ミラクル・リナックス、64bit版x86 CPUに対応する『MIRACLE LINUX V3.0』を発表――64bit OS化により同一ハードウェアでのパフォーマンスを大幅に向上
2004年12月16日 21時00分更新
64bit OS市場への参入について語るミラクル・リナックス代表取締役社長の佐藤武氏 |
ミラクル・リナックス(株)は16日、インテルXeonプロセッサーの64bit拡張技術“EM64T”や、AMDの64bit拡張技術“AMD64”に対応するLinux OS『MIRACLE LINUX V3.0 -Asianux Inside for x86-64』(以下MIRACLE LINUX V3.0)を、来年2月28日に出荷すると発表した。価格は6万3000円。同社はサーバー向けLinux OSの販売とサポートを手がけるかたわら、中国のRed Flag Software社、韓国Haansoft社と協同して、アジア市場標準のエンタープライズLinuxディストリビューションの構築を目指して“Asianux(アジアナックス)”の開発も行なっている。
まず同社の製品開発の理念について、同社代表取締役社長の佐藤武氏は、OS開発のベースを北京で開発されているAsianux 1.0にすえて開発を行なっているほか、エンタープライズ向けとしての安定性と信頼性、性能の向上をキーとしていると語った。また文字コードのシフトJISコードや外字のサポートなど、日本やアジア各国で必要なマルチバイト対応、管理機能の強化と操作性の向上などにも力点を置いているとした。そのうえで64bit OS市場への製品投入について、既存Linuxシステムのスケールアップだけでなく、64bit UNIXからの移行を加速し、インターネットデータセンターや金融機関、官公庁などをターゲット市場として狙っていく。
MIRACLE LINUX V3.0の狙う用途と市場。ちなみに価格の6万3000円は、32bit CPU向けの『MIRACLE LINUX Standard Edition V2.1』と同価格である | Asianuxの開発と提供の仕組み。3社による共同作業で開発が行なわれ、それぞれの国ごとに3社独自のブランド名で製品化する |
EM64T/AMD64対応のメリットについて、同社コアテクノロジー部 部長の伊藤達雄氏は、既存のx86 CPU向け32bitアプリケーションが、64bit OS上でも32bit OSと同等のパフォーマンスで動作する利点を持ちながら、64bit化によるメモリー空間の拡大(32bit CPUの4GBから物理アドレスで1TBまで)により、広大なメモリー空間を扱える点を挙げた。特に現在のサーバーシステムは物理的には4GBを超えるメモリーを搭載できるのに、CPUとOSの限界で有効に活用できない例を挙げて、物理メモリ32GBのデータベースシステムの場合、32bit OSではバッファーキャッシュを2GB分しか確保できないのに対して、同一ハードでOSを64bit版に入れ替えるだけで、バッファーキャッシュが8倍の16GBも確保でき、物理メモリーをフル活用できると述べた。例として示された性能測定結果では、同一マシン上で32bit OSと64bit OSを動作させてデータベースアクセスの処理時間を測定した場合、64bit OSの使用で約40%もの速度向上が確認されたという。
64bitの利点について説明する同社コアテクノロジー部 部長の伊藤達雄氏 |
データベースシステムでの64bitのメリット。同じハードウェアと同価格のOSを使いながら、64bit化でハードウェア本来の能力が引き出せる | 同社での性能測定結果。3GBのデータベースの処理時間が半分近くに短縮されている |
また伊藤氏はMIRACLE LINUX V3.0と米レッドハット社のRed Hat Linuxの64bit版を比較して、32bitアプリケーションの動作保証がある点や、外字対応、対応ファイルシステムの豊富さなどの利点を示し、高機能さをアピールした。
同社によるMIRACLE LINUX V3.0とRed Hat Linuxの機能比較 |
MIRACLE LINUX V3.0の投入の前に、サポートサービスも拡充される。同社のサポートは、製品と特定サポートサービスが強制されたセットではなく、ユーザーが望むサポートレベルを選択できる。同社プロフェッショナルサービス部 部長の小田切耕司氏はその例として、Linuxに不慣れなユーザーは年間契約の有料サポートを利用し、ある程度習熟して自前での対応が行なえるユーザーなら、有料サポートは受けないという選択も可能であるとした。また同社のサポートサービスの特徴として、システムが停止した場合のOSカーネルダンプ(障害発生時のメモリー内容を出力したデータ)の内容解析も有償で手がけるなど、高い技術力を背景にしたサポートを行なっていることを示した。
さらに来年1月からはサポートメニューを拡張し、製品出荷日から6年間としていたサポート期間を7年間に延長するほか、サポートにレベルを設定して、ユーザーに適したサポート内容/金額を選びやすくなっている。またダンプ解析や緊急パッチ提供を含む年間契約の“エンタープライズ・サポート”が加わるほか、有償で1回限りのサポートを提供する“1ショットサポート”や、24時間対応を行なう“24時間サポート”も、年間サービスとは別に追加される。追加されるサポートはMIRACLE LINUX V3.0に限らず、V1.0/1.1などの旧バージョンでも利用可能だ。
同社ではこれらのサポートサービス拡充により、サポートでの売り上げを前年度比で50%増を目指すとしている。
同社のサポートバリエーションの概念図。Linuxに不慣れなユーザー、習熟したユーザー、エンタープライズ規模のサポートを求めるユーザーなど、環境に合わせて製品とサポートサービスを組み合わせられる |