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サン・マイクロシステムズ、セキュリティー強化やファイルシステムの一新を行なったSPARC/x86CPU向けOS『Solaris 10』を発表

2004年11月30日 22時48分更新

文● 編集部 内田泰仁

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サン・マイクロシステムズ(株)は30日、同社独自のオペレーティング・システム“Solaris(ソラリス)”シリーズの最新バージョン『Solaris 10 オペレーティングシステム』(以下Solaris 10)を発表した。ライセンス料は、商用/研究開発などの用途にかかわらず無償(4CPUまで)。2005年1月31日からダウンロード提供を開始し、メディアキット販売(有償)は2005年2月の予定。

『Solaris 10 オペレーティングシステム』の製品ロゴSolaris 10開発における8つのステートメント

Solaris 10は、SPARCや32bitおよび64bit(AMD64/EM64Tサポート)のx86系CPUをベースにした270種類以上のハードウェアで動作するマルチベンダー対応OS。同社によると、前バージョンに対し600以上の新機能を搭載したという。代表的な新機能は以下のとおり。

アプリケーション実行性能の向上
ネットワーク機能を中心にパフォーマンスの改善を図り、Solaris 9に比べて大幅な性能向上を果たす。特に、従来バージョンのSolaris向けに作られたアプリケーションについては、コード変更や再コンパイルをしなくても、実行速度が向上。
“ダイナミックトレース(Dtrace)”
システム性能低下の原因を発見しやすくする新機能。Solaris 10のカーネル内には約4万の“トレース対象検査ポイント”が埋め込まれており、このデータを動的に取得・解析することにより、ボトルネックの所在を自動的に発見していく。運用中のシステムでの性能改善に特に有効で、一般的に数日から数週間かかっていたボトルネック改善を数分から数時間で解決することが可能だという。
セキュリティー環境の強化
米国国防総省や北大西洋条約機構(NATO)などの基幹システムに採用されているセキュリティー強化版Solaris“Trusted Solaris”のセキュリティー機能の取り込みをSolaris 10でも継続的に実施。Solaris 10での新機能としては、最大の権限を持つ“root”ユーザー権限を必要に応じたアクセス権限に分割/運用し、個別の“実行プロセス”に対する権限を制限、システム停止やデータ破壊につながる越権活動を制御する“プロセス権限管理(Process Rights Management)”が追加されている。
“予測的セルフヒーリング(Predictive Self Healing)”
システムの自己修復機能。システム状態の監視、情報収集による問題の検出/解析/切り離し/プロセス再起動など、従来は管理者によって手動で対応していた運用/管理/問題修復の各作業を、システム自身が自動対応するというもの。ミリ秒単位での自己診断と細かな復旧単位が特徴で、障害発生の防止や管理者が不在となる夜間や休日における連続運用の稼働率向上に貢献。
Linuxアプリケーション環境
開発コード名“Project Janus”と呼ばれていた、AMD64およびEM64Tベースのハードウェアにおいて、LinuxアプリケーションをネイティブLinux環境と同等ないしはそれ以上の性能で実行する機能。いわゆる“仮想マシン”的なアプローチではなく、Linux環境を直にSolaris 10のカーネルに実装することにより、Linuxアプリケーション側には一切変更を加えることなく実行可能だという(今後のアップデートにより追加実装予定)。
“Solarisコンテナ”
ソフトウェア・パーティショニング(論理区画)によってOSの仮想化を行なう機能。資源/セキュリティー/障害面において完全に独立した複数の独立した仮想環境を1システム上に複数(8000以上)構築可能で、システムの持つCPUやメモリーなどの資源を効率よく運用できるようになるとしている。同社によると、システム利用率は一般的には15%程度にとどまっているというが、Solarisコンテナの利用により、これを60~80%まで引き上げ、投資効率を4倍程度まで向上できるという。
“Solaris ZFS”
128bitアドレッシングを採用した新設計のファイルシステム。ZFSは“Zetta Bytes File System”の略。従来の約1600京倍までの大容量データに対応する次世代ファイルシステムで、高性能/高速データアクセス、ブロック単位の入出力における厳密な検証機能やデータの自己修復機能による“99.99999999999999999%の信頼性”を持つという(今後のアップデートにより追加実装予定)。
『Sun Java Desktop System』標準搭載
統合デスクトップ環境として、従来Linux上でのみで利用できた『Sun Java Desktop System』を標準搭載。また、オフィスアプリケーション『StarSuiteオフィスツール』、ウェブブラウザー『Mozillaブラウザ』、メーラー/スケジューラー『Evolutionメール・カレンダクライアント』などを利用できるライセンスが付属する。

アプリケーション実行性能の向上率(対Solaris 9比)“ダイナミックトレース(Dtrace)”によるボトルネック解消時間の短縮を示すグラフ

製品の価格体系は、1~4CPUシステムでの使用の場合、用途にかかわらずライセンス料は無償(5CPU以上のシステムについては現在検討中)。サポートサービスは、定額制のサブスクリプションモデルが取られ、システム構成や用途に応じたサポート内容によって、“ベーシック・サービス”“スタンダード・サービス”“プレミアム・サービス”の3種類のサポートサービスが用意される。サービス料金は、導入するシステムに搭載されるCPUあたりの年額制で、標準価格は、“ベーシック・サービスが”1万4400円、“スタンダード・サービス”が2万8800円、プレミアム・サービスが4万3200円の予定(価格はいずれも税別)。

代表取締役社長のダン・ミラー氏

同日に行なわれた記者発表会では、同社代表取締役社長のダン・ミラー(Dan Miller)氏と専務取締役で営業統括本部長の末次朝彦(すえつぐともひこ)氏がSolaris 10の概要を、プロダクト・マーケティング本部本部長の纐纈昌嗣(こうけつまさつぐ)氏が新機能の詳細を解説。冒頭に登壇したミラー氏は、Solaris 10の開発は、技術革新とコミュニティーを重視し、創業当時からの一貫した理念に基づき行なわれ、「セキュリティー、スケーラビリティーの面において、地球上最高のOS」だと述べた。また、Solaris 10では、年間3000人の開発リソースと5億ドル(約510億円)の研究開発費の投入しており、オープンソースソフトウェアで近年問題になっている知的所有権訴訟問題への十分な対応や、競合するWindowsおよびRed Hat Linuxと対抗しうる能力/性能の装備も図られているとしている。また、現在のところ詳細は決まっていないものの、将来的にはオープンソース化していくという。

専務取締役営業統括本部長の末次朝彦氏コンピューティングに求められるものの時代による変遷。現在は“公共性”“偏在性”が求められる“ユーティリティーコンピューティング”の時代に入ってきているという

続いて登壇した末次氏は、新製品について「インダストリーをリセットする新しいOS」と表現。この理由としては、

  • 業界の製品トレンドがソフトウェアからサービスへと移行しているように、Solaris 10では従来型のライセンス課金モデルからサービスに対するサブスクリプションモデルへと移行
  • コンピューティングに求められるものが、コンピューターの黎明期に見られた“カスタマイズ”、近年進展した“標準化”から、“公共性”“偏在性”が重視される“ユーティリティーコンピューティングモデル”の時代に突入し、Solaris 10はこのモデルに対応

といった点を挙げた。

ミラー氏、末次氏に続いて、新機能の解説を行なったプロダクト・マーケティング本部本部長の纐纈昌嗣氏纐纈氏が示した競合製品との機能比較。同氏はx86プラットフォームをサポートしないAIXとHP-UXについては「チェックメイト(=チェスの“詰み”、つまりゲームの終了を示す)」と表現

会の最後に行なわれた質疑応答では、各氏のプレゼンテーションでたびたび比較対象としてLinuxが取り上げられたことについて、従来以上にLinuxを対抗製品として意識しているのかという質問が出された。これについてミラー氏は、「我々はLinuxの“コミュニティー”は擁護している」と述べ、Linuxコミュニティーとの協力/協調体制をアピールしつつも、「Red Hatなどの“製品”とはエンタープライズ市場では競合するだろう」と述べた。また、エンタープライズのバックエンドシステム市場においては、SolarisがLinuxに対して製品として優位に立っているため両者が競合するとは考えておらず、フロントエンド環境での競合が中心との考えを示した。

また、『Sun Java Desktop System』がSolaris上で利用できるようになったことに関連し、Linuxベースのデスクトップ環境製品としての『Sun Java Desktop System』は今後どうなっていくのか、という質問に対しては末次氏が答え、同氏は、同社によるデスクトップ環境は、Linuxアプリケーションが問題なく動作し、同社が従来から展開している『Sun Java Desktop System』も使用できるようになったことから、今後はSolarisをベースとしたシステムが主力になっていくとの見込みを示した。ただし、OSの選択については顧客の要求も考慮する必要があることから、Linuxベースの路線も継続していくとしている。末次氏によると、サンが考えるフロントエンドのデスクトップ環境の最終形は「(フロントエンドの端末に)OSのない環境」だと述べ、その手法がシン・クライアント“Sun Ray Ultra-Thin Clients”の考え方だとした。

このほか、サポートCPUとして、POWER5やItaniumシリーズを追加する可能性があるのか、という質問に対して末次氏は、「市場からの要求があるものに関してはサポートを検討していく」とは述べたが、「x86およびSPARC以外のCPUは(将来的には)消えていくと思う」ともコメントしている。

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