3Dグラフィックスアクセラレーター機能を持たないハードウェアでの、従来の3Dグラフィックス | GoForce 3Dでの3Dグラフィックス。路面や壁面の滑らかな表現を比べると違いがよくわかる |
GoForce 3Dを搭載したテスト用基板。左側の液晶パネルが置かれ下に、GoForce 3Dが鎮座しているが、残念ながら撮影は許可されなかった |
GoForce 3Dにピクセルシェーダーが搭載されたことで、グラフィックスの描画性能は従来に比べて大幅な性能向上が見られる。実際にクローズドな部屋でデモ機を見せてもらったが、マザーボード上に携帯電話の機能をエミュレーションした基板があり、GoForce 3Dやメモリー、2インチクラスのQVGA液晶パネルが直接配置されたもの。そこで確認できたのは、GeForce 3/4シリーズのデモンストレーションで使われた光沢のある球体が周辺の景色を映し込みながら空中をふわふわ漂うもの(マウスでクリックすると液体のように揺らぐ)、および8台ほどの車が猛スピードで駆け抜けるカーレースゲームなど数種類のアプリケーションで、画面サイズがQVGAであることを除けばパソコンのそれと画質(表現力)は遜色ないという印象を受けた。なお、GoForce 3Dの搭載された基板にグラフィックスメモリーらしきチップが確認できなかったため、シン氏に聞いたところ、「グラフィックスメモリーの容量は価格や採用する(携帯電話)メーカーの要望に応じて変化するが、オンチップに混載する」と答えた。表示解像度については、「現在は携帯電話の主流に合わせてQVGA(240×320ドット)表示だが、ハーフVGA(480×320ドット)までは対応可能で、設計上はVGA程度までサポートできるだろう」とのこと。
一般的な3Dグラフィックスアクセラレーター(主にパソコン向け)のパイプライン構成 | GoForce 3Dのパイプライン構成 |
GoForce 3Dは、携帯電話という限られた体積の中に収め、かつコンパクトなバッテリーで動作しなければならないため、パフォーマンス第一で設計されたGeForceシリーズとは異なる部分も多い。そのひとつが3Dグラフィックスのパイプライン処理。パソコン向けのGeForceシリーズでは、グラフィックス描画におけるパイプライン処理を深くする(多段化、最大200段程度)ことで高性能を発揮するように設計していた。ただし、これには高クロック化、大消費電力が必要になる。そこで携帯電話/モバイル向けのGoForce 3Dでは50段以下のパイプラインに制限し、必要な場合にはループ処理を行なうことで画質優先か描画速度優先か選べるようにしている。さらに3Dオブジェクトを構成するポリゴンの前後関係を先に計算する“Early Z”機能を搭載することで、不要な演算処理を極力減らすなどの工夫を行なっている。これにより消費電力は20mW程度まで下げられたという。そのほか、GoForce 3Dの主な仕様は以下のとおり。
GoForce 3Dの主な仕様
- 浮動小数点演算対応ジオメトリトランスフォームエンジン内蔵
- 最大毎秒2500万ピクセル描画
- 毎秒500万頂点処理
- 毎秒500万三角形処理
- 16bitZバッファー付き16bitカラー3D描画エンジン
- プログラマブルピクセルシェーダー
- フォグ/アルファブレンディング/ミップマッピング/バイリニアもしくはトリリニアフィルタリング対応
- マルチテクスチャーサポート(最大6テクスチャー、圧縮テクスチャー対応)
- OpenGL ES/Direct3D Mobile対応
- 64bit2D描画エンジン
- 32bitカラー対応
- BitBlt/クリッピング対応
GoForce 3Dはサンプル出荷が秋ごろを予定しており、製品として登場するのは来年夏ごろになる見込みとのこと。そのときには、携帯電話で楽しむアプリケーションも今とはまったく異なる次元の画質/映像になっていることだろう。