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【特別企画】VAIO“type R”開発者インタビュー(後編)――「増設をしろと言わんばかりに、お腹を開けて待ってる」

2004年06月24日 00時00分更新

文● 永島和夫

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ソニー(株)の“VAIO”は、この夏“Do VAIO”をコンセプトに、従来の“パソコン製品のブランド”から、“高次元なAV体験を提供する製品のブランド”として生まれ変わった。その、フラッグシップモデル“type R”の全貌に迫るべく、開発者およびデザイナーにインタビューを行なった。デザインと冷却機構を取り上げた前編に引き続き、後編ではスペックや静音性などについて紹介する。(取材協力はソニーマーケティング(株)の直販サイト“ソニースタイル”)

type R
type R

インタビューに参加くださった開発者/デザイナー(カッコ内は所属部署)

商品企画:
戒能 正純(かいのう まさずみ、ITカンパニー)
デザイナー:
熊野 大岳(くまの だいがく、デザインセンター)
メカニカルエンジニア:
小林 紀男(ITカンパニー)
冷却機構エンジニア:
石川 雅幸(ITカンパニー)
光ドライブ担当:
大西 孝典(ITカンパニー)
左から戒能氏、石川氏、熊野氏、小林氏、大西氏
左から戒能氏、石川氏、熊野氏、小林氏、大西氏


上位機種は最新HTテクノロジPentium 4 550-3.40GHzを搭載

5月10日の製品発表当時、type RのVGC-RA70/VGC-RA60シリーズのCPUやクロックは非公開だった。VGC-RA70シリーズはハイエンドの、VGC-RA60はミドルエンドの機種だ。これらは先週14日に明らかになり、CPUは新規格のピンパッケージ“LGA775”に対応するHTテクノロジPentium 4 550-3.40GHzを、グラフィックアクセラレーターはPCI Express x16スロットにカナダATIテクノロジーズ社製のRADEON X600 XTを搭載する。ソニースタイルでは、CPUにPentium 4 550-3.60GHzを選択することも可能だ。HDDもRAID 0および1に対応し、高速なアクセス(VGC-RA60シリーズは増設時)が可能となっている。



排熱・静音に自信 専用チューニングを施した特注ファン

前編では筐体デザインの設計思想から放熱機構について紹介したが、より発熱する上位モデルのVGC-RA70/VGC-RA60シリーズでも、ビクともしない。これは単に熱を逃がせるということはもちろんだが、高負荷をかけた場合でも、動作音の音量に大きな変化がないということだ。

現在のパソコンの冷却ファンには、温度によって回転数が変わるものが多く採用されており、電源を入れても仕事をさせなければ静かな状態を維持する。しかし、動画のエンコードなど、重い処理をさせた瞬間からファンの回転数が上がり、不快な音を発するパソコンも少なくない。

エアインテーク
側面にぽっかり空いている吸気口

では、type Rの筐体の静音性はどんな結果となったのだろうか。側面にぽっかり空いているエアインテーク(吸気口)はもちろんだが、搭載される細かな部品まで配慮がなされているという。

搭載するファンの数は機種により異なるが、エントリーモデルとなるVGC-RA50シリーズでは2つ。CPUのヒートパイプの先に取り付けられたラジエータと電源にそれぞれファン(12cm)が取り付けられている。VGC-RA60/VGC-RA70シリーズは、それに加え、HDD冷却用ファン(8cm)と、グラフィックカード冷却ファン(6cm)を装備している。

ちなみにCPUの12cmのファンは、パソコンマニアにはおなじみの山洋電気(株)製のもの。ただし、パーツ店や電子部品店で通常売られているものとは異なり、type Rの稼働状況に合わせた回転数でファンが回った場合でも静音特性が最適となるよう、モーターの駆動回路などを別注している。全てのファンを特注としたのは、ファンから発生する動作音の中で、風切音とは別の動作音(電磁音)を抑える効果も狙っている。ファンを低回転で回すと、風切音よりも電磁音のほうが耳障りとなるためだ。

この結果、ハイエンドモデルのVGC-RA70シリーズでは、従来機種のPCV-RZ75シリーズに比べ、通常動作時でおよそ5dB程度静かになっているという。騒音、すなわち音に対する快・不快は人によって異なるが、一般には3dB下がると音が半分になったと感じるといわれているので、その意味では半分以下になったと言えるだろう。また、この筐体と冷却システムが最大運転するのはパソコンに高負荷をかけた状態であり、その場合でも動作音は通常時とほとんど変化なく、従来品との差はさらに開くという。



冷却機構担当の石川氏
冷却機構担当の石川氏

冷却機構を担当するITカンパニーの石川雅幸氏は「フル増設した状態を想定して設計しているので、十分に余裕がある」と自信をみせる。VGC-RA70シリーズで、HDDを4台詰め込んだ場合でももちろん問題ない。

また、この新設計の筐体と冷却システムは、一世代限りで役目を終えるようなものではない。この後のシーズンに発売されるモデルでも、この構造を踏襲する見込みだという。そうなると、さらに高クロックのCPUや高回転数/大容量のHDDが搭載されるはずだが、それでも対応できるだろうとしている。

動画編集機能を追求したtype Rで、その最速モデルとなれば、プロの作業現場で、持てる性能を十分に活かして画像の変換などに酷使されることも容易に想像できる。電源を入れて何もせずに放置した状態だけが静かなマシンではなく、最大負荷をかけた状態でも静かなマシンに仕上がっているのだ。



CPUに装着されるヒートパイプ付きのヒートシンク
CPUに装着されるヒートパイプ付きのヒートシンク。筐体下側のCPUの熱を筐体上側に移動させ、そこに装着された12cmファンで強制冷却する仕組み

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