代峰樹(やしろ みねき)氏、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)“mixi(ミクシー)”を立ち上げた(株)イー・マーキュリー 代表取締役の笠原健治氏など4人。ここでは八代氏と笠原氏の講演を取り上げる。
日本最大のインターネット有料会員基盤
ヤフー オークション事業部 企画室 室長の八代峰樹氏 |
インターネット総合サイト“Yahoo! Japan”は、2004年10月20日に1日10億ページビューを突破。2004年12月の時点で、月間ページビューは226億5800万、アクティブユーザーID数は1231万、“プレミアム会員”数は482万となっている。プレミアム会員とは、Yahoo! オークションの出品/入札などの会員向けサービスを利用できる有料の会員制度(会費は月額294円)。八代氏は、482万人のプレミアム会員を指して、「人口356万人(2004年11月)の横浜市よりも多く、しかも(20歳以上を対象としているので)すべて成人」と、日本最大のインターネット有料会員基盤から、「安定的かつ継続的」な収入があることをアピールした。
Yahoo! オークションの取扱高、出品数は以下のとおり(2004年12月)。事業規模は、「2004年1月~12月までの取扱高は5700億円を突破した。だいたい“伊勢丹”の売上が5720億円程度なので、デパートの売上を凌駕するくらいの取り扱いが、Yahoo! オークションだけである」という。
- 平均総出品数
- 約707万件
- 1日平均新規出品数
- 約57万5000件
- 月間総取扱高(キャンセル等発生前の数字)
- 約580億円
- 1件あたり平均落札額
- 6373円
- 1日当たり平均落札率
- 39%
- ユニークブラウザー数
- 約1891万
- 月末のストアー数
- 3312店舗
Yahoo! オークションの出品/入札カテゴリーのうち、現在人気が高いのは、「売上高でいうと、“ファッション”と“自動車/オートバイ”のカテゴリーがほぼ同じくらい」で、それぞれ月間総取扱高のうちの2~3割を占めているという。男女の構成比率は、Yahoo! JAPAN全体では男性65.1%/女性34.9%だが、Yahoo! オークションはそれよりも女性の構成比率が高いと説明した。
Yahoo! Japanの収益源別売上構成。詳細については触れられなかったが、2000年以降はYahoo! オークションを中心とした“パーソナルサービス”の売上が飛躍的に伸びている | Yahoo! オークションの事業データ。出品数/月間落札金額とも、月間落札金額が若干減少した2004年の夏を除き、右肩上がりで成長している |
Yahoo! オークションのアキレス腱?
八代氏はオークション事業の新規参入について、「システムを提供するだけで、在庫を持たなくていいし、基本的に取引にも関与しなくていい。システムそのものも単純」なので始めやすいが、その後の“ケア”が想像以上に厳しいという。「Yahoo! オークションのシステムだけで5000~6000台のサーバーが動いている。当然、ブロードバンドが浸透すればするほど、回線の費用もかさむ」。また、システムを悪用するユーザーも出てくるので不正利用のための対策が必要で、不正利用の監視/取締まりのために「億単位の費用を使っている」という。
こうしたことから、たとえ巨額の資金を投入して新規参入するライバル企業が出現しても、「(ノウハウがない企業は)トラブルや課題を解決するのが非常に大変なので、一時集めても、すぐにだめになってしまうのでは」と分析する。しかし米eBay(イーベイ)社に関しては、「ワールドワイドでオークション事業を手掛けている会社なので、脅威とみている」とした。ebayとの競争に勝っている日本と台湾のYahoo! オークション事業部は、研究活動やマーケティング活動など常時シェアしているという。
Yahoo! Japanと、国内の競合サービスの規模の比較(出展:ビデオリサーチ 2004年9月) | Yahoo! オークションと、国内の競合サービスの規模の比較(出展:ビデオリサーチ 2004年9月) | |
「物が集まるところに人が集まるし、人が集まるところに物が集まるし、そのようにしてスパイラル的な効果が形成される」 |
Yahoo! オークションの将来の目標は、「人々のあらゆる生活に対して貢献できるような“ライフ エンジン”」となることだという。八代氏は、今後のビジネス拡大のための戦略として、
- ユーザー数の拡大
- サイトの拡大/機能の充実
- ブランド力の強化
- 商品カテゴリーの充実
――という4つのポイントを挙げた。現状をみると、ユーザー数の拡大に関連して、携帯電話3キャリアーのインターネット接続サービスのうち、公式メニューリストに掲載されているのは(株)KDDIの“EZweb”のみと顧客獲得の機会を逃しており、八代氏は携帯電話向けサービスを「(Yahoo! オークション事業の)アキレス腱」としている。(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモとボーダフォン(株)については、公式メニューリストの掲載基準とYahoo! オークションのビジネスモデルが折り合わず、交渉継続中という。
講演では、携帯電話向けサービス、ブランド力の強化のための施策として、ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)と提携したオークション事業を今春に開始する予定であることが明らかにされた。ヤフーとウォルト・ディズニー・ジャパンは携帯電話向け有料コンテンツサービスの共同展開で合意している。オークション事業では、ディズニーに関する珍しい出品を充実させるだけでなく、実現するかどうかは未定だがディズニー映画の声優として登場する権利を出品するという案も出ているという。