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ヤマハ、壁面の反射を利用した1ボディーの薄型サラウンドシステム『デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1』を12月に発売

2004年11月16日 21時29分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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世界市場で最も売れ行きがいいという37インチクラスのプラズマディスプレーTVと組み合わせた『デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1』

ヤマハ(株)は16日、東京・丸の内の三菱ビル内コンファレンススクエア エムプラスで記者説明会を開催し、薄型大画面TV時代に向けた新たなサラウンドシステムとして、英1 Ltd.と共同開発した1ボディーの薄型サラウンドシステム『デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1』を12月上旬に発売すると発表した。価格は15万7500円。

発表会には、常務取締役の前嶋邦啓(まえじまくにひろ)氏、1 Ltd.のプレジデント兼チーフサイエンティストのDr.トニー・フーリー(Tony Hooly)氏らが出席し、共同開発の趣旨やホームAVシアター機器への取り組み、1 Ltd.の独自技術である“デジタル・サウンド・プロジェクター”の詳細などを説明した。



前嶋邦啓氏 トニー・フーリー氏
前嶋邦啓氏トニー・フーリー氏

最初に挨拶に立った前島氏は、「音・音楽を原点に、新たな感動とユタ漢文化を作り続けるというヤマハの企業理念に合った新製品である。ヤマハ全体の売上に対して、AV・IT事業は14%、368億円のビジネスであり、きちんと収益を上げている。このAV・IT事業の柱となるホームシアターを今後どのように進化させていくかというひとつの回答となる製品だ」と、新製品に大きな期待をかけていることを語った。

YSP-1のターゲット顧客
既存の5.1chサラウンドシステムやバーチャルサラウンドと異なり、YSP-1はターゲット顧客を薄型大画面TVユーザーに絞った販売戦略をとると説明

また、両社の役割については

ヤマハ
デジタルオーディオ技術/音響設計/音場創生/LSI開発
1 Ltd.
サウンドビーム制御技術/ソフトウェア開発/ASIC設計・開発

と位置づけ、それぞれ培った固有の技術や得意とする分野/技術を持ち寄って開発したことを明らかにした。

1つの音源から出る音の広がり 複数の波長の干渉 指向性の強いビームを形成
1つの音源から出る音の広がり複数の波長の干渉複数の音源を直線状に並べることで、指向性の強いビームを形成できる
並べた音源に遅延をかけてビームの方向を制御 複数のビームを同時制御する技術を開発 ビームの方向を制御して壁の反射を利用して1ボディーでの5.1chサラウンドを実現
並べた音源に遅延をかけることで、ビームの方向を制御できる複数のビームを同時制御する技術を開発ビームの方向を制御して壁の反射を利用することで、1ボディーでの5.1chサラウンドを実現
サウンドビームの原理の説明

続いて、フーリー氏がデジタル・サラウンド・プロジェクターについて説明した。フーリー氏は最初に、

  1. 人は音の方向性を聞き分けるのには、左右の耳に到達する時間差、聴こえる音のレベル差、肩や頭、耳たぶなどの影響による周波数変化など複合的な要因がある
  2. 従来のバーチャルサラウンド技術(2スピーカーでサラウンド音響を擬似再生する技術)は、これらをあらかじめ計算して音を発生させるため、条件が満たされればサラウンド感が得られるものの、リスナーが頭の位置を変えるなど、条件が変わるとサラウンド感がなくなってしまうという欠点がある。いわば、錯覚を利用した技術である
  3. デジタル・サラウンド・プロジェクターは、本来の方向(5方向)から音が聞こえてくるため、リスナーが移動しても正しい(5つのスピーカーを配置した状態と同じ)サラウンド音響が実現できる

と述べ、従来のバーチャルサラウンド技術との違いを強調した。デジタル・サラウンド・プロジェクターの格となる“サウンドビーム”技術については、

  • 音源が複数存在すると相互に干渉し、波を強める“正の干渉”もしくは打ち消しあう“負の波長”が生まれる
  • 音源を一定間隔で一列に並べると、正の干渉が重なり、指向性と持ったより強い波形(サウンドビーム)が発生する
  • 一列に並べた音源を一定間隔で遅延して発音させることで、ビームの方向を指示(コントロール)できる
  • このサウンドビームは、壁などを使って反射させることにより、経路をコントロールできる

と、その原理を説明した。デジタル・サウンド・プロジェクター YSP-1では、40個のビーム発生用小型スピーカー(4cm径コーン型、出力2W)を3列の直線状に、2個のバスウーファー(11cm径コーン型、出力20W)を左右両端に配置して、5.1chサラウンド環境を実現するという。サイズは幅1030×奥行き113×高さ195mmで重さ13kgと、1m超のワイドサイズながら奥行きを11.3cmに抑えており、TVラックや壁掛けにも容易に設置できる。オプションで専用TVラック『YLC-SP1』(2005年1月発売予定)、専用壁掛け金具『SPM-K1』(2005年2月発売予定)も用意するとのこと。

あらかじめ、部屋の広さや配置に合わせて、

標準設定1
6~16畳の部屋で、壁の中心に置く
標準設定2
6~16畳の部屋で、部屋のコーナーに置く
標準設定3
横長12畳を超える部屋で、壁の中心に置く

という3つのプリセットを用意しているほか、マニュアルでフロント左右/リア左右のビームの出力や方向を調整可能。また、壁面の材質や部屋の形状によって、サウンドビームが反射できない場合や、入力音源によってはステレオサウンド(もしくは前方とフロント左右の3方向)でのみ聞きたい場合に合わせて、3ビームモード/ステレオモード/ステレオ+3ビームモードを用意するほか、同社製アンプなどと同様、ダイナミックレンジを狭めて低音/高音を抑えることで深夜の視聴時に音漏れを低減するという“ナイトリスニングモード”を備える。

5ビームの再生モード 3種類の再生モードを搭載
5ビームの再生モードステレオ+3ビーム、ステレオ、3ビームの3種類の再生モードを搭載

入力可能な音源は、アナログ(ステレオ)/デジタル(Dolby Digital/DTS/AAC、いずれも5.1ch対応)で、ステレオ入力音声を仮想5.1chサラウンドに変換して再生する“Dolby ProLogic II(ドルビープロロジックツー)”機能も備える。入力端子はアナログ(ステレオ2系統)/デジタル(光2系統、同軸1系統)、およびコントロール用シリアル、など。

壁にかけた薄型大画面TVとほぼ同等の奥行き11cm YSP-1の内部にある40個の小型スピーカー
奥行き11cmは、壁にかけた薄型大画面TVとほぼ同等YSP-1の内部にある、40個の小型スピーカーがサウンドビームを生成する

同社では単体販売のほか、薄型TVメーカーへの組み込み事業/OEM供給なども手がける予定で、2007年までに100億円規模の売上を見込むとしている。

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