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インテル、“ビジネス・コンピューティング アップデート ミーティング”を開催--サーバー&ワークステーション向けCPUのロードマップを説明

2004年10月13日 23時08分更新

文● 編集部 小西利明

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インテル(株)は13日、報道関係者を集めた“インテル ビジネス・コンピューティング アップデート ミーティング”を開催し、同社のビジネス市場向けプロセッサーのロードマップや、インテル全社内でのIT活用の取り組みと成果などについて説明を行なった。

4つの“T's”で技術革新を進める

インテル取締役 エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部 本部長の町田栄作氏
インテル取締役 エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部 本部長の町田栄作氏

初めに壇上に上がった同社取締役 エンタープライズ&ネットワークソリューションズ本部 本部長の町田栄作氏は、日本の企業や政府機関でのIT投資の実態について触れ、金額ベースでは世界第2位のIT投資国でありながら、IT競争力は世界で12位、対GDP比での投資比率が25位と低迷、さらには利用効率や企業におけるパソコン普及率も依然として低いことを示した。そしてこの状況は日本の市場にはIT投資の余地があることを示し、さらにはITを活用して日本の競争力を上げていくことが急務であると語った。またIT活用は企業レベルでの投資や発想によって業務効率を改善するだけでなく、個人レベルでの生産性向上についても目標を定めての活用も必要と説いた。

こうした生産性の向上や業務の効率化に同社の技術がどのように取り組むかについて、町田氏は4つのキーワードを“T's”と称して説明した。



インテルの目指す技術革新の4つの重点項目を、“Technology”の“T”をとって“'s”と称する
インテルの目指す技術革新の4つの重点項目を、“Technology”の“T”をとって“'s”と称する
・EM64T メモリー拡張性
64bitメモリーアドレッシングに対応したIA-32プロセッサー。サーバーやワークステーション分野では実現済み。クライアント分野では64bit版Windowsの登場と同時期に実現。
・LaGrande Technology セキュリティー
ハードウェアベースでのセキュリティー機能の提供。次世代Windows“Longhorn”と同時期に登場。
・Vanderpool Technology 信頼性
仮想マシン技術によるハードウェア/OSモニタリングなど。“Longhorn”と同時期に登場。
・iAMT マネージャビリティー
“インテル アクティブマネージメントテクノロジ”の略で、2004年9月の“Intel Developer Forum FALL 2004(IDF)”で発表された。OSの状態に依存しないリモート管理・診断、OSやアプリケーションのアセット管理、ユーザーによる勝手な変更の禁止などが可能になる。時期については明言されず。

特に新しいキーワードである“iAMT”については、ビデオを交えた解説が行なわれた。それによると、企業内ユーザーのパソコンにOSが起動しなくなるような不具合が起きても、iAMTをサポートしたパソコンであれば、システム管理者が現場に出向くことなくネットワーク経由で障害を診断したり、可能ならば復旧を行なえる。またiAMTに対応したハードウェア/ソフトウェアがネットワークにつながっていれば、電源が入っていない状態でもリモート経由での資産管理が可能になるという。さらにエンドユーザーによるiAMTの無効化や削除もできない。これらの構想を実現するには、ハードウェア側に新たな機能を実装する必要があるため、すぐに使えるわけではなく、スケジュールも示されなかった。“Vanderpool Technology”などの仮想マシン技術も必要になるだろう。しかしすでに米LANDesk Software社や米シマンテック社などのシステム管理ソフトやセキュリティーソフトのベンダーは、インテルと協力してiAMTを考慮した製品開発に取り組んでいる模様だ。

システムの状態に左右されないリモート管理システムの構築を目指す“iAMT”の要素
システムの状態に左右されないリモート管理システムの構築を目指す“iAMT”の要素

また町田氏は同社が1年ほど前から取り組み始めている、“Digital City(デジタルシティ)”という新しいIT活用の取り組みについても語った。これはインフラとして公衆無線LANを用い、地方自治体が行政サービスを市民や企業に対して提供する構想である。これにはインフラの構築だけでなく、コンピューターシステムの構築やセキュリティー、行政情報/コンテンツの提供の仕方まで、幅広い分野を含む。すでにイギリスのウエストミンスター市やドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州などでは運用が始まっているとのことだが、日本でも同社と野村総合研究所(株)と協力して、“Digital City大阪プロジェクト”の名称で大阪市南港地区でも活動を始めている。南港地区にあるホテル“ハイアット・リージェンシー・オーサカ”に無線LANインフラが構築されたほか、今後は展示会場“インテック大阪”、ショッピングモール、住居エリアなどにも無線LANインフラを広げて、モバイルインターネットやVoIPの提供や新しい利用形態を実証していくという。非常に興味深いプロジェクトといえよう。

インテルと野村総研が共同で進める“Digital City大阪プロジェクト”。地域経済の活性化と生産性向上を目指し、無線LANを活用したソリューションの開発を行なう
インテルと野村総研が共同で進める“Digital City大阪プロジェクト”。地域経済の活性化と生産性向上を目指し、無線LANを活用したソリューションの開発を行なう

デュアルコアからマルチコアへと突き進む
ItaniumとXeonのロードマップ

続いて同社エンタープライズ&ネットワーク・ソリューションズ本部 プラットフォーム マーケティング プロダクトマネージャの廣田洋一氏による、サーバー&ワークステーション市場向けプロセッサーに関する最新のロードマップの説明が行なわれた。基本的にはIDFで発表された情報の要約であった。

インテル エンタープライズ&ネットワーク・ソリューションズ本部 プラットフォーム マーケティング プロダクトマネージャの廣田洋一氏
インテル エンタープライズ&ネットワーク・ソリューションズ本部 プラットフォーム マーケティング プロダクトマネージャの廣田洋一氏

廣田氏はまず、ハイエンドサーバーの市場では依然としてRISCベースのシステムが80%以上の市場シェアを占めているものの、インテルベースのサーバーも2002年/2003年の第2四半期と比較して60%増加、RISCベースは15%減少しているとし、サーバー市場全体でインテルベースのシステムが伸びていることを示した。そのうえでItaniumとXeonという2つのサーバー&ワークステーション市場向けプロセッサーの今後について説明した。両シリーズ共通の技術としては、仮想マシン技術“Silvervale(シルバーベイル) Technology”とマルチコア化、クロスプラットフォームでのシステム管理が上げられた。“Silvervale Technology”とは基本的に、デスクトップパソコン向けの“Vanderpool Technology”と同種の仮想マシン技術だが、IA-32系CPUとは異なるアーキテクチャーであるIA-64アーキテクチャーをサポートするため、異なる名称で呼ばれている。複数の仮想マシンを管理する仮想マシンモニターをハードウェア側のサポートで支援することで、現在の『VMware』や『Virtual PC』といった仮想マシンソフトウェアよりも、高速で信頼性も高い仮想化技術を実現する。

“Silvervale Technology”の概念図。デスクトップ向けの“Vanderpool Technology”と似ているが、対象となるシステムが異なる
“Silvervale Technology”の概念図。デスクトップ向けの“Vanderpool Technology”と似ているが、対象となるシステムが異なる

マルチコア化は現在CPUの世界でもっともホットな話題と言えるが、IDFで同社は、Itanium系のIA-64アーキテクチャーに“Montecito(モンテシト)”と“Montvale(モントベール)”、“Millington(ミリントン)”、Xeon系のIA-32アーキテクチャーには“Tulsa(タルサ)”と呼ばれるデュアルコアCPUを、2005年から2006年にかけて投入することを公表している。しかし今後のCPUは、コアの集積化と並列性を向上させることで性能向上を実現する方向に向かうため、エンタープライズ分野ではデュアルコアは始まりにすぎず、将来は2~4個以上のCPUコアを集積したマルチコアCPUへ向かうという。同社ではIA-64のマルチコアCPUを“Tukwila(タックウィラ)”、“Dimona(ディモナ)”、IA-32のマルチコアCPUを“Whitefield(ホワイトフィールド)”というコードネームで呼んでいる。

インテルのサーバー&ワークステーション向けCPUは、2005年中にデュアルコア化され、その先にはマルチコア化が待っている インテルのサーバー&ワークステーション向けCPU及びチップセットのロードマップ
インテルのサーバー&ワークステーション向けCPUは、2005年中にデュアルコア化され、その先にはマルチコア化が待っているインテルのサーバー&ワークステーション向けCPU及びチップセットのロードマップ

また2005年に登場予定の“Montecito”では、“Pellston(ペルストン)テクノロジ”と“Foxton(フォックストン)テクノロジ”という2つの新しい技術が導入される。“Pellstonテクノロジ”はキャッシュメモリーにエラーが生じた場合、エラー部を含むラインを無効化したり、3次キャッシュでのECCエラーを排除することで、キャッシュに起因する障害を回避する技術である。一方の“Foxtonテクノロジ”は、ノートパソコン向けCPUでお馴染みの“SpeedStepテクノロジ”のIA-64版と言えるものだ。アプリケーションの動作状況に合わせて動的にクロックを増減することで、消費電力を向上するだけでなくクロック周波数が最大で10%向上するという。

MontecitoはIA-64初のデュアルコアCPUとなるだけでなく、PellstonとFoxtonと呼ばれる新しい技術も導入され、信頼性の向上と高性能/消費電力削減を目指す
MontecitoはIA-64初のデュアルコアCPUとなるだけでなく、PellstonとFoxtonと呼ばれる新しい技術も導入され、信頼性の向上と高性能/消費電力削減を目指す

システム管理技術については、“インテル クロス・プラットフォーム・マネージャビリティ”という技術が導入される。これはIA-64、IA-32問わず利用できるシステム管理のアーキテクチャで、システムメーカーや管理ソフトのソフトウェアベンダーが独自の管理システムを構築するための、ハードウェア側の支援機能を標準化するものである。前述のiAMTを実現するのに必要な技術と言えよう。

IA-32プロセッサーがEM64Tによって64bitメモリーアドレッシング機能を手に入れたことで、IA-64の先行きを危ぶむ声は少なくない。それに対して廣田氏は、IA-64は既存のRISCベースのシステムを置き換えるに適したもので、大規模データベースや高速科学技術演算といったハイエンドの用途に選択される。一方のIA-32は、32bitアプリケーションの実行性能やコスト要求の厳しいサーバーやワークステーションに選択されると語った。IA-64の例として、1万240個ものItanium2を使用して世界一を目指すNASAのスーパーコンピューター、“コロンビア・プロジェクト”(米Silicon Graphics社製)が上げられた。ちなみにコロンビア・プロジェクトは512プロセッサー搭載のSGI Altixシステムを20台使うシステムで、OSはLinux。宇宙探査のシミュレーションに用いられる予定だ。


インテル自身をモデルにIT活用を促す

最後に登壇した同社情報システム部部長の海老澤正男氏は、“2003年 インテルITパフォーマンス・レポート”と題して、ワールドワイドのインテル全社で行なわれているIT部門による活動と、その成果について説明した。自社内部でのIT部門による取り組みを外部に公開するのは、IT顧客への支援をどのように行なうかのサンプルとして利用してもらうためである。2003年度までの情報は、同社のWebサイト上の“IT@Intel”のページで公開されている。

インテル 情報システム部部長の海老澤正男氏
インテル 情報システム部部長の海老澤正男氏

海老澤氏によると、同社は全世界で約9万人もの従業員および契約者を抱えている。同社のIT部門は同社CFO(最高財務責任者)直下の組織で、従業員すべてがIT部門のいわば“顧客”となる。IT部門は毎年、遵守目標を立てて測定基準ごとに実績が目標を上回ったかどうかを確認、翌年に向けた問題提起を行なっている。それによると、2003年は目標を達成、もしくは上回ったが、2004年は目標達成にかかるコストが割高になる可能性が示されたという。そのためIT費用の削減が新たな改善項目として重点とされるわけだ。

'98年と2004年のインテル社内でのIT活用の変化。モビリティーの推進が“リモート・アクセスの利用者数”の増加に如実に現われている インテルのIT部門が立てた2003年の遵守目標と、その実績の例。高いレベルの目標を軒並みクリアしているのは、さすがとしか言いようがない
'98年と2004年のインテル社内でのIT活用の変化。モビリティーの推進が“リモート・アクセスの利用者数”の増加に如実に現われているインテルのIT部門が立てた2003年の遵守目標と、その実績の例。高いレベルの目標を軒並みクリアしているのは、さすがとしか言いようがない

最近の注目はモビリティーと付随するセキュリティーにあり、業務で使用されるパソコンの7割程度(約7万台)がノートパソコンとなっている。モビリティーは重要戦略に位置づけられており、無線ネットワークとモバイル技術の促進で、従業員1人当たりで年間5000ドル(約54万5000円)もの経費節減ができたという。
またモビリティーには作業環境を持ち出せることによる、災害を回避した“ビジネスの継続性”というメリットもある。実例として、カリフォルニア州フォルサムの同社オフィスが水害(配管トラブルによって水浸し)に見舞われた時や、オレゴン州ポートランドが豪雪に見舞われて3日間道路封鎖された時も、ノートパソコンを退避、あるいは自宅から接続することで業務を継続でき、顧客への影響を与えなかったという例が上げられた。やや極端な例とも言えるが、リスクへの対策としてのモビリティーという面から見れば興味深い。
最後に海老澤氏は、ワイヤレス&モビリティーとは切り離せないセキュリティーの問題について触れ、「インターネットに接続するのと同じで、ベネフィットもあればリスクもある。必要な対応をとって(利益を)享受する必要がある」と延べた。そのうえでまず、社内的に確立したポリシーの構築と、社員にそれを理解してもらうための教育をしなければならないと語った。

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