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米モトローラ、ザンダーCEOの来日記者会見を開催――日本市場の重点3分野で「メジャープレーヤーに」

2004年10月13日 23時04分更新

文● 編集部 内田泰仁

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米モトローラ(Motorola)社は13日、同社会長兼最高経営責任者のエドワード・J・ザンダー(Edward J.Zander)氏の来日記者会見を開催し、携帯電話を中心とした同社および日本法人(モトローラ(株))の今後の事業展開についての説明を行なった。ザンダー氏は、今年1月に現在の役職に就任。2002年6月までは米サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)社の社長兼最高業務執行責任者を務めていた。

米モトローラの会長兼最高経営責任者、エドワード・J・ザンダー氏。同社会長兼CEOとしては初の来日となるという

ザンダー氏によると、モトローラと日本市場における取り組みは今年で42年になるといい、現在では通信事業を中心に、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI(株)、ボーダフォン(株)、(株)ジュピターテレコム、本田技研工業(株)、防衛庁およびその他の公官庁などとのビジネスを展開しているという。しかし、日本のIT業界の不況や、2000年以降日本市場ではコンシューマー向けの携帯電話の販売を行なっていないことなどから、日本市場での活動については「この3年間はアグレッシブな活動とは言えなかった」としたが、NTTドコモやボーダフォンからの同社製3G携帯電話の発売、同日付で発表されたKDDIとの協業による2GHz帯を利用したCDMA2000 1Xネットワークの展開といった取り組みにより「未来は明るくなってきた」とし、日本のエレクトロニクス市場における主要な成長市場として挙げた、携帯電話、自動車、ブロードバンドの3つについて、「メジャープレーヤーになっていきたい」と述べた。

携帯電話市場の成長および新機能の歴史と今後の展望携帯電話の技術革新の流れ。記者に配られた日本語資料での本ページのタイトルは単に“携帯電話”となっていたが、原文のタイトルは“以前は携帯電話として知られていたデバイス”となっており、同社がこの分野で目指すところは、これまでの携帯電話という枠を超えたところにあることを示している

携帯電話市場の世界的な動きについては、「14年間で急激な成長を遂げ、途上国においても現在普及が急速に進んでいる」と述べ、技術の進歩についても「パソコンよりも急速に技術革新が進んでいる」とした。この技術と市場の成長により、同氏はエレクトロニクス市場に“3つの力”と“第3の画面”が登場したとしている。この“3つの力”とは、

  • 全てが合理的にデジタル化すること
  • ブロードバンドの普及
  • あらゆるデバイスがさらに高知能化/高速化すること

であり、“第3の画面”とは、“第1の画面”であるテレビ、“第2の画面”であるパソコンに対し、携帯電話だとしている。ザンダー氏は、「これを言ったらパソコン業界の方々は苦い顔をするかもしれないが」と前置きしつつ、「パソコンは従来、それほど興味深いデバイスではなかったが、インターネットの出現により状況は一変した」として、インターネットの普及によるパソコン市場の成長を重要視し、それに続く携帯電話においては、ネットワーク機能の革新により「シームレスなモビリティーを提供していく」とした。

“シームレス・モビリティー”の概念図。家庭/自動車/職場/携帯電話の各環境をシームレスにつないでいくという。同社は各分野向けの製品に加えて、インフラ製品もカバーしている

同社は現在、その活動のコンセプトとして“シームレス・モビリティー”という語を掲げている。これは、パソコンなどのIPネットワークや携帯電話のネットワークとをシームレスにつないでいくというものだという。機器としては、Wi-Fi準拠の無線LAN、携帯電話、自動車に組み込まれた通信端末、家庭のテレビなどでネットワークを利用するホームゲートウェイなど、多岐にわたるが、ザンダー氏は、同社は「これらのすべてを見渡すアーキテクチャーを持つ」企業であるとした。また、今回の来日中に面会した日本政府高官とのやり取りの中で、「(シームレス・モビリティー”という考え方について)モトローラと日本政府とは同じ思想、同じ哲学を持っている」との認識を示した。

プレゼンテーションの最後に同氏は、「(モトローラは)日本市場に再びコミットメントし、(コンシューマー市場においては)今後1年から1年半の間に、携帯電話端末の販売を順次再開していく」と、今後の日本市場への取り組みの方針を述べた。

モトローラ(株)代表取締役社長兼米モトローラ・コーポレートヴァイスプレジデント、北川尚氏

また、ザンダー氏に続いて登壇した日本法人の代表取締役社長兼米モトローラのコーポレートヴァイスプレジデントである北川尚氏は、事業の展開について、携帯電話製品の新製品販売再開のほか、無線LAN関連製品、光ファイバーケーブルなどのFTTH関連製品、通信機能を含む自動車向けシステムなどの分野においても、活動を強化していくとのした。

プレゼンテーションの後は質疑応答の時間が取られた。まず、日本市場への製品投入を再開する携帯電話について、同社製品の強み/メリットを尋ねた質問に対してザンダー氏は、次世代のネットワーク(携帯電話および無線LANの両方)や次世代のマルチメディアに対する知識/ノウハウと研究開発や、End-to-Endのアーキテクチャー(インフラ、基地局、端末などの携帯電話に関わる全ての技術)を持っていることを強調した。また、新規契約者数の伸びが鈍化してきている日本市場に再び製品を投入することの“旨味”を問われて同氏は、単純な通話機能の面だけを見れば市場は飽和状態ではあるが、ネットワーク通信機能やマルチメディア機能などを持った新しい世代の携帯電話の市場は「まだ飽和状態だとは捉えていない」と述べ、より高性能な“次の世代の製品”への買い替え需要に向けた製品展開を行なっていくとした。

さらに、中国市場における同社の展開についての質問については、「すばらしい商機のある市場であり、大きな工場と研究開発拠点を持つ」(ザンダー氏)という重要地域であると述べた。中国の携帯電話市場は現在競争が激化しているというが、同社では、同市場でのシェアの回復を目指すと共に、自動車向けシステムの展開拡大や、政府/公官庁との関係強化といった取り組みを行なっていくとした。

日本での自動車分野における取り組みに関する質問には北川氏が回答し、「日米には(車載端末に求める機能に)大きな違いがある」とし、従来の双方の特徴を

  • 日本では、GPSと画面を用いた位置情報や経路検索などが主に求められる
  • 米国では、障害/危険時の通報システムなどのネットワーク機能が重視されている

と挙げた。しかし、日本の自動車メーカーの車載デバイスに対する考え方に近年変化が見られており、日本でも、同社が従来より北米市場で展開している自動車向けシステムの技術が活かせるようになってきたと述べ、ネットワーク通信機能をコアとした製品の投入を検討しているとした。

なお、2004年の日本市場における業績の予測についてザンダー氏は、「個人的には予測よりもよい製品を作ることが大切だと考えているので、現時点で予測を語ることはしない」としつつも、2003年よりも業績はよいだろうとの見通しを示した。

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