JavaOne 2004の2日目のキーノートに登場するのは、米サン・マイクロシステムズ社の会長兼CEOのScott McNealy(スコット・マクニーリ)氏。同氏のスピーチは、最初のうち、悪口や冗談で始まり、後半、真面目な内容に入るのが普通。かつては、米マイクロソフト社の悪口ばっかりだったが、米マイクロソフトと提携して以来、同社に対する辛辣な冗談はかなりへってきた。Steve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏と並んで笑っている写真を出して、「Photoshopで作ったんじゃないよ」という感じで、かなりソフトなものになっていた。
米サン・マイクロシステムズ社の会長兼CEOのScott MacNealy(スコット・マクニーリ)氏 |
こういうエライ人のスピーチだと、何人かの部下がやってきて、デモしてみせるって形式が多いのだが、今回登場したChris Melissinos(クリス・メリシノス)氏の肩書きは、“Chief Gaming Officer”つまりゲームに関する最高責任者である。といっても、昼間からゲームばかりしているわけでもなさそうだ。いま、サンがJavaの応用として最も力をいれている分野の1つがゲームなのである。
考えてみれば、日本の携帯電話用に提供されているゲームは、ほとんどがJavaで作られたもの。いわゆるアクションゲームであっても、あの程度の解像度ならJavaは十分な性能を発揮する。携帯電話会社からみれば、そのダウンロードなどで通信料金を稼ぐことができるため、いまや大きなビジネスになってきた。
実際、展示会場をみれば、サンは、ゲームだけのブースを作っているし、出展しているハードウェアメーカーのほとんどは、ノキア(フィンランドNokia社)やソニー・エリクソン(英Sony Ericsson Mobile Communications社)、モトローラ(米Motorola社)といった携帯電話メーカーばかり。逆にPC(パソコン)系のメーカーだと米ヒューレット・パッカード社や米IBM社がある程度。
基調講演でデモされた3次元グラフィックスを使うゲーム。いわゆるPC(パソコン)用のゲームと同じく、高速で動作する |
紹介されたのは、Java3Dを使ったFast Person Shootingタイプのゲームである。OpenGL経由でシステム側の3Dグラフィックス機能を使うため、その動きは、普通のパソコンゲームと変わらない、ゲームタイプとしてXboxでマイクロソフトが発売している『Halo』に似たものだったが、実際に動かしてみると、XboxでHaloを動かしているのと同じぐらいであり、それほどストレスを感じるようなものではなかった。ただ、衝突検出などが甘い感じで、木の幹は通り抜けられないが、背の低い木はそのまま抜けてしまうといった感じ。ただ、やり方次第では、こうした高速な3次元ゲームもJavaで作れることを示している。
米Infinium Labs社のKevin Bachus(ケビン・バッカス)氏(中央)と米サン・マイクロシステムズのChief Gaming OfficerのChris Melissinos(クリス・メリシノス)氏(右) |
もう1つ紹介されたのは、オンラインでゲームを提供する米Infinium Labs社のゲームコンソール『Phantom』。かつてマイクロソフト在職中にDirectXやXboxを仕掛けたKevin Bachus(ケビン・バッカス)氏が社長を務める企業である。同社のPhantomは、J2SEを導入して出荷されるという。すべてのゲームをJ2SEで提供するわけではなさそうだが、このように高速なゲームもJavaで作ることができるとすると、オンラインでゲームを提供するゲームコンソールには、向いているかもしれない。
Infinium Labsの『Phantom』 |
また、McNealy氏は、富士通(株)との提携についても触れた。富士通は、SPARCプロセッサーを採用する唯一のパートナー。すでに20年にわたる提携を行なっている。日本では、マイクロソフトと富士通の提携が発表されている最中。同じアーキテクチャーを採用するメーカーとして、そして高速なプロセッサーを製造できるメーカーとして富士通は、サンに取って重要なパートナーである。Javaとはあまり関係はないが、ここで関係を強調しておきたいのだろう。
Scott MacNealy氏はJavaとは直接関係ないものの富士通の関係についてキーノートで触れた。これは、おそらく日本でのマイクロソフトと富士通の提携を意識したもの |
また、話題となったJavaのオープンソース化については、これを否定した。すでにある“JCP(Java Community Process)”は十分に機能しており、マイクロソフトやレッドハット(米Red Hat社)などもJCPに参加すべきだと述べた。サンがオープンソース化を拒否する理由としては、互換性の問題を挙げている。つまり、誰か一人が管理しない限り、互換性を維持できないというわけである。
昨日、オープンソース化が発表された“Project Looking Glass”については、McNealy氏のキーノートスピーチの最中に公開が行なわれた。関係者の話では、すでにオープンソース化は決まっていたものの、法的な問題やライセンスをどうするかで最終的な準備が昨日は整っていなかったという。昨日のQ&Aセッションで、Jonathan Schwartz(ジョナサン・シュワルツ)氏は、Looking Glassのライセンス形態を“JRL(Java Research License)”で行なうと回答していた。しかし、現在のLooking Glassは、X Window Systemの拡張機能を使うため、Xと同じGPLでの公開となった。逆にいうと、このあたりが最後まで揉めていた部分なのだろう。
Tシャツ打ち出しマシーンの第2号機。自転車をこぐとその動力でTシャツが会場に打ち出される。しかし、起動直後にチェーンが切れて失敗 | Tシャツ打ち出しマシーンに取り付けられたカメラの画像を携帯電話から見ることができる。ここに一応Javaが使われている |