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アセロス・コミュニケーションズ、家電組み込み向けの広帯域無線LANチップセット『AR5005VA』を発表

2004年07月22日 03時45分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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『AR5005VA』のリファレンスモジュール
無線LANチップセット『AR5005VA』のリファレンスモジュール

アセロス・コミュニケーションズ(株)は21日、東京・大手町のアーバンネット大手町ビルで記者説明会を開催し、家電組み込み向け無線LANチップセットの新製品として、HDTV(高解像度TV)とSDTV(標準解像度TV)を同時配信可能な広帯域と最大550m2の広範囲での接続性を実現するというワイヤレスTV向け無線LANチップセット『AR5005VA』を発表した。現在サンプル出荷が開始されており、量産出荷は今秋予定。1万個受注時の価格は1個当たり20ドル(約2200円)。



米アセロス・コミュニケーションズ社のマーケティング・ビジネス開発担当バイス・プレジデントのコリン・マクナブ氏 アセロス・コミュニケーションズ(株)の代表取締役の大澤智喜氏
米アセロス・コミュニケーションズ社のマーケティング・ビジネス開発担当バイス・プレジデントのコリン・マクナブ氏アセロス・コミュニケーションズ(株)の代表取締役の大澤智喜氏

説明会には、米アセロス・コミュニケーションズ社のマーケティング・ビジネス開発担当バイス・プレジデント(副社長)のコリン・マクナブ(Colin L.M. Macnab)氏、アセロス・コミュニケーションズ(株)の代表取締役の大澤智喜(おおさわともき)氏らが出席。製品の概要や機能的な特徴、ならびに現在IEEE(the Institute of Electrical and Electronic Engineers、米国電気電子学会)で策定が進められている100Mbps超クラスの高速無線LAN規格“IEEE 802.11n”の進捗状況などを説明した。

アセロスの提唱するエンタテインメント・ホーム・ネットワーキングの概念図 無線ネットワーク市場の成長の予測と、そこに占める家電製品
アセロスの提唱するエンタテインメント・ホーム・ネットワーキングの概念図。広帯域の無線LANを中心にあらゆるデジタル家電が接続されている無線ネットワーク市場の成長の予測と、そこに占める家電製品。3年以内に無線ネットワークに接続できる家電製品が無線ネットワーク市場規模の1/3に上ると予想している

AR5005VAは、既存の無線LAN規格であるIEEE 802.11a/b/gと無線LANでQoS(Quality of Service、帯域保証)を実現するIEEE 802.11e、ならびに同社独自の高速伝送技術“SuperA/G”をサポートする無線LANチップセット。現在策定中のIEEE 802.11n向けに開発し、無線LANで高い堅牢性を提供するという同社の独自技術“VLocity(ブイロシティ)”を新たに採用したのが特徴。

無線LANの急速な進化
無線LANの急速な進化。それに合わせて求められる機能も飛躍的に増えたが、それを満足し続けていると説明し、今後はHDTVの無線伝送も可能になるという

VLocityは、“送信ビームフォーミング”“受信合成ダイバーシチ機能”“マルチインプット/マルチアウトプット”などの技術群の総称。“送信ビームフォーミング”と“無線合成ダイバーシチ機能”は表裏一体の技術。従来はより多くの方向(範囲)からの無線信号を受信するためにそれぞれ個別に利用してきた複数アンテナ(ダイバーシティ方式)から同一の周波数帯/データ信号を同時に送出することで、特定方向へのエネルギーを高めて(同社試算では最大10dB程度の効果があるという)、到達距離の延長や信号強度の向上を図るのが“送信ビームフォーミング”。同様に同一の信号を複数のアンテナで受信し、それらを合成・比較・結合することで受信感度の向上やデータの信頼性を上げるのが“受信合成ダイバーシチ機能”。マルチインプット/マルチアウトプットは、そうした複数アンテナに同時出力したり、複数アンテナからの同時入力を受け付けるインターフェースの実装を示す。AR5005VAでは、最大4つのアンテナを同時に利用可能。これにより最大550m2という広範囲での接続性を実現できるとしている。

また、AR5005VAは動画のストリーミング配信、特にHDTV(ビットレート19~24Mbps)とSDTV(6~8Mbps)を各1本ずつ安定して送受信できる広帯域を実現し、HDTV対応ワイヤレスTVへの組み込み向けに開発したという。そのため、PCI、独自ローカルバス、I2C(Inter Integrated Circuit)のほか、MPEG-TS(トランスポートストリーム)の入出力にも対応する幅広いインターフェースを持つ。

ネットワークのスループットと、その転送量を求めるアプリケーションの一覧 無線LAN規格を重ね合わせると既存のIEEE 802.11a/g&SuperA/Gでも到達距離が足りない
ネットワークのスループットと、その転送量を求めるアプリケーションの一覧そこに無線LAN規格を重ね合わせると、既存のIEEE 802.11a/g&SuperA/Gでも到達距離が足りないという。そこで新技術“VLocityが開発された

さらに、米ミップス・テクノロジーズ(MIPS Technologies)社のR4000ベースのCPUを組み込み、DLNA(Digital Living Networking Alliance、デジタル家電ネットワークの標準化団体)が定めるDRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)技術やMPEGデータのIP(Internet Protocol)カプセル化をサポート。無線LANで懸念される送受信データの漏洩・盗聴などを防ぐことができるという。今回提示されたリファレンスデザインはMini PCIカードで、2つのアンテナコントローラー(AR5112)チップを搭載する。

なお、アセロス・コミュニケーションズは、21日から東京ビッグサイトで開催されている無線&モバイル関連の製品&技術展示会“ワイヤレスジャパン2004”にブースを構え、NECエレクトロニクス(株)との協力でAR5005VAのデモンストレーションを行なっているという。

マルチアンテナ/スマートアンテナ技術の解説 AR5005VAのリファレンスデザインの説明
マルチアンテナ/スマートアンテナ技術の解説AR5005VAのリファレンスデザインの説明

新製品の説明が一通り終わった後でマクナブ氏は、記者からの質問に答える形でIEEE 802.11nの策定までの道のりを示した。現在スペックの策定が進められており、スケジュールとしては2005年7月ごろにスペックに関する最初の投票が、同12月には2回目の投票が行なわれる。製品化は2006年7月ごろになるだろうと述べた。

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