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JEITA、定例の記者会見を開催――上期は薄型テレビの好調に支えられ電子工業界はプラス成長

2004年09月22日 22時23分更新

文● 編集部 内田泰仁

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(社)電子情報技術産業協会(JEITA)は22日、定例の記者会見を開催し、同協会会長の安藤国威氏が上期の電子/情報産業の成長実績や今後の予測、これに伴うJEITAの取り組みなどについて説明を行なった。

(社)電子情報技術産業協会会長の安藤国威氏

安藤氏によると、日本経済全体の回復傾向に伴って、今年上期の電子工業界はプラス8.7%の成長と好調な推移を見せ、設備投資、消費ともに順調だという。成長を牽引する製品ジャンルは、薄型テレビやHDD/DVDビデオレコーダーなどのデジタル家電が中心だとしている。しかし、好調な推移の一方で、この数値が海外需要の増加による部分が大きいことから「先行きの不安を述べる声もある」ともした。今後注目すべき点としては、米国大統領選挙後の経済/政策の動向や、中国との関係/経済/政策の今後の動向を挙げている。特に中国については関係の強化を推進していくすべきだとし、この中では、環境、知的財産権、規格の標準化といった点が重視されてくるとした。また、JEITAでは、10月に中国の産業界と知的財産権をメインテーマとした、初の民間レベルでの交流を持つといい、知的財産権や模倣品に関する現状の報告や説明、これらに対する日中双方からの要請などについて、意見交換を行なうとしている。

成長の中心となっている薄型テレビは競争が非常に激化しており、今後国際競争力をさらに高めていくためには、適正な利益の確保と中期的な成長が必要であるとした。さらに、今後の成長に向けて、JEITAではデジタル放送の普及促進も進めていくとしている。また、会見の中では、10月5日(火)~9日(土)に開催される“CEATEC JAPAN 2004”についても触れ、デジタル家電、デジタル放送、RFIDなどの先端製品を取り上げる“国際的な展示会”へとよりグローバルなイベントにしていきたいとした。

同氏による上期の報告に続いては、質疑応答の時間が設けられた。この中ではまず、総務省が“電波使用料”の徴収対象を、情報家電や無線LANなどにも拡大することを検討していることに関するJEITAの見解について質問が出たが、同氏は「市場の発展の阻害要因となる」との理由から明確に“反対”の態度を表明。他国では行なわれていないことであるため国際競争力に悪影響が考えられ、世界に対して日本が先行している分野であるにもかかわらず、その発展を阻害することになる制度の見直しには賛同できないと述べた。

今後のデジタル放送対応テレビの普及の見通しに関する質問に答えて同氏は、市場の成長について、「“オリンピック期間中にすでに失速”しているという意見もある」ともしたが、年末商戦は1年最大の商戦であり、この時期に向けて各社が投入する新製品は、デザインや性能の価値を高めた製品になるだろうと述べ、年末に向けても市場の成長は続くとの見通しを述べた。また、これらの新製品は「新しいフューチャーを盛り込んだ製品であり、(消費者の)需要を喚起するだろう」として、「ブラウン管のテレビの時代とは全く違うテレビの楽しみ方、コンテンツの楽しみ方、ライフスタイルへの組み込み方が今年から来年に形成されるのではないか」とした。

また同氏は、薄型テレビは「デジタル家電の“センター”となる重要な製品」であるとして、低価格競争化の中でも適正な利益を確保して国際競争力を高めていくことの重要性を改めて強調。また、競争の激化により各社が在庫過多状態に陥るのではないかという懸念があることに対しては、ITの導入などによる各社のサプライマネージメント能力の向上から、「過去にあったように(競争の激化と製品の過剰供給により)在庫過多になる、ということは起きないだろう」との予測を述べた。

さらに、上期の実績報告やこのような予測から、年間成長率の上方修正を行なうのか、という質問がでたが、これについて同氏は、「現状を決して楽観視しているわけではない」と述べ、現在の成長率が海外での需要増大に依存している部分が多いという状況を紹介。全体としては好調ではあるが、世界的に見て成長が鈍化してきているデジタルカメラなどに用いられるCCDなど、デバイス系全体の成長の見通しが必ずしも安心できない情勢であり、原油値上がりなどといった原材料費の上昇が今後の懸念材料となっている、といった状況を指摘した。

また、液晶パネル製造の分野の今後の見通しについての質問に対しては、世界をリードしていたにもかかわらず、韓国企業に押されて大多数の日本企業が撤退してしまったDRAM分野を例に挙げ、「DRAMの過ちは(液晶パネルでは)犯さない」と述べた。現状として、液晶パネル分野では韓国企業に押される面もあるとしているが、技術的には世界の先端を行く日本企業各社は、それぞれの強いところを活かして新しいイノベーションを生み出し、知的財産権をベースとした戦略を展開していくことで世界市場を牽引していくとの見解を示した。

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