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【WPC EXPO 2004 Vol.6】マルチメディアコンテンツを“いつでも”“どこでも”楽しめる環境を目指すマイクロソフト――最高技術責任者・古川享氏基調講演

2004年10月21日 20時09分更新

文● 編集部 内田泰仁

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大荒れの天候となった“WPC EXPO 2004”初日の20日、マイクロソフト(株)最高技術責任者兼米マイクロソフト社バイスプレジデントの古川享氏が基調講演を行なった。こちらの記事で報じたとおり、同講演の中では、『Windows Media Player 10』や『Windows XP Media Center Edition 2005』の発表が行なわれたが、このほかにも、音楽/写真/TV/ビデオを“どこで”“どのように”楽しむかをテーマに、同社の今後の展開や製品などが紹介された。

マイクロソフトの古川享氏。今回の講演では、壇上に講演台もパソコンもなしというシンプルなステージで、同氏は「これまでにないスタイルなので緊張している」とコメント

まず冒頭に古川氏は、今年で10周年を迎える“WPC EXPO”の歴史を振り返り、「(Windows 3.1が登場により)MacとWindowsとでグラフィカルなユーザーインターフェースが誕生」し、パソコンがどのような機能を持つかというだけではなく、どのようなソフトウェアが用意されているのかが重視される時代がやって来た、と述べた。その後さらに、インターネットが普及するにしたがって、「(パソコンをインターネットに)どのようにつなぐか、(ソフトウェアやコンテンツを)どのように配るか」ということに注目されるように変化してきたとしている。

音楽/写真/TV/ビデオを楽しむためのコンセプト“Digital Entertainment Anywhere”

そして今後は、手に入れたソフトウェアやコンテンツをどこでどのように楽しむかが重要になってくるとして、同社では“Digital Entertainment Anywhere”というコンセプトを掲げ、パソコンを核として、さまざまな場所、さまざまなデバイスで、マルチメディアコンテンツなどを楽しむ方法を提供していくとしている。

古川氏はこの説明の中で、「(さまざまなコンテンツやサービスを利用するのに)もうパソコンは必要ない、という声もある」という意見を紹介したが、あらゆるビジネスの現場やさまざまな生活のシーン(例として金融機関のキャッシュディスペンサーを挙げ、その9割が内部ではWindowsが動いていると説明)でパソコンの技術(特にWindows OS)が利用されていると指摘。また、AV機器などがパソコンからの影響を受けて変化を遂げているように、Windowsもテレビやカメラなどから影響を受けて進化していると述べた。

また、パソコンの利用の仕方における最近の大きな変化は、「“まず利用目的ありき”でパソコンを使うようになった」ことにあるとしている。このような変化に対応するため、パソコンも、単に“機能を提供するもの”から“ライフスタイル”の一部になるものへと変化しているという。このようにパソコンが身近な存在になったことで、道具を利用する目的である“効率の追求”という面が薄れているところもあるとしているが、同社の取り組みとしては「“効率の追求”はこれからも必要」であるとして、パソコンを利用して効率よくさまざまなことを処理することで生まれる“余暇”をどう使うか、という部分においても、パソコンの意味が重要になってくると語った。

『Windows Media Player 10』の画面ウィンドウ右上の“ミュージック”ボタンを押すと、音楽コンテンツのオンライン販売サイトの一覧が表示される。現在は“MSNミュージック”を含め、10のサイトが登録されている
『Windows Media Player 10』の4つの特徴

このような背景を持つ“Digital Entertainment Anywhere”コンセプトに伴う製品ジャンルとして、古川氏が基調講演で紹介したのは、大きく“ミュージック”“ピクチャー”“TV/ビデオ”の3つ。まず、“ミュージック”については、『Windows Media Player 10』(WMP10)の提供を表明するとともに、同社が運営する音楽関連コンテンツのオンライン販売サイト“MSNミュージック”の立ち上げや、(株)レーベルゲートのWindows Media AudioおよびWMP10からのコンテンツ購入への対応を紹介した。

さらに古川氏は、同社によるこれらの取り組みは「ひとつの機種、ひとつのサービスに限定するものではなく、さまざまな機種、さまざまなサービスから(欲しいもの、使いたいものを)選んでもらう、自由なチョイスの誕生」だとし、“Digital Entertainment Anywhere”コンセプトに沿った展開だと述べた。



古川氏とレーベルゲートの代表取締役社長の高堂学氏

古川氏に紹介され登壇したレーベルゲートの代表取締役社長の高堂学氏は、「約70年前にLPレコードが登場し、それから34年でCDが誕生、さらにその半分の17年で(音楽コンテンツの)ネットワーク配信が始まった」と、音楽業界の技術的な進歩の歴史を紹介。CDは規格が一本化されていたことで急速に普及したが、パソコンの世界では規格が統一されていない状況にあるため、各種方式による音楽ファイルやネットワーク配信の利用がユーザーに浸透するかどうかが今後の展開の鍵になると述べた。また、高堂氏登壇中に古川氏は、「音楽は、技術ではなく、アーティストやリスナーの要求で進化」するものだと述べ、これに対して高堂氏は、「色々なプレーヤーで色々なユーザーが(好きなものを)選べる、方式を気にしなくていい環境の実現を」と、パソコン業界側への要望を示した。

音楽コンテンツのオンライン販売サイトに『Windows Media Player 10』でアクセスしているところオンライン販売との連携が強化されたことに伴い、ライブラリーの分類に“購入した音楽”が新たに設けられた
『Windows Media Player 10』対応のポータブルオーディオプレーヤー『Windows Media Player 10』対応の音楽コンテンツオンライン販売サイト
『Microsoft Digital Image Pro 10』。画面は、複数の写真から大きなパノラマ写真を作成するツールを利用して画像を作成したところ

“ピクチャー”分野では、広く普及したデジタルカメラを、多くのユーザーがパソコンを使ってさらに快適に楽しむことを提案し、写真の整理/管理の強化に努めた『Microsoft Digital Image Pro 10』(9月9日発表、10月8日発売)を紹介した。この中で古川氏は、デジタルカメラで撮影した画像をプリンターで直接印刷できる製品が増えてきているなどの“PCレス”という考え方に触れ、「パソコンなしでもできることは沢山あるが、パソコンがあれば、別の使い方ができ、もっと楽しんで、それを共有できる」ということを実感してほしいとした。



『Windows XP Media Center Edition 2005』。画面は、リモコンを使ってHDD内の画像を編集しているところリアルタイム中継されていたデモスペースの様子。古川氏は講演の途中でメインステージを離れ、実際にリビング仕立ての部屋で『Windows XP Media Center Edition 2005』のデモに参加
『Microsoft Windows Mobile software for Portable Media Center』を搭載したクリエイティブメディアのポータブルデジタルムービープレーヤー『Creative Zen Portable Media Center 20GB』を手に持つ古川氏

“TV/ビデオ”分野では、すでに秋葉原などのパソコンショップでOEM版が先行して販売されている『Windows XP Media Center Edition 2005』(MCE2005)を正式に発表。基調講演を行なっているホールに隣接したフロアに設けられたデモンストレーションスペースでは、古川氏も参加して、電子番組表を使ったテレビ録画、リモコン操作による画像の編集やMessengerの利用、マルチメディアコンテンツのネットワーク共有や、パソコンや非パソコンのネットワークマルチメディアプレーヤー機器を利用したネットワーク経由での再生を行なうための技術“Windows Media Connect”、MCE2005と連携してパソコン内に保存しているマルチメディアコンテンツを外部のポータブルデバイスに転送して持ち歩く『Microsoft Windows Mobile software for Portable Media Center』などを披露した。

このほか、“Windows Media Connect”を活用してマルチメディアコンテンツを“テレビで”楽しむための製品として、家庭向けのセットトップボックス“Windows Media Center Extender”を紹介。日本では未発表ながら、同氏も注目を寄せていると述べた。

講演の最後に古川氏は、この日紹介した製品を「(将来実現する製品ではなく)今日をきっかけに、明日手に入るスタイル」の製品だと総括。今年50歳になるという同氏は、業界での活動を60歳までと考えているといい、「残りの10年で、パソコンを使って作りたかった世界を実現したい」と今後の活動に対する抱負を述べた。



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