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日本テレコム、独自通信網/設備を使用した固定電話サービス“おとくライン”を発表――12月1日に提供開始

2004年08月30日 21時41分更新

文● 編集部 内田泰仁

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日本テレコム(株)は30日、同社独自の通信網と通信設備を使用する固定電話サービス“おとくライン”を12月1日から提供すると発表した。提供開始に先立ち、ソフトバンク・グループでは同サービスの予約販売を9月1日に開始するという。

“おとくライン”の基本構造。ドライカッパー経由でユーザーと日本テレコムの自前交換機とを接続することで自前の通信網を構築していることが特徴

“おとくライン”は、日本テレコムがNTT局舎内に設置した同社独自所有の交換設備とユーザー宅/事業所とを、東日本電信電話(株)および西日本電信電話(株)(以下NTT)がキャリアーに有償で提供する“ドライカッパー”を利用して接続、NTT局舎間に構築した同社の独自通信網と接続し、NTT通信網に依存しない独自の通信網を構築/保有することにより実現した固定電話サービス。同サービスによる日本テレコムの収入モデルは大きく以下の2通りで、これらの実現により、従来のサービスよりも低価格に固定電話サービスを提供していくことが可能になったのだという。

基本料収入の獲得
市場規模は基本料が約1.4兆円、プッシュ回線、キャッチホンなどの付加サービス料が4000億円。独自の通信網を持つことで、基本料、付加サービス料を収入として得ること可能
接続料コストの低減
固定電話利用者と通信回線との接点“ラストワンマイル”まで自前で持つことで、“マイライン”提供時に負担していたNTT通信網との接続料のコストをカット。さらに、NTT網から同社通信網への着信時の接続料を新たな収入として獲得

予定しているサービス提供範囲は日本全国で、サービス開始当初で1000局舎(人口カバー率でおよそ過半数、日本各地の主要都市が中心)、2005年中には3500局舎(人口カバー率約94%)まで拡大するという。

従来の“マイライン”を利用した固定電話サービスの流れ。発信側、着信側ともにNTT通信網/交換機への接続が1回ずつ発生するため、2回分の接続料(4.8円×2)を負担しなければならない。また、“マイライン”事業者は着信による収入が一切ない“おとくライン”による発信の流れ(着信側がNTT固定電話の場合)。同社独自の通信網と交換機を利用するため、NTT電話網への接続料は1回分だけでよくなる。相手先も“おとくライン”利用者の場合は接続料はかからないNTT網固定電話から“おとくライン”への発信の場合の流れ。NTT電話網から同社電話網への接続が必要になるため、同社は従来の“マイライン”では得られなかった接続料収入を得ることができるようになる

基本的な通話のほか、“110”“119”などの緊急通報、プッシュ電話/発信番号通知/ダイヤルイン/着信転送など既存の固定電話で提供されている基本的な付加サービス機能も備える(付加サービス料金はNTTの固定電話と同等)ほか、

通話料金割引
同社の“マイライン”と同様、日本テレコムの通常通話料金から法人用で最大55%、個人用で最大50%の割引が行なわれる
基本料金が従来より低価格
同社独自の通信網と通信設備を使用するため、基本料金が従来のNTTのものより200円安い
“電話加入権”が不要
固定電話の新規申し込み時に必要だった電話加入権(NTTの施設設置負担金7万2000円)が不要
現在の電話番号をそのまま利用可能
“固定電話番号ポータビリティ”により、現在利用している電話番号をそのまま利用可能
支払い手続きの一本化
“マイライン”の場合、契約会社からの電話料金請求とNTT地域会社からの基本料金請求の2種類が別々に送付されてきていたが、本サービスの場合、電話料金と基本料金の請求は同社から一括して行なわれる。そのため支払い手続きの簡略化と電話料金の把握、管理が容易
開通工事費の一時負担金が不要
新設時に一時的に負担する工事費(最大1万5414円)が不要。ただし、NTT工事費用について月額100円を別途請求

などの特徴を持つ。

サービス開始時に実施される“おとくライン”販売キャンペーン

この日行なわれた日本テレコムおよびソフトバンク・グループによる記者発表会では、事業の概要に関して、日本テレコムの取締役会議長でソフトバンク・グループ代表の孫正義氏が解説を行なった。

日本テレコムの取締役会議長でソフトバンク・グループ代表の孫正義氏

冒頭孫氏は、「基本料収入の市場はNTTの完全独占だったが、我々はこの市場に本格的に参入する」とし、基本料金を自由に管理できる固定電話事業者として新規参入し、従来の固定電話サービス以上にユーザーに利益を還元できるサービスを提供していくと述べると共に、ブロードバンドインターネット接続事業、IP電話サービスに続く通信事業の柱として、固定電話サービスに注力していくとした。

今回の発表の中では、当面の加入者数目標、ここまでの設備投資額や今後の営業コストなどの数値に関する具体的な発表はなかったが、説明会の最後に行なわれた質疑応答の中で孫氏は「具体的な感触を得てから改めて発表したい」と応えた。また、同グループは11日に行なわれた決算説明会で“今期中の月次黒字化”を目標として発表しているが、今回の事業開始に伴ってこの目標を修正する意向はないとしており、同事業自体も「比較的少ない回線契約数で黒字転換できる」という見通しを示した。

さらにIP電話サービスとの住み分けに関しては、“Yahoo! BB”利用をすでに利用しているユーザーにはIP電話サービスを、ブロードバンドインターネット接続は不要で電話だけを手軽に引きたいという個人ユーザーや、固定電話サービスの寸断が一時でも許されない法人については今回のサービスを勧めたいとしており、今回の発表により「最も適材適所なサービスの製品ができた」と述べた。また、他事業者によるADSLサービスについては、NTTと同様に電話網を重畳する方法により提供可能だという。ただし、NTTの電話網に重畳する場合と同じく、日本テレコムとADSL接続事業者との契約が必要となるため、今後各事業者に日本テレコム電話網上でのADSLサービス展開を広く働きかけていくという。なお、“Yahoo! BB”のADSLサービスは“おとくライン”のスタート時から使用可能だという。

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