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日本経営協会、“電子自治体フェアTOKYO2004”を開催――セキュリティー関連のソリューションが注目を集める

2004年11月16日 22時40分更新

文● 編集部 小西利明

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記念講演にて“u-Japan”構想について解説する総務省 自治行政局 地域情報政策室 電子自治体推進係長の梶 護氏
記念講演にて“u-Japan”構想について解説する総務省 自治行政局 地域情報政策室 電子自治体推進係長の梶 護氏

(社)日本経営協会は16日より17日まで、池袋サンシャインシティ文化会館にて“電子自治体フェアTOKYO2004”を開催、行政サービス向けソリューションを手がけるIT企業による展示や、関連講演を行なっている。16日の記念講演では総務省 自治行政局 地域情報政策室 電子自治体推進係長の梶 護(かじ まもる)氏により、“電子自治体の動向と推進について”と題した講演が行なわれ、“e-Japan戦略”の成果を踏まえた“u-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)構想”が解説された。

記念講演ではまず、2004年度の“e-Japan重点計画―2004”の概要について、“加速5分野”として定義された以下の5つの施策ごとに説明が行なわれた。

     
  • アジア等IT分野の国際戦略
  •  
  • セキュリティー政策の強化
  •  
  • コンテンツ政策の推進
  •  
  • IT規制改革の推進
  •  
  • 電子政府・電子自治体の推進

この中でも重点を置いて解説されたのが、やはりセキュリティー政策である。企業や自治体での個人情報の漏洩事件が連日のように報道されている現状について、梶氏は「ニュースになるような件以外も多い。思われている以上に漏洩は頻繁に起こっている」と強く警鐘を鳴らした。また漏洩自体が与える直接的なダメージだけでなく、漏洩によって電子自治体の取り組み自体が信頼を失い、結果として多額の投資が無駄になる可能性についても言及。セキュリティー対策への真剣な取り組みをうながした。

続いて、2005年度以降の総務省の重点施策の1つとして発表された、u-Japan構想の概要についての解説がなされた。e-Japan重点計画は2004年度にて終了となるが、これによってほぼ達成されたITインフラを活用し、2010年を目標にIT技術で社会の課題の解決を目指すのがu-Japan構想の狙いである。その基本理念について梶氏は、以下の4つのUを挙げた。

ユビキタス(Ubiquitous)
いつでも、どこでも、何でも、誰でもネットワークに簡単につながる。人対人だけでなく、人対物というコミュニケーションも。
ユニバーサル(Universal)
機器やネットワークを意識せず、高齢者や障害者でも簡単に利用できる。
ユーザー(User-oriented)
利用者の利便性を強く意識した社会の構築。そのためのサービス、技術の開発。
ユニーク(Unique)
個人の活力を生み出す社会システム、ビジネスの創出。創意工夫による地域再生。
u-Japanの基本理念。ユビキタスネットワーク技術を軸に、新しいコミュニケーションやサービスの構築を促進する u-Japan構想の目指すユビキタス社会のイメージ。ICタグの活用や高速ワイヤレス通信、お年寄りでも使いやすい機器などが例として挙げられている
u-Japanの基本理念。ユビキタスネットワーク技術を軸に、新しいコミュニケーションやサービスの構築を促進するu-Japan構想の目指すユビキタス社会のイメージ。ICタグの活用や高速ワイヤレス通信、お年寄りでも使いやすい機器などが例として挙げられている

そしてこれらの社会を実現するための重点施策として、ワイヤレス通信向けの電波周波数割り当て再配分や、IPv6によるIPインフラの高度化といったインフラ面を軸とする“ネットワーク高度化”、新しいサービスの提供やユビキタス社会に対応する社会システム整備を目指す“産業活性化”、そしてユビキタス社会の“影”の部分の理解促進と課題の整理を目指す“利用環境整備”の3分野を挙げた。特に利用環境整備については、まずユビキタス社会の影を“セキュリティー”や“プライバシー保護”から、“情報リテラシーの浸透”や“新たな社会規範の定着”といった10分野に整理し、さらに分野ごとに10の課題(計100課題)を抽出。各課題の対応策を調査・整理したうえで、基本原則となるユビキタス社会の“憲章”を策定するといったプランも示された。

そのうえで梶氏は、2010年に予想されるユビキタス関連市場の規模を87兆6000億円、経済への波及効果は120兆5000億円と試算した“平成16年度版 情報通信白書”の例を紹介。市場としての有望さもアピールした。

u-Japan構想を推進することで創出される市場規模は、2010年で87.6兆円と予想されている
u-Japan構想を推進することで創出される市場規模は、2010年で87.6兆円と予想されている

講演では総務省が推進する、電子自治体に関する業務効率化の取り組みについても説明が行なわれた。中央省庁間ネットワーク“霞が関WAN”と地方自治体ネットワークを相互接続する広域ネット“総合行政ネットワーク(LGWAN)”をつなぐ部分に“連携システム管理サーバ”を置いて、国と地方間の情報交換の円滑化と業務効率改善を行なう“国・地方連携システム”の開発。地方自治体同士が共同でデータセンター業務を外部委託することで、業務効率化を図る“共同アウトソーシング”などが目を引いた。

展示会場ではセキュリティー関係のソリューションが注目

展示会場では自治体向けのさまざまなITソリューションの展示が行なわれていたが、やはり情報漏洩事件の多発を背景にした、セキュリティー関連の展示に注目が集まっていた。また多発した自然災害を念頭に置いた、災害時の情報伝達システムや被災者支援サービスなどの展示も披露されていた。

データ・フォアビジョン(株)の情報漏洩対策ソリューション“Stealth Agent(ステルス・エージェント)”。セグメントごとにネットワークを監視する機器(右)を設置するほか、クライアント側でもUSB機器やCD-Rなどでのデータ持ち出し禁止、画面キャプチャーでの操作監視などの機能も提供される。防衛庁へも導入されているという実績をアピール
日本ヒューレット・パッカード(株)のブースでは、情報漏洩防止ソリューションとして『MetaFrame 3.0 Presentation Server』を軸としたサーバー(左)&クライアントシステム(右)を出展。MetaFrameのソフトウェアは米シトリックス・システムズ社の製品。クライアントパソコン側はWindows XP Embedded上で動作するシンクライアントで、アプリケーションはすべてサーバー側で動作している。見た目は通常のWindows XPと同じだが、すべての動作はサーバー上で管理されているため、不正なデータ漏洩はほぼ完全に防止できる。すでに国内約220の自治体に導入されているという
(財)地方自治情報センターは、住基カードを利用した住民向け情報サービス“ICカード標準システム”をデモ。たとえば住基カードの空き領域(独自利用領域)に本人の住所や緊急連絡先を登録しておくことで、救急搬送時に救急車内や病院で読み出して関係者に連絡したり、災害時の避難所で住基カードを使って“避難者登録”をしておくと、どこの誰がどの避難所に避難しているのかが迅速に把握できる。さまざまな用途が考えられるソリューションだが、救急医療や災害時の活用にも役立ちそうだ

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