このページの本文へ

松下電器、デジタル家電の映像処理向け統合プラットフォーム“UniPhier”を発表――開発効率を5倍以上に向上!!

2004年09月01日 20時36分更新

文● 編集部 佐久間康仁

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
統合プラットフォーム“UniPhier”の発表会の模様

松下電器産業(株)は1日、東京・御成門の同社会議室にプレス関係者を集め、携帯電話からAV機器まで幅広いデジタル家電に利用できる映像処理向け統合プラットフォーム“UniPhier(ユニフィエ)”を開発したと発表した。現在製品への搭載を準備中で、一部技術を採用した製品(製品名は明かされず)の生産が始まっているほか、2005年上期から順次搭載製品を展開するとしている。



現在開発中のUniPhierシステムLSI(評価用チップ)のダイ写真 UniPhierの構成
現在開発中のUniPhierシステムLSI(評価用チップ)のダイ写真UniPhierの構成。システムLSIとソフトウェアを組み合わせて、さまざまなアプリケーション(製品)で利用できる
発表会に出席して記者の質問に答える半導体社 社長の古池 進氏ら
発表会の出席者。左からシステムLSI開発本部第二商品分野開発センター所長の柿沼雄二氏、専務取締役で半導体社 社長の古池 進氏、CEアーキテクチャ開発センター所長の藤川 悟氏

発表会には専務取締役で半導体社 社長の古池 進(こいけすすむ)氏、半導体社 システムLSI開発本部第二商品分野開発センター所長の柿沼雄二(かきぬまゆうじ)氏、CEアーキテクチャ開発センター所長の藤川 悟(ふじかわさとる)氏らが出席し、開発の背景やメリット、機能概要や特徴などを説明した。

専務取締役兼半導体社 社長の古池 進氏 UniPhierの詳細を説明する柿沼雄二氏
専務取締役兼半導体社 社長の古池 進氏UniPhierの詳細を説明する柿沼雄二氏
UniPhierの開発の背景となった、昨今のソフトウェア開発規模の拡大 UniPhierを導入することで、機能の共有や開発期間の短縮が図れるという
UniPhierの開発の背景となった、昨今のソフトウェア開発規模の拡大統合プラットフォームUniPhierを導入することで、さまざまな機能の共有、開発期間の短縮が図れるという

UniPhierは、以下のハードウェアとソフトウェアで構成されるスケーラブルな映像処理向け統合プラットフォーム。

ハードウェア(システムLSI)
CPU、メディアプロセッサー、I/Oコントローラー、セキュリティーマネージャー、メモリーコントローラーなどを1チップ化
ソフトウェア
CPUを制御するOS、デバイスドライバー、ミドルウェア、およびメディアプロセッサーを制御するメディアライブラリー(マイクロコード)

松下電器が描く開発効率向上の模式図 統合プラットフォームを導入することによるメリット
松下電器が描く開発効率向上の模式図統合プラットフォームを導入することによるメリット

古池氏は、「従来は機器ごとにカスタムLSIと専用ソフトウェア(OS/デバイスドライバー/アプリケーションなど)を個別に開発してきたが、例えば携帯電話は年に3機種ずつ新製品を発表しており、その開発には1ヵ月あたり延べ数千人ものリソースが必要となっている。特にソフトウェアの開発規模が急増しており、効率化が急務だった。UniPhierを導入することで技術の壁を取り払い、それぞれの製品向けに開発したソフト・ハードの資産を共有化して、従来の“点”(製品個別)での開発から“面”(他製品の技術を流用/応用)での展開が図れると考えている」と、UniPhier開発の背景を説明した。なお、UniPhierという言葉は、Universal Platform for High-quality Image-Enhancing Revolutionの略で、「統一するという意味を込めて名付けた」と統一/統合の意味合いを強調する。

UniPhierプロセッサーのスケーラビリティー UniPhierプロセッサーの構造
UniPhierプロセッサー(システムLSI)のスケーラビリティーUniPhierプロセッサーの構造

スケーラブルアーキテクチャーという点では、用途別に3タイプのハードウェアが用意される予定になっている。

カー/ホームAV機器向け(高性能重視)
CPU(独自開発のRISC系CPU“AMプロセッサ”、C/C++対応命令の並列実行)
+データ処理用並列プロセッサー(プログラマブルビデオ処理)
+ハードエンジン(HD対応MPEG-2/H.264のエンコード/デコードなどメディア処理アクセラレーション)
パーソナルAV機器向け(バランス重視)
CPU(“AMプロセッサ”、C/C++対応命令の並列実行)
+データ処理用並列プロセッサー(プログラマブルビデオ処理)
+ハードエンジン(SD対応MPEG-2/MPEG-4/H.264のエンコード/デコードなど)
携帯電話向け(低消費電力重視)
CPU(“ARMプロセッサ”)
+ハードエンジン(VGAサイズのMPEG-4、QVGAサイズのH.264のエンコード/デコードなど)

ここに、用途別のマイクロコードやアプリケーションを組み合わせることで、デジタルTVやDVDレコーダー、ホームサーバー、カーAV、パーソナルAV、さらにデジタルTV受信対応携帯電話など、幅広く活用できるという。なお、ピンパッケージぱ設計プロセス、CPUやメディアプロセッサーなどの具体的な処理性能については明らかにされなかったが、「他社製のメディアプロセッサーと比べて、30~50%低いクロックで同じ処理性能が得られる」(古池氏)と発言し、低消費電力設計には大いに自信をうかがわせた。

UniPhier導入により、デジタル家電の高機能/多機能化が促進されるという
UniPhier導入により、デジタル家電の高機能/多機能化が促進されると説明

柿沼氏はUniPhierの導入のメリットを、「アーキテクチャーの体系化を進めた現状のプラットフォーム開発では、それまでの非プラットフォーム開発と比べて2~3倍の開発効率向上が実現できた。商品分野を超えたソフト/ハードの統合が図れるUniPhierは、非プラットフォーム開発の5倍以上の効率化が見込まれる。これは時間とコストの両面でメリットがあると考えている」と述べた。さらに、記者からユーザーにとってのメリットは? と聞かれると、「製品の開発期間が短縮されるということは、タイム・トゥ・マーケット(市場の変化に迅速に対応)で製品の投入が行なえるということであり、消費者にも大きなメリットになる」と答えた。また、ソフトウェア資産がたまって統一プラットフォームとしてのメリットを見出される時期については、「2006年には効率化が高まると見ている」と同社の見通しを示した。同社では当面自社製品への投入を中心に進めるが、外販についても積極的に推進すると話している。

評価用チップを用いたデモンストレーションを公開!!

地上デジタル放送受信/表示のデモンストレーション 地上デジタル放送受信/表示の解説パネル
地上デジタル放送受信/表示のデモンストレーション地上デジタル放送受信/表示の解説パネル
携帯電話で地上デジタル1セグ放送の受信/表示を1チップで実現

デモンストレーションの構成図 今回のデモに使われた評価用チップ搭載ボード
デモンストレーションの構成図今回のデモに使われた評価用チップ搭載ボード
H.264映像のデコード/表示デモ H.264映像のデコード/表示デモの解説
H.264映像のデコード/表示デモH.264映像のデコード/表示デモの解説
MPEG-4映像のデコード/表示デモ MPEG-4映像のデコード/表示デモの解説
MPEG-4映像のデコード/表示デモMPEG-4映像のデコード/表示デモの解説
パーソナルAV機器でH.264およびMPEG-4データのデコード/表示をデモ

デモンストレーションの構成図 MPEG-2 HD映像のデコード/表示デモのシミュレーションデモ
デモンストレーションの構成図MPEG-2 HD映像のデコード/表示デモのシミュレーションデモ(このデモには評価用チップは使われていない)
MPEG-2映像のデコード/表示のデモ MPEG-2映像のデコード/表示デモの解説
MPEG-2映像のデコード/表示のデモMPEG-2映像のデコード/表示デモの解説
ホームAV機器でH.264およびMPEG-4データのデコード/表示をデモ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン