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ソフトバンクBB、NTTの光ファイバー開放義務撤廃に対する反論説明会を開催──開放撤廃では日本のブロードバンドが逆噴射する!!

2004年12月21日 22時54分更新

文● 編集部 新海宏一郎

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ソフトバンクBB(株)は21日、都内・霞ヶ関の霞ヶ関ビルにおいて、“ブロードバンドサービスの公正な競争環境の実現に向けて~NTT東日本/西日本光ファイバ解放義務の必要性について~”と題した記者説明会を開催した。説明会には同社代表取締役社長の孫 正義(そんまさよし)氏が登壇した。

代表取締役社長の孫 正義氏
代表取締役社長の孫 正義氏
説明会冒頭孫氏は、今回の記者説明会について「日本電信電話(株)(以下、NTT)の和田社長を中心にNTTの光ファイバーの開放義務を撤廃してほしいと、最近さまざまな場所で公言されていることに対して、正式に反論したい」と、今回の趣旨を説明した。光ファイバーの開放義務とは、2000年12月に電気通信審議会がNTTなどが保持している光ファイバーに対して以下の理由で、2001年4月に電気通信事業法施行規則を改正し、開放を義務づけたもの。

  • 需要が顕在化していること
  • その中で、接続の請求への拒否が行なわれるなど円滑な接続が実現していないこと
  • これにより、今後高速サービスの提供のための基幹的な位置付けを持つ、不可欠設備である光ファイバー設備が適正な条件で提供されない状況が生じている

これに対してNTTは、

1 ボトルネック性、規制の対称性
・設備ベースの競争が存在し、東日本電信電話(株)と西日本電信電話(株)(NTT東日本/西日本)の光ファイバーには“ボトルネック性”はない
・NTT東日本/西日本だけ開放義務が課されることは競争中立的でない
2 投資インセンティブ・リスク負担
・設備開放義務は、投資インセンティブに対し、マイナス
・投資リスクに対するフェアなリターンが必要
3 提供価格の問題
・現在の提供価格は採算割れ
・公定価格ではなく、相対契約で価格を決めるべき
4 米国におけるルールの変更
・米国では、ブロードバンド普及に向けて、投資を促進する観点からFCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)が地域通信の規制を見直した

と、NTT東日本/西日本の光ファイバーを指定電気通信設備から外すよう主張してる。

これに対して孫氏は、「日本のブロードバンドが他国のブロードバンドに対して、圧倒的なスピードと低価格を実現できたのは、競争政策や開放政策といった政府の方針によるもの。これから光ファイバーの時代が来るのに、世界に自慢できる日本のブロードバンドが逆噴射してNTT独占に戻ると、光ファイバーの料金は高止まりしてしまい、ユーザーの選択権も少なくなってしまう」と、主張し以下の考えで反論した。

NTTの主張1
・NTT以外にも提供事業者が存在し、設備のボトルネック性はない
・管路/電柱は解放しており、他の事業者も公平に利用が可能
1に対するソフトバンクBB社の考え
・旧電電公社の電電債、施設設置負担金などの国民負担によって築いた設備を利用することで、有利に光ファイバーの敷設が可能
・民営化後も独占状態にある電話基本料金などの収益を基礎として、光ファイバーの敷設を行なっている
・NTT東日本/西日本のシェアは65.7%もある
・一般事業者は現状、NTTと比べて利用条件、手続き面で不公平
・電柱利用の場合は、特に不公平
─NTTの管路/電柱は、NTTの利用計画が優先され、空きがある場合のみ利用可
─電力会社の電柱の添架ポジション(電力保安通信線は除く)の多くをNTTが占有
・電柱利用に関する手続きは電柱1本単位で申請書を作成する必要があり、手続き面で不公平である
NTTの主張2
・投資インセンティブが必要
・他社が投資リスクを負担せずに利用できるのはおかしい
2に対するソフトバンクBB社の考え
・光ファイバーは敷設設備は今後収益が見込まれる事業。NTTが投資インセンティブが働かないというなら、光ファイバー整備会社の設置も必要
・総務省は、予測需要等が大幅に乖離した場合に光ファイバーの接続料(賃貸料)の見直しを行なうとしており、そもそも投資リスクはない
・NTTグループの営業利益は1兆5000億円であり、他事業者が自前敷設するよりもはるかに投資体力が大きい
NTTの主張3
・現在の提供価格は採算割れ
・公定価格ではなく、相対契約で価格を決めるべき
3に対するソフトバンクBB社の考え
・現在の提供価格は7年間の平均コスト(利潤含む)であり、途中までは原価が価格を上回るのは当然
・NTTの中間経常戦略で公表された3000万ユーザーへの光ファイバー引き込みを行なえば、さらにコストは安くなるはず
・光ファイバーはメタル線に比べてはるかに劣化が少ないなど、維持費用が安く、光ファイバーの敷設自体がNTTの経営効率化につながる(メタル線の耐用年数は20年から25年と言われている)
・不可欠設備を独占的に保有するNTTと対等な価格交渉は不可能
NTTの主張4
・米国ではFTTHの開放義務が解除された。日本でも見直すべき
4に対するソフトバンクBB社の考え
・米国では、ブロードバンドの主役はCATV(シェア60%)で、設備競争が進んでいる
・米国の90%の家庭には、既にCATVブロードバンド回線が引き込まれている

管路/電線の開放状況を示すスライド 共架柱の開放状況を示すスライド
管路/電線の開放状況共架柱の開放状況
光ファイバーの貸出し料金と原価の関係を示すスライド 米国におけるルールの変更を示すスライド
光ファイバーの貸出し料金と原価の関係米国におけるルールの変更

最後に同氏は、「NTT東日本/西日本の光ファイバーは不可欠設備であり、投資インセンティブを確保しながら、開放義務は維持可能」と、光ファイバー開放義務の必要性を主張した。

また、発表会後の質疑応答で、開放義務撤廃について「開放義務を永遠に課すというわけではなく、NTT以外の事業者がNTTと同じ状態で光ファイバーを利用できるようになり、公平に競争できる状態になった場合、その時点で考えることは可能」とコメント。ただし、実際に開放義務を撤廃する議論を始めるには、「NTT再編論議をやり直すことも必要。NTT東日本/西日本どちらも同じ“フレッツ”のブランドを使用しており、役員が入れ替わっているだけのような見せかけの分割ではなく、真の分割という根本論議と一緒で考えるなら議論の余地はある」と強調した。

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