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4GBのHDDを内蔵する初のLinux搭載PDA“ザウルス”『SL-C3000』 |
シャープ(株)は15日、Linux搭載のPDA“ザウルス”の新製品『SL-C3000』を発表、同社本社にて製品発表会を開催した。なお製品仕様や詳細については、関連記事を参照のこと。
発表会の冒頭で同社情報通信事業本部 本部長の中川博英氏は、ザウルスシリーズの進化を「通信環境の発展にともない、モバイルツールとして進化をした」とした上で、同社製のシステム液晶とキーボードを搭載した“SL-C”シリーズが大変好評に展開していることを述べた。一方で携帯電話や小型軽量のモバイルノートパソコン、通信手段も進化を遂げているほか、電子辞書や携帯AVプレーヤーといったコンテンツにフォーカスした新しいモバイルツールも人気を博しているため、若干PDAの影が薄くなっているとした。
その上で新製品について、高い処理性能とモバイル性能を兼ね備え、“Communication”“Contents”“Computing”の「“3つのC”を手のひらの上で満足させられるツール」であるとした。そして新製品を「新しいステージにふさわしい“ギガザウルス”と呼んでいる」と語った。
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シャープ情報通信事業本部 本部長の中川博英氏 | “ザウルスは今、ギガザウルスへ”HDD内蔵をアピールする刺激的なコピー |
また今後の展開について、「通信インフラとサービスの進化によって、携帯端末のメリットが高まっている」と述べ、HDD搭載ザウルスをAVパソコンやホームネットワークを延長した形で連携していくほか、モバイル放送や地上デジタル1セグメント放送といった、新しい放送インフラにも対応を進めていくとした。
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将来のザウルスの方向性。モバイル放送や1セグデジタル放送など、テレビ的な機能も取り込む |
続いて同社情報通信事業本部 移動体通信事業部 新モバイル端末開発プロジェクトチーム副参事の朝日健起氏により、SL-C3000の詳細についての説明が行なわれた。そしてSL-C3000の特徴を3点挙げるなかで、まずPDAとしては初のHDDドライブ搭載について、「多様化・大容量化する情報を手のひらで活用する新しいコンセプトを打ち出す」ものであると述べた。また「モバイルに最適なインターネット環境の実現、広辞苑・ジーニアス英和・和英辞典の収録」を続く特徴であるとした。
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シャープ情報通信事業本部 移動体通信事業部 新モバイル端末開発プロジェクトチーム副参事の朝日健起氏 |
内蔵HDDについては、「従来機の128MBメモリーから大幅に増え、外部のメモリーカードを使わなくても、容量を気にせず大容量のパソコン(PC)のファイルや音楽データを本体に取り込み持ち出せる。また電子メールの添付ファイルも容量を気にせず保存できる。見積書や報告書なら約7万枚、MP3の音楽なら約700曲は入れられる」と、大容量のメリットを強調した。
またパソコンとの連携については、デモを交えて解説した。USBケーブルでWindowsパソコンと接続するとSL-C3000内のHDDがパソコンの外付けHDDとして認識されるので、ドライバーソフトや専用アプリケーションも使わず、ごく簡単にパソコンからデータをコピーして取り込めた。コピーされたExcelのデータは、本体内蔵のアプリケーション『HancomMobileSheet』を使って表示、編集もできる。また音楽再生についても、従来機が対応していたMP3に加えて、WindowsのWMA(Windows Media Audio)形式にも対応。iPodなどの携帯HDDオーディオプレーヤーを強く意識していることをうかがわせた。
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USBケーブルでSL-C3000と接続することで、大量のデータをSL-C3000に取り込める | SL-C3000とパソコン接続のデモ。パソコンからはUSBストレージとして認識される | |
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パソコンからのオーディオ/ビデオ取り込みだけでなく、CF/SDカード経由でAQUOSで録画した動画も取り込める | 内蔵の音楽再生ソフトはWMAにも対応。写真右のリモコン付きステレオヘッドホンは別売り(7000円) |
デモの中で興味深かったのは、内蔵のマルチメディア辞書のデモであった。たとえば英和辞典では、調べた単語を読み上げさせて発音を確認できる。また広辞苑では項目によってはカラー画像も掲載されているほか、音楽家のバッハの項目からは代表曲も聴けるなど、記憶容量や液晶画面の制約が厳しい電子辞書では難しい、画像や音声の活用も可能なことを示した。電子辞書は地味な製品ながらも、学生やビジネスユーザーに人気の商品であり、この分野にもザウルスを売り込むには有効なアプリケーションと言えよう。
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電子辞書を強く意識してマルチメディア辞書を内蔵。赤い文字をタッチすると、発音が聴けるといった機能も |
会場では多数の実機が展示されていた。記者も実機を手にしてみたが、“HDD内蔵PDA”という言葉からイメージしていたよりも軽く(約298g)、HDDが携帯性を損なうことはないとの印象を受けた。高精細なシステム液晶によるVGA解像度の画面は鮮明で、HDD内蔵により携帯ビデオプレーヤー的な使い方も無理なくできる。USB接続でWindowsパソコンから簡単にファイルを取り込める点も、こうした使い方の促進に役立つ。予想実売価格は8万円前後。電子辞書付きで4GB HDD、VGAカラー液晶、PXA270-416MHzのCPUを搭載することを考えると、ハイエンドのPDAとしてはそれほど高いとはいえない気がする。
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携帯電話に対するPDAの大きなメリットは、多種多様なワイヤレス通信への対応能力にある | SL-C3000に対応する通信カードの例。PHSや無線LANだけでなく、有線のEthernetにも対応できる | |
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HDD内蔵でも重量は300g未満。厚さも25mmと薄い | 液晶パネルを反転させて、キーボードの上にかぶせた“View Style”。画面も縦型表示になる |
携帯電話と軽量ノートパソコンに押されて、最近は今ひとつ存在感の薄れていたPDA。しかしPDAの老舗であるシャープ渾身の新製品の登場で、PDAもまだまだおもしろくなりそうだ。
