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NECと東芝、メモリーテック、次世代DVD規格“HD DVD”に関する技術説明会を開催――機器/コンテンツソフトウェアの登場は2005年中

2004年07月27日 04時18分更新

文● 編集部 内田泰仁

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この日の説明会では、HD DVD規格の技術的な説明のほか、HD DVD開発の背景事情、HD DVD-ROMメディア(HD DVD-Videoのコンテンツソフトウェア)の製造ラインの開発状況、さらには2005年の立ち上げ時に登場するコンテンツソフトウェアの第1弾ラインナップなどが関係各メーカーから説明された。

(株)東芝の上席常務で、デジタルメディアネットワーク社社長の藤井美英氏

会の冒頭に登壇した東芝の上席常務で、デジタルメディアネットワーク社社長の藤井美英氏は、開発に至る背景事情について解説した。これによると、2000年のBSデジタル放送、今年の地上デジタル放送の開始に伴って、デジタルテレビ市場が急速に成長し、2006年には“家庭でHDコンテンツを楽しむ”目的で、763万台の販売が販売されると予測されているとしている。また、HDD&DVDビデオレコーダーのHDD容量アップにより、個人の映像の楽しみ方(残し方)にも変化が見られ、“HDDにどんどん録画して、残したいものだけをDVDに保存する”というスタイルが一般的になりつつあるという。

次世代DVDにユーザーに求めている能力コンテンツ業界が求める次世代DVDに必要な能力

これら2点を考慮すると、ユーザーが次世代DVDに期待することは、“高品位なコンテンツのパッケージ販売”(映画、環境ビデオ、アニメなど、HD画質にマッチしたクオリティーの高い映像/音声を持つコンテンツの提供)と、“アーカイブ”(HDD上で整理し、タイトル単位にDVDにまとめて保存)の2点であろうとしている。また、コンテンツ業界は、現行DVDから次世代DVDへはゆるやかに移行し、10年以上は両規格が共存するだろうと予測しており、未DVD化コンテンツのビジネス化や、両規格によるコンテンツソフト市場の拡大を期待しているという。

このような両者の事情を基に策定されたHD DVDでは、

  • 現行DVDビジネスを基盤に、コスト増大を抑えてHD DVDビジネスを開始可能
  • 製造設備の共用により効率的なビジネスを展開
  • 上記2点の結果として、消費者へのリーズナブルな価格での提供を維持

といった点に注視し、現行DVDとの市場共存が可能な互換性の実現を目指すと述べた。また、東芝の取り組みとしては、2005年中にHD DVD対応のプレーヤーおよびレコーダーを投入し、「HD DVDとSED方式テレビ(※2)により、お客様に夢と感動を提供していきたい」(藤井氏)としている。

※2 東芝とキヤノンが開発を進めている“表面伝導型電子放出素子ディスプレー”を利用したテレビ。2005年度中に投入予定

メモリーテックの技術開発部部長、大塚正人氏DVD-Video(コンテンツソフトウェア)市場の成長。2003年時点で米国では120億ドル(約1兆3000億円)、日本では2600億円もの規模になっているという

コンテンツソフトウェアメディアの製造ライン開発については、メモリーテックの技術開発部部長、大塚正人氏が説明を行なった。これによると、DVD-Videoソフトウェア市場は現在すでに成熟期に入っており、2003年の市場規模は、米国では120億ドル(約1兆3000億円)、日本では2600億円にのぼり、いずれも劇場収入を上回る額だとしている。さらに、今後数年も成長の継続が予測されており、全世界のディスクメディア製造能力を2倍にする必要があると見られているという。

メモリーテックが整備を進めているHD DVD量産体制。現行DVDとHD DVDの両方に対応でき、すでに月産280万枚製造できる体制が整っているという(現状はDVD量産とHD DVD試作に使用)HD DVDのオーサリングとエンコーディングの流れ。現行のDVD-Video制作よりもクオリティーの高いオリジナル映像が必要になってくるという

こうした背景も踏まえて開発されたHD DVDは、現行DVDよりも高密度な記録メディアとなり、より厳しい製造プロセス管理が求められるという。そして、現行DVDのおよそ半分程度の記録ピットを成型するには、現行の生産設備では対応できないため、技術的な課題を解決し、かつソフト市場のビジネスニーズに対応するために、DVDとHD DVDの両方が量産できる製造プロセスの開発が求められているという。同社では、2年前より開発に取り組み、現行のDVD用製造設備に独自の改良を加え、HD DVDの規格を満たすスタンパーの安定製造に成功、さらに、DVDに近い製造タクトと歩留まり管理を実現するメディア製造機器を実現しているという。

5月に完成した同社のDVD/HD DVD両対応量産ライン(現在つくば工場に2ライン設置)では、DVDは3秒、片面2層HD DVDは3.5秒で1枚製造可能で、DVDとHD DVDの生産切り替えは5分で完了し、DVD規格よりも厳しい自社基準での対候試験品質基準もクリアしているという。今後、8月から甲府工場で2ラインが稼動を開始し、合計でひと月あたり280万枚が生産可能なの“量産体制”が確立するという。なお、現在設置されている生産ラインでは、DVDメディアの量産とHD DVDの試作のために日々稼働中とのことだ。

なお、今後の課題としては、AACSのラインへの組み込み、新しいアプリケーション仕様(メニューなど)に対応したエンコーディング/オーサリング環境の開発、生産サイクルの向上などを挙げている。また、8月末をめどに、メモリーテックおよび東芝のホームページに、両社共同で開発してきた量産ライン技術ノウハウを掲載していく予定だという。

ポニーキャニオン、映像事業本部映像制作1部部長の大柳英樹氏

この日の説明会に登壇した各社の中で唯一のコンテンツメーカーとなる(株)ポニーキャニオンは、HD DVDのデビューに合わせ発売を予定しているタイトルの発表を行なった。ラインナップは以下のとおり。

映画『ムーンライト・ジェリー・フィッシュ』
藤原竜也主演の映画。8月7日公開。全編ハイビジョン撮影
映画『virtual trip THE MOVIE 地球の大自然 FASCINATING NATURE』
世界各地の自然風景を収録した環境映画。35mmフィルム複製ネガからHDテレシネ変換をしたHDマスターを使用
環境映像“virtual trip HD”シリーズ
現行DVDで発売済みの環境映像集“virtual trip”シリーズのHD DVD版。映像ソースは元々HDカメラで撮影したものとのこと

作品紹介を行なったポニーキャニオンの映像事業本部映像制作1部部長、大柳英樹氏は、HD DVDについて「大画面テレビ(での視聴)に耐えうる映像クオリティーを持った、高画質、高音質の規格」と、新規格への期待を述べた。なお、発売する各パッケージの価格については、内容面での+α次第では若干のプラスはあるかもしれないが、基本的には「現行DVD-Video製品と同程度にしたい」としている。

東芝のデジタルメディアネットワークス社主席技監、山田尚志氏HD DVDのコンセプト

説明会の最後に登壇した、東芝のデジタルメディアネットワークス社主席技監で、DVDフォーラムのチェアマンも務める山田尚志氏は、HD DVDについて「真の“Digital Versatile(多用途) Disc”を実現する規格」とし、コンテンツ業界との協調やDVD資産を生かしたスムーズな移行などにより、「未来を開くメディア」にしていくと述べた。

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